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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
17/57

トイレ座の怪人

 クラス  宿星拳闘士(トイレ座)

      クラス固有技能 流水拳Lv.1


「…………」

 博士が眉間に深いしわを寄せてデータを眺めている。

 いや、あの、眉間にしわを寄せたいのは私のほうですよ。何ですかこれ。

 宿星拳闘士はまだいい。

 おっさんの好みからするとちょっーと、渋さが足りないとは思うけど、悪くないクラスだよね。

 トイレ座、がついていなければ。

 ねえねえ、星座な~に? 便座。

 などという小学生じみたギャグですか。はは、童心に返るね!

 そんなわけあるか。

 クラス固有技能。かっこいいね。あれだよね、その職独自の技だよね。

 流水拳。かっこいいじゃない。流れる水のごとく、相手の攻撃を受け流す技か? 激流のように、敵を打ち砕く技か? はたまた、相手に合わせて形を変える、変幻の技か?

 うん。わかってるよ。わかってるんだ、おっさんだって。

 でもさ、少しぐらい夢を見てもいいよね。

 おっさん、トイレ会社でデザイン設計とかしてたわけじゃないんだけどなぁ。


「トイレ怪人。仲間」

 うっさいわ、スカンク娘! 否定しきれないところがさらに傷をえぐるのよ! もうやめて!

「よかったね、サキ。ちょっとタイプは違うけどお仲間だよ」

「うん」

 おお、純粋に喜んでらっしゃる……。そんな笑顔見せられたら、おっさん黙るしかないよ。ぐぐぐ、悔しいが子供には勝てぬ。

 おや、今まで微動だにしなかった博士が、厳しい顔でこちらに近づいてくるぞ。

「これは、初めてみるクラスだ」

 そらそうでしょうとも! なに、そんなわかりきったことを言うために間を取ってたの。そろそろ本気で怒るぞ。いや、泣くぞ。

 だが、そんな風に感じていたのは私だけだったらしい。

 キリ姉さんとサキちゃんから、驚きが伝わってくる。

「博士が知らないってことは、かなりレアじゃないか」

「てっきり同種がいると思った。びっくり」

 え、そうなの?

「拳闘士は珍しくもない。そこから派生するクラスには、わしの知らぬものもあろう。だが、このクラスはまるで別物だ。肉弾戦を用いるため、拳闘士とついたのだろうが、それ以外が一切不明だ」

 ま、まあ、宿星とかトイレ座ですからね。

「トイレ座はどうでもよい。いや、どうでもよくはないが、しかし何かしら星座をモチーフにしていることはわかる。だが宿星はなんだ。運命を星に導かれる拳闘士? なんだそれは。個々の怪人が、宿命と呼べる星を持つというのか。いや、導かれるのは拳闘士というクラスなのか。トイレ座に」

 ちょっと博士、なんだか支離滅裂になってますよ。

「トイレ座。お前は、いやお前の精神、記憶はなにかトイレ座にかかわりがあるのか。調べた限りでそのような情報はなかった。なにかあるのか。トイレと、トイレ座と深くかかわりが」

 ないわ! そんなもん一切ないわ! そんなものはT○TOか東○に任せてくれ!

「いや。いやいや。トイレ座は大きな問題ではない。トイレ座であることは問題ではない。やはり宿星。運命という不確定要素をもつクラスであることが問題なのだ」

 うーん。この発狂ぶり。マッドサイエンティストって感じだなぁ。

 ぶつぶつつぶやくその姿を眺めていると、突然博士が私のほうをじっと見つめ、それからサキちゃんとキリ姉さんを指さした。

「カメレオン怪人ならびにゾリラ怪人。トイレ怪人に同行し、その行動を記録せよ。その変化、成長をつぶさに余すところなく記録するのだ。これは作戦命令とする」

 二人がびっくりして博士を見る。いやちょっと待て。今さりげなく、トイレ怪人とかいったな。なに、私はトイレ怪人で確定なの? サキちゃんだけかと思ったら、あんたもですか博士。

「ちょ、ちょっと待っておくれよ博士。同行するのはともかく、どうやって記録すりゃいいのさ。本人の記憶を解析するだけじゃ駄目なのかい」

「駄目だ。記憶解析は当然として、その上でこいつを見る第三者の眼がほしいのだ。いや、こいつを見るといっては語弊がある。こいつを取り巻く環境、こいつにかかわる他者、そういったものを複数の目で確認せねばならぬ。運命などというものは、本人の目では見えぬことが多い。近くにいる他者のほうが、えてして気がつくものだからだ」

「……つまり、記録とは、私たちの記憶。同行し、ともに行動すること?」

「ああ~……そういうことかい……」

 納得半分、あきれ半分といった感じの言葉が、キリ姉さんから発せられる。

「でも、それなら、記憶の解析と保存はこまめにしたほうがいい。どうするの」

 首をかしげながら問いかけるサキちゃんに、博士が頷く。

「そうだ。だからこそ、遠征作戦はその環境が整っている場所でなければならぬ。『怒りの塔』を目標地点に指定する」

「納得。了解」

「なるほどねぇ。あそこなら確かに条件に合致してるよ。りょーかい」

 なになに? おっさん一人だけ蚊帳の外なんですが。

「解析記録の提出は半年に一度とする。直接でも、定期便でもかまわぬ。ただし状況に大きな変化があった場合は必ず連絡を入れよ。よいな」

「了解」

「わかったよ」

「イーッ?」

 いや、えっとわかりませんよ。


 誰か説明。説明ぷりーーーーず!

コマンダー03ことおっさんは、トイレ怪人として認定されました。合掌。

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