おや!? コマンダー03のようすが……!
「それで、成果がこのエネルギーストーンか」
「イーッ!」
結局、手に入ったゴブリンキング産エネルギーストーンは九つ。
クレリックはパワーアップしませんでした。わざわざ最後は杖だけ破壊して「お前の変身機能は破壊した!」とかやってみたんですが、だめでした。無念。
後は最下層までの行き帰りで殲滅したゴブリンたちから回収したもの。まあ、こっちはおまけ程度だろうけど、どうかな。これだけあれば改造、いけるんじゃない?
「ふむ、これならば……十分か。十二分とはいえぬが、改造は一度しかできぬわけではない。むしろ最初の改造と考えれば恵まれておろう」
よし、博士のお墨付きいただきました。がんばった甲斐があったな。
「それにしても、一風変わったボスがでたものだねぇ。なんだろうね、そういう星の下に生まれているっていうやつかい」
「雑魚が次々ボスになるなんて、聞いたことない」
キリ姉さんとサキちゃんが首をかしげている。確かに事前情報とだいぶ違ったからな。
博士の表情をうかがうと、少し思案顔だ。
「少し調査してみてもよいかも知れぬ。こやつの報告はまとめてあるな」
「バッチリ」
サキちゃんが、尻尾を毛づくろいしていた手を止めて親指を立てる。
「ではいくつかのパターンを想定し調査だ。後ほど作戦原案を作っておけ」
「あいよ。できるだけ今回の条件をなぞる形でいいんだね」
「うむ」
博士がこちらを向く。
「さし当たっては、お前が持ってきたこのエネルギーストーンだが、半数を調査、実験のためにこちらで預かる。なに、その分のエネルギーストーンは準備するゆえ、改造に支障はない」
「イーッ」
まあ、そういうことでしたら私に否やはありませんが。
「しかし半数はお前の改造に用いる。これは……正確にデータを取っておくべきだな。改造前に精査を行う」
「イーッ!」
間髪いれずに了解と答える。
ここでためらいなど見せたら、スカンクの悲劇第二段が発生してしまうことは想像に難くない。冗談じゃないわ。
自ら積極的に棺おけの前に進みスタンバイ。この隙のなさならば問題あるまい。
「よし。……では入れ」
「今回は少し時間がかかるけどね、精査中はおとなしくしておいておくれよ」
「イーッ」
問題なし。バリウムだの胃カメラだの飲むのに比べたら楽勝よ。実は秘密結社って福利厚生しっかりしてるんじゃない?
棺おけに突入。さて、羊でも数えますか。
「うむ。今回の作戦従事前と劇的な変化は見られぬ。しかしまた新しい特性を身につけたな。指揮官型の適正から生まれたとは思えん。特異な精神構造のなせる技か」
また自分はなにか取得したらしい。まあ無刀取りなんてやったからなぁ。「先の先」なんかを取得したんじゃなかろうか。
「本当にお前の成長は面白い、本来、怪人は改造なしに成長することが極めて難しいのだ。その概念を打ち崩す結果を出している。次の怪人作製においては、お前の精神構造をコピーすることも視野に入れよう」
それはそれは。おっさん2号3号が生まれてくるのでしょうか。自我の認識に影響を与えそうな話だなぁ。
「では改造だ。予定通り、肉体能力の強化のみに絞って行う。……しかし、だ」
博士がにやりと笑う。わーお、悪い顔。
「約束どおり、わしが行うのはそれだけだが。おそらく、これはわしの予想だが、お前は何か大きな変化を起こすであろう」
「系統外変化が起きるのかい、博士。そこまで断言するのは珍しいねぇ」
「でも、納得。むしろ普通の強化だけだったらびっくり」
サキちゃんの言葉に、キリ姉さんも頷く。
「確かにそうだね。これだけ例外だらけの個体、そして使用するエネルギーストーンにまで例外が混じる。まともな強化で終わるほうが確率的に低いか」
三人とも納得顔。
うううむ。これは喜ぶべきか悲しむべきか。合体事故が起きることが確定している女神@生の悪魔合体みたいだな。
よし、腹をくくろう。小心者でも、おっさんは度胸よ。どうせ逃げられないし。
棺おけのふたが閉じられる。
「あんたの意識はいったん遮断されるけど、特に問題はないから安心おしよ。次会うときは、新しいあんただね」
「カメムシ怪人になったら……仲間」
好き勝手言ってくれるね、こいつらは!
「では、強化改造を開始する。なお、想定外の事象が発生した場合は、中断ではなくその移行を見守る」
「了解」
「あいよ」
その声を最後に、意識がぷつりと途絶えた。
キャンセルボタンは押さないのです。




