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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
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目標地点M侵攻作戦3~決着~

 無刀取りについて語ろう。

 無刀取りという言葉につきまとう誤ったイメージが真剣白刃取りである。

 振り下ろされた白刃を、両の掌でもって挟み、捻りとる。

 だが実際に、縦に振り下ろされる物体を横方向からの挟み込みによって受け止めようとした場合、いったいどれだけの圧力が必要であろうか。人間に可能であろうか。

 そう、そんなものは現実的ではない。はっきり言って不可能、幻想なのである。

 剣術はあくまで現実の殺人術である。

 そこに幻想の立ち入る隙はない。


 無刀取り。

 言葉だけが独り歩きしたその秘技の正体。

 それは。


 「イッ!」(シッ!)

 振りぬかれた刃をかいくぐり、ジャブを繰り出す。

 しかし鋭く風を裂く返し刃をかわすため、瞬時に右のショートアッパーに変更し、長剣の腹をたたく。

 バックステップ。

 私は同じようなやり取りを先ほどから繰り返していた。

 素手で刃物の相手をする難しさは、想定しうる難しさの、その遥か上に位置する。

 私自身は長剣の腹をたたき弾くという特殊な受けを可能としているが、本来、素手で刃物を受けるすべはない。相手の剣撃は回避するしかないのだ。

 相手の剣撃はすべて回避し、そして急所へ一撃を決める。

 言うは易し、行うは難し。徒手空拳による打撃で、刃物を相手取ることは不可能といってよい。

 そう、打撃では。

 そんなことはわかりきっていたからこそ、先人たちは組み技を編み出したのだ。


 無刀取りの正体。

 それは組み技。刀剣の間合い、その内側に、相手が今まさに剣撃を放たんとするその切迫の間に飛び込み組み倒す、組み打ちなのだ。


 と、昔読んだ歴史小説、剣豪小説に書いてあった。おっさんしっかり覚えてるもんね!


 何度も何度も、有効打にならないような攻撃を繰り返したのは、すべては呼吸を計るため。

 剣撃に皮膚は裂かれ、体力は奪われている。だが、それはすべて間合いと呼吸を正確につかむためのもの。

 今。自分には読みきった自信がある。

 正面にゴブリンキングを見据えながら、じりじりと間合いをつめる。

 全身の感覚を研ぎ澄ませ。皮膚の細胞一つまで使い、相手の呼吸、筋肉の脈動、血液の流れ、すべてを読み取るのだ。

 ゴブリンキングは肩に長剣を担ぐ。担ぎ上段がこいつのスタイルだ。

 腰をわずかに落とした。下半身に力をためているな。

 長剣の間合い、その直前までにじり寄り、そして。

 全身の筋肉を弛緩させた。

「!?」

 驚愕と困惑が伝わってくる。そりゃそうだろう。敵前で隙だらけになっているようなものだ。

 だが、これこそが、この自然体こそが無刀取りの真髄なのだ。

 無刀取りは一刹那の秘技。敵の呼吸を読みきることは当然だが、自分の動作、動き出し、その気配を一切消し去ることが必要なのだ。

 そしてその、ただ呆然と立っているだけに見えた相手が。

 己が刀剣を振ろうとした、そのとき。


 眼前に立つのだ。


 自分の体ごと巻き込むように放った首投げが、見事に決まる。頚骨の砕ける音とともに、ゴブリンキングの首があらぬ方向へと曲がった。

 格闘技なんかやったことのない人間の投げ技なのだから、受身とかわかってる人なら外せたのかもしれない。技名は「なんだかよくわからないけど首をかためて投げてみました投げ」だしなぁ。

 やはり格闘技はおっさんにはわからない。

 無刀取りはあれだ。相手の先の先を取る技術と割り切ってしまおう。今だって無理に組み技にせず、手刀を首筋に打ち込めばよかったのではなかろうか。

 無刀取りの踏み込みからなら、どの打撃につなげてもクリティカルになりそうな気がする。

 うむ、おっさん、確実にレベルアップ。


 さてそうなると、やはり改造が待ち遠しい。そのためにも、エネルギーストーンを回収せねば。このゴブリンキング、なんだかレアっぽかったし、結構期待できるのではないかな。むふふふ。

 ちらりと親衛隊のほうを見る。おお、戸惑いとおびえが見えるわ。

 ならばその恐怖、もっと煽ってやらねばなるまい!

 キングの死体をこれ見よがしに持ち上げ、胸にずぶずぶと手刀を差し込んでいく。

 くくく。さあ何本で死ぬかな~。俺を愛しているといってみろ! くはははははは!

「ギィ、ギ、ギギギィ……!!」

 親衛隊からおびえとともに怒りの声が上がる。ふふふ、いいぞ、すごくイイ! おっさん、フォースの暗黒面まっしぐらよ。お、エネルギーストーン発見。おお、普通のゴブリンより二回り以上大きいし、輝きも強い。ムフー。


 あれ? なんか親衛隊の1匹がぶるぶる震えているぞ。怒りのあまり痙攣したか。お、なんか光りだした。なんだなんだ。

「ギギィー!」

 そのとき、不思議なことが起こった。

 王を惨殺された怒りと悲しみ、そして同胞を守らなければならないという使命感がエネルギーストーンに流れ込み、彼を新たなゴブリンキングとして生まれ変わらせたのだ。

 ゴブリンキング、RX。その誕生の瞬間であった。

「ギィギギー!」

 周囲の親衛隊から歓声が上がる。


 そんな馬鹿な。そんなのってありぃ?

 んんん? あれ? でも待てよ。どうせこいつら、また同じ戦術でくるんでしょ。

 ということは。これってもしかするともしかすると。

 親衛隊全員分、ゴブリンキングのエネルギーストーンが回収できるんじゃないの?

「……イィー」

 思わず笑いがこぼれてしまった。ふふふふ。


 何を迷う必要がある。今は悪魔が微笑む時代なんだ!

その後のゴブリンキングRXおよび親衛隊の運命はお察しください。

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