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コマンダー03  作者: 前頭禿夫
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目標地点M侵攻作戦1

 さて、目標地点Mとされるこのダンジョンだが、10階層で構成されていることはすでに明らかになっている。

 出現する魔物はゴブリン系統がほとんどを占め、それにゴブリンの家畜、あるいは騎乗動物としてあのハイエナが加わる。……あのハイエナ、ゴブリンと一緒に戦闘してるくせに、ゴブリンが死ぬと平気で逃げたり、さっきまで自分に乗ってたゴブリンを食ったりする。ひどい扱いしかされていないのだろうか。

 10階層の奥にはボスであるゴブリンキングとその取り巻きがおり、そこから少し進んだところにダンジョンの心臓部、ダンジョンコアがある。

 ここまで詳細がわかっているのは、この地点Mが幾度となく攻略されてきたからだ。

 はっきり言って初心者向けダンジョンであり、また結社に最も近いという立地条件から、訓練場扱いである。罠らしい罠もなく、宝箱もまともに出現しない。しても中身はカス。そしてなにより、僻地にあるため攻略しようとする人間、冒険者の姿がない。

 冒険者は敵だ。なにせ彼らからすれば、怪人なんて魔物の一種でしかない。問答無用でこちらを殺しにかかってくる。まあ見た目が人間、つまりホスト01番02番などであればそれは防げるのだが、私は全身黒タイツだからね。どうしようもないね。

 そのためダンジョン攻略においては、魔物と冒険者、双方を相手取る必要がある。最も人間からはエネルギーストーンを回収できないので、冒険者それ自体には倒してもうまみがない。ただし、彼らが魔物から奪ったエネルギーストーンを横取りできるというメリットがある。

 ようするに、われわれの立ち位置は盗賊団とか山賊と同じである。そう考えるとなんだかいきなり情けなくなるな。名もなき山賊1でーす。


 そして現在私は地下5階に到達したところである。

 攻略が早いのにはわけがある。地点Mは、地下4階までは雑魚ゴブリンとハイエナしか出ないのだ。はっきり言って、今の私には楽勝過ぎる。この地下5階からは上位種がでるので、そこに期待したい。雑魚ゴブリンから回収できるエネルギーストーンは、やはりそれなりでしかないのだ。

 そんなこんないってるうちに、第一ゴブリン集団発見。

 ほう、弓持ちのゴブリンアーチャーが2匹、その前には盾を持った、ゴブリン……なんだっけ、ナイトだったかな。盾しかもってないから明らかに名前負けしてるが、これも2匹。そして少し遅れて最後尾にゴブリンマジシャン1匹。

 なかなかバランスの取れたパーティーって感じがしますね。回復役がおりませんが。前衛の2匹が盾で相手を押さえている間に弓と魔法で攻撃か。

 魔法。

 そう、情報端末で調べたところ、平然とその単語が現れたことには少々、いやかなり戸惑った。

 秘密結社で怪人で、そして魔法である。

 訳わからんわ! 特撮がやりたいのかファンタジーなのかはっきりしろ!

 そんなおっさんの怒りをどこ吹く風に、現在彼らは私の目前を通過中。

 ちなみに私は天井の岩壁にへばりついてたりする。今の私ならロッククライミングも楽勝よ。

 魔法か。早いうちに一度確認したほうがいいだろうなぁ。

 よし。では。落下。

 音もなくマジシャンの目の前に着地する。驚愕にその目が見開かれるのと同時に、あごに横からパンチ。もちろん手加減してだ。お、うまく決まった。脳震盪をおこしたっぽい。

 振り向く。残り4匹は気づいていない。もらった。お前たちの命運は今ここに尽きたのだ!

 一足で前を行くアーチャーとの距離をつめると、鋭い踏み込みと同時に、ひきつけた右腕を腰から押し出すようにして振りぬく。この感覚は、いける。

 アーチャーの頭部が弾け飛ぶ。クリティカルだ。

 パンチでクリティカルが出ると、こんな風に凶悪な破壊力で貫通する。手刀だと蹴りと同じように切断だ。

 突然、隣にいた仲間の頭が弾けたことに、もう1匹のアーチャーは動きが止まる。その隙は命取りだぞ。

 間髪いれず、軽いステップにあわせてワンツー。あ、首が背中に折れ曲がってしまった。ゴブリンは上位種になってももろいなぁ。

そのアーチャーの足首を持って、ようやく振り返ったナイト2匹に襲い掛かる。

 ふおおお! 秘技ゴブリンヌンチャク! ホァターッ!

 仲間の死体で仲間を殴打、撲殺。

 非道! 外道! なんたる悪党!

 おっさんは今、猛烈に悪である。


 さて、ゴブリンナイト2匹とゴブリンアーチャーだったものはすでに肉塊と成り果てた。ここからが本日のハイライトだ。


~はじめての まほう~ かいじん いちねんせい


 やあ、わるい子のみんな! 怪人のおじさんだよ!

 今日はみんなと一緒に、「まほう」について勉強していくよ。

 まず準備するものは、「まほう」が使えるモンスターだ。

 え、こわくて準備できない? うんうん。最初はみんなこわいよね。でも大丈夫。

 そういう場合は、おにいさんおねえさん怪人にお願いして手伝ってもらえばいいんだ。

 おっと、でも中にはとってもくさ~い「おなら」をするおねえさんや、ながーい舌でみんなをぐるぐる巻きにする「えすえむぷれい」が好きなおねえさんもいるから、気をつけようね。

 さあ、ここに「まほう」を使うゴブリンを準備したよ!

 見事に気絶しているね。早速起こしてみよう。ほうら、ほっぺをペシペシ。ペシペシ。

「……ギ、ギギ?」

 よし、起きた。さあ、混乱しているうちに離れようね。「まほう」を使いやすくしてあげるんだ。

「ギッ! ギギィ!」

 おやおや、かなりあわてて周りを見渡しているよ。おともだちを探しているんだね。でも残念。みんなハンバーグだ。

 ここは体を大きく動かして、自分をアピールしよう。声も出すといいね。

「イーッ、イーッ!」

 さあ、ばっちこい。みんなも一緒に笑顔でアピールだ。

 ややや。ゴブリンが杖を持って、なにかつぶやき始めたよ。あれはたぶん「じゅもん」だ。「まほう」を使うための準備だよ。

 出るのかな。出るのかな。どきどきしちゃうね。

 うわぁ、火の玉だ、火の玉が出たよ! すごいすごい! うわっ飛んできたよ!

 でもひらりとかわしちゃう。みんなには難しいかな。でもおじさんには楽勝なんだよね。

 さあ、もっと撃って来い撃って来い。じっけんじっけん!

 あれ、ごぶりんが後ずさりしちゃってるよ。だめだなぁ。まだじっけんとちゅうなのに。

 あ、逃げた。だめだね。おじさん、そういうのはよくないと思うな。

 だから追いかけて……とぅ!

 あたまのうえを飛び越えながら、ひねりをいれて着地。はい、とおせんぼー。

「イーッ、イーッ!」

 またまたアピールだ。あ、また逃げた。いいよ、おじさん何度でもジャンプしちゃうぞ。

「イーッ、イーッ!」

 ほうら、これでどうだ。わるいこのみんな、この場合のコツは「しかしまわりこまれてしまった!」ぜつぼうかんを出すことだよ。

 よし、うまくいった。火の玉だ。

 でもかわしちゃう。えい。

 みんなわかったかな? これが「まほう」だよ。もちろん他にもたくさん種類があるんだ。みんなもがんばって探してみよう!

 じゃあまったね~。 ばいばーい。

 フンッ!(撲殺)


~はじめての まほう~   おわり

ゴン太くん好きだったなぁ。ふごふごふご~。

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