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幼なじみはお嬢様

作者: 和藤渚

「ゴホッゴホッゴホッ……」

今、僕の状態は震えるほど寒く、何も考えられないほど頭が痛い。そして咳が止まらず、鼻水も止まらない。熱は38.2度。

そう風邪を引いているのだ。

いまは桜も散り葉が着き始めるちょうどいい季節だっていうのに風邪を引いている。

まぁ昔から病弱だった僕にとっては日常茶飯事。

ゴゴゴゴゴ……

と近所迷惑のレベルをはるかに超えている轟音が鳴り響く。

間違いない!!! あの人だ!!!

「釜田英太郎?もってきましたわ。」

と最低でも1台2000万はする自家用ヘリで颯爽と現れた金髪で腰まである綺麗な長い髪に、外国人のようなはっきりとした目鼻立ち、透き通ったな碧い瞳、まるでフランス人形をそのまま人間にしたような美女。

この人は誰もが恐れる美川財閥の娘であり次期後継者でもある、美川亜由美みかわあゆみ僕の幼なじみである。

「普通に入ってこれないのか?いつもいつも……ゴホッ」

わたくしが来たからにはもう大丈夫!!」

と自信満々にいう亜由美。

大丈夫なわけね〜だろう!!!


風邪を引くたびにこの調子で薬を届けにくる。

たくっ! いつになったらちゃんと玄関から自家用ヘリを使わずに入ってきてくれるのだろうか?それともそれは、一生かなわない夢なのか……

普通なら近所から苦情がたくさん来てもおかしくないのだがなにしろ誰もが恐れる美川財閥である。

何をされるかわからない。

何人かは屈することなく苦情を言ったのだが、その人たちはみんないつの間にか姿が無くなる。そうそうこの間引越して何も知らずに苦情をいった勇気ある人の家もさら地になっていた

ご愁傷様です……

そしてホントにごめんなさい……

近所のみなさんも毎回すいません本当に

と心の中で謝るなか、

「これは抗生物質で一日3回食後に飲むこと。副作用で眠くなるから気をつけて。後これは・・・」

と何事もなかったように薬の説明しだす。

風邪を引くたびに思う。そんな薬より胃薬が欲しいと

あれ? 気にしてなかったけどなんでいつも僕が風邪引いていることがわかるんだろう?

それにどこから薬を調達してるんだろう? そもそもなんで僕にそんなことをするのかがわからない

と考えるといろいろと黒い部分がみえてきそうなのでやめようこれ以上は……

「ではわたくしはこれで。お迎えは?」

「いいわ。明日、英太郎と一緒に登校するから」

おい!! 泊まっていく気かよ!!!

「左様でございますか。では英太郎様くれぐれもお嬢様をよろしくお願いします」

とS.Pの人であろう黒ずくめの人がそう言って自家用ヘリとともに去っていった。

美川財閥は100年以上の歴史がある由緒正しいお家。

そのためいろいろと英才教育施されている。

亜由美も例外ではないそのためか成績は常にトップ何にでも手本にされる存在。


次期後継者だからと生徒会長になるつもりだという。

お願いだから独裁になるのだけは止めてもらいたい。

薬の説明が終わると

「もうお昼食べました?」

「いや、まだだけど」

「この私が作ってあげますことよ?」

「遠慮しとくよ……」

「遠慮する必要がどこにありますの?」

彼女はたしかに何でもできるが料理だけは苦手だ。

本人は気づいていない様子。いや気付いてるけど認めたくないのだろう。

遠慮じゃなくて拒否してんの!! 拒否!! わかってます?

という心の叫びを尻目に彼女はケータイを取り出しどこかに電話し始めた

「松坂牛と……産のワイン1973年モノで。あと……」

と次々と手に入れるのが非常に困難と思われる高級食材を伝えていく。

まぁこの人の財力と権力なら簡単に入手出来るんだろうけど……

数十秒後

「わかった」

と掛かって来た電話を切った。

「では作ってきますわ」

と一階に降りていった

は〜……これでやる仕事が一つ増える

僕は頭を抱えた。

「きゃー」

わたくしの言うこと聞きなさい!!!」

「わ〜」

と不安な叫び声が聞こえてくる。

はぁ後で自分で作るかとうなだれた。

なんだかんだで完成した得体の知れない料理、いや料理というべきなのかとにかく異臭漂う変な色をしたモノが入った皿たちが並んだ。

「これは伊勢えびのリゾット、これは松坂牛のたたき、これは……」

と料理の説明をするが言われてもわからない

第一まだ熱があるので食欲がない

「ゴメン食欲がないんだ」

「それは大変!!! 早く食べないと!!! さぁどうぞ」

と説明をやめ勧める亜由美だがどうも食べる気が起こらない。

熱があるからでもあるが、一ヶ月空腹で死にそうな人でも一目で食欲が失せるような料理である。

選択権のない僕はどっちにしても死ぬことは確定してるわけで……

そして僕は腹をくくった。

「いただきます」

引き攣った笑顔で口に運ぶ。

「ゴホゴホゴホッ……」

初めて体験したこの地球上に存在しないような味。

こんなの食べ物じゃないよ……

と内心思いながら

「おいしいよ」

とまた引き攣った笑顔で感想をいうと

少し顔が赤くなり

「当然ですわ。このわたくしが作ったんですから」

と自慢する。

あれ? なんで赤くなってるんだろう? 風邪引いたのかな?

としばらく考えてみる。

「ちょっと来て?」

「なんですの?」

と亜由美は近づく。

そして両手で彼女の頭ををそっと自分の額にもってくる

「熱はないようだけど……」

すると彼女の顔はますます赤くなりとっさに離れた。

「何をするんですの!!?」

とひっぱたかれた

え……? なんで……?

そんな時ピーンポーンと救いのチャイムがなった

「は〜い」

と喜び勇んで階段を降りた

玄関には友人の加藤と杉田がいた。

「お〜やってるね」

「今日も来てるのか?」

「なんでわかんの?」

「この地球上にないような臭い、お前の今にも死にそうな顔見ればわかるよ」


「とりあえず上がってよ」

と二人を家に招き、自分の部屋に入れ、トイレに行った。

「うい〜っす」

「来たよ」

「あら? 来ましたの?」

少し不機嫌そうな亜由美。

加藤は料理を見て味見をしてみる。

「お〜これはヒドイね。道理で英太郎くんが死にそうな顔なわけだ」

と冷静に批評する。

「でも英太郎はおいしいって言ってくれましたわ」

「あいつならそういうさ」

「まぁ優しいからね。英太郎君は」

と二人は言った。

「もしかして今の料理で英太郎に完全に嫌われたってことですか?」

「風邪引くたび毎回強引に食べさせればね」

「そんな……」

「大丈夫。まだ起死回生できるから」


ソノコロ僕はというと

グルグルグル…………

この腹痛と格闘中。

お父さん、お母さん先立つ不幸をお許しください……と書きたくなるくらいの痛み。 そして

今日はしつこいな……

いつもいつもやってくれるじゃん

いつもやることは金と権力使ってハチャメチャででも憎めない不思議な人。

それにしてもなんでいつもここまでしてくれるんだろう?

こうやってトイレで悩むのも恒例になっている。

しかし答えが出たことは無い。


おなかの調子はなんとかよくなったので部屋に戻った。

入るなりすごい重い空気。

なんだよ……この空気……

「ど……どうしたの?」

「いやちょっとな」

「そうそうお前台所借りるぞ」

「別にいいけど。なにするの?」

「それは秘密だ。美川さんもきて?」

そういって僕を残しみんな台所に向かった。

なにするんだろう?


「うわ〜」

「どうやったらこうなるんだ?逆にすごいよ」

台所の惨状に驚きながらも使えるまでに片付いた。

「さぁ〜やるか」

「何をするんですの?」

「言ったろう?起死回生できるって」

「またつくろうよ?俺たちが手伝うから」

「このままじゃイヤでしょ?」

「あなたたち……」

「持つべきものは友ってね」

そして料理を開始した。

「たくっ驚いたよ。まさか一国を動かせる大財閥の娘が

病弱で内気な英太郎が好きだとは」

「そんなんじゃなくてよ!!」

と必死に否定する亜由美。

「顔、赤くなってるぞ。塩とって」

「素直になろうよ」


そうあのときから私は……

私はその時お稽古事が苦痛で仕方なかった。とても厳しくある日ついに逃げ出し

た。

初めての公園で

「こんなもので庶民は遊んでますの? 貧乏くさいですわね」

といろいろ回っていると

「うわー!! 髪が金色だぞ?」

「妖怪だー!!」

「何が妖怪ですの? れっきとした人間ですわ!」

「妖怪がしゃべった〜怖いよ〜怖いよ〜」

「来るな妖怪金髪女」

と一人の悪がきが突き倒した。

「うわ〜妖怪に触ってしまった!! 手が……」

と逃げていく悪がきたち。

私はうずくまっていた。

しばらくすると

「大丈夫? どこか痛いの?」

と一人の男の子が声をかけてきた。

「いいえ。違いますわ」

「なんで泣いてるの?」

「なんでもないですわ」

「痛いの、痛いの飛んでいけ〜、痛いの痛いの飛んでいけ〜」

と頭をなでる男の子。

「もうなにをするんです!!? わたくしに関わらないでください!!!」

と彼を見上げると私ににっこりと笑ってこう言ってくれた

「お友だちになろう?」


そして私はまたうつむいた。

とても嬉しかった。


大財閥の娘だからとたくさん厳しいお稽古ごとをし、接する人たちも大人の人ばかり。たまに同い年の人と接すると思えばが私の政略結婚のお見合いだし。外にでれば美川と名乗っただけで態度が変わったり逃げ出したりする。

「私を誰だと思ってますの?」

「誰?」

「聞いて驚かないことねわたくしは泣く子も黙るあの美川財閥の一人娘美川亜由美よ!!!」

「…………」

そういうと彼はキョトンとしていた。

(そうよね? 美川って言えば誰でも驚くわ)

「……みかん? さんぱつ? それと友達と何の関係があるの?」

「美川財閥です!!!もういいです!友達にでも何にでもなってあげようではありませんか!!!」

「本当?」

「本当です」

「やったー!!」

無邪気にはしゃぐ男の子はとても眩しく見えた。

「英太郎? 行くわよ?」

と少年の母親らしき人が近づいてきた。

私は立ち上がった。

「お母さん? 僕ね、お友達が出来たんだ?」

「へ〜この子がお友達になったの?」

「うん」

「お名前は?」

「美川亜由美」

と小さな声でぼそっと言った。

「聞こえないな〜お名前は?」

そして勇気を振り絞って

「美川亜由美」

今度は公園中に響き渡るぐらい大きな声でいった

(名前を言ったとたん態度が変わるんだ。いつもそしてそのことを知るや否やこの子を気に入らせようとするんだ……この人もきっと)

「そう? 英太郎と仲良くしてあげてね?」

と優しく微笑み頭を撫でる。

意外な反応に私は戸惑いを隠せなかった。

何かとても心地いいものに包まれているそんな気がした

「お嬢様!! こんなとこにいたんですか? 行きますよ」

と私は見つかり連れて行かれたのだ。

それからしばらく毎日のように公園に行くが彼の姿は現れず、ある日マスクをして辛そうに母親に連れられているのを見た。

それからであるそのたびにお見舞いに行くようになったのは




「美川さん? 手が止まってるぞ」

「あ……アチアチ」

「しっかりしろよ? 考えごとか?」

「まぁそんなとこですわ」

どんどん調理が進んでいく。

そして先程とは違う立派おかゆが出来た。

おかゆの入った鍋を持って行く。

階段からいい匂いが漂ってくる。それに釣られて食欲もでてきた。

「ほら出来たぜ」

と加藤がいってみんな僕の部屋に入ってきた

杉田がふたを開けると

湯気がもくもくと立ち上がりその中には綺麗に輝く米が印象的だ。

「これ美川さんが作ったんだよ。英太郎くん」

「ほとんど二人に手伝ってもらったんだけど」

「ちゃんとたべてやれよ?」

という二人は部屋から出ていった。

「いただきます」

とお椀についで一口食べてみる。

すげー! さっきと全然違う、程よい塩あじに食べやすい食感。

あまりのうまさに僕は掻き込んだ。

ついに完食。

「おいしかったよ。ありがとう。亜由美」

「当たり前ですわ。このわたくしが作ったものですよ?」

本日二回目のこの言葉。

こっちの方がとても嬉しそうに聞こえる。

でも一つ疑問が残る。

「ねぇなんでまた作り直したのかな?」

すると異様な雰囲気の沈黙が流れた。

あれ?なんか僕変なこと言っちゃった?

「私……帰る……」

と彼女は部屋を去っていった。

「え? 今日泊まるんじゃなかったの?」

「……もういいです」

と部屋から去っていった。

どうしたんだろう?

「はぁ……」

「またダメだったか……」

「こればっかりはどうにもならないもんね」

二人は亜由美を慰めるのであった。

私は美川亜由美。美川財閥の一人娘で次期頭首。今まで欲しいものは全て手に入れてきた。でも一つだけなかなか手に入らないものがある。

それは……

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。 シクルです。 和藤さんには何作か評価していただいているので、今回は私が評価しに来ました^^ 以下感想です。 一所懸命に、健気に頑張っている亜由美が非常にかわいらしかったで…
[一言]  こんばんは☆  和藤さんの作品はこれが初めてになります。以後、順次読ませていただこうと思っていますので、よろしくお願いしますね<(_ _)>  すでに評価の定まった感のある作品なので、今…
[一言] メッチャおもしろかった。続きが見たい!!
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