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落し物

涼介は一人校舎の屋上で空を見上げていた。

別に考え事をしていたわけじゃない。

どこまでも続く空に吸い込まれそうになり、誰もいない自分だけのこの空間を楽しんでいた。


涼介は、現実逃避が好きだった。

現実なんて、ろくなもんじゃない。生まれた時からずっと身に染みていたことだ。

この世界さえも壊せる左手を手に入れても、それは変わらなかった。


世の中には、人間武器庫(マンマガジン)のようにどこかで道を踏みちがえてしまい、「悪堕ち」してしまった人がたくさんいることを知った。

それは決して本人が悪いワケじゃない。

もちろん、根っからワルいやつもいる。

でも、そうやって人生をどこかで歩み間違えてしまった人たちこそ、救うべきではないのか。


って、何考えてんだか。

俺がそんなことできるわけないじゃないか。


「あっいたいた」


振り返ると、そこには笑顔の美香がいた。


「涼介くん、やっぱり屋上にいた」


「やっぱりってなんだよ」


「もぉそんな怒ることないでしょ、それより、これ見て」


そう言い美香が出したのは、研究員たちからもらった携帯のような機械「コンパティ」だ。

これは、司令室から涼介たちへ、国の必要な極秘情報を送るためのもので、指定された犯罪者の場所がすぐに分かるマップや、地球の軌道上を回っている巨大な衛星からの映像を見ることができるハイテクマシィンだ。

しかし、なぜだか知らんが自撮りもできるカメラ機能や、歩数計などのコレジャナイ機能もついており、挙句の果てには画像フォルダにあの研究員たちの思い出の写真が入っているという有り様でもある。


「ついさっき司令室からメッセージが来て、君たちに調べてほしいことがあるから基地まで来てくれないか、だってよ」


「あぁ、わかった。じゃとりあえず清田に電話しとくわ」


「うん」



基地に入ると、三人は長官の所まで行った。

長官はそれに気づくと立ち上がった。


「みんな、急に呼んだのに来てくれてありがとう」


「そのもう一人とやらは今日も来てないけどな」


清田がイヤミを言う。


「では、早速本題に入ろう。こないだのマンマガジンと君たちが戦ったところの跡を少し調査し、何か気になるものはないか探してみた結果、こんなものが見つかった」


そう言って長官は一つのUSBメモリをポケットから出した。

それをオペレーターの一人に渡して差してもらうと、天井から下げられている大きいモニターに映像が映る。

そこには、一人の少女が町の中を歩いている様子が映っていた。

この視点で考えると、ドローンかなんかで撮影しているのだろうか。

少女は金髪で年齢は小学5年生ぐらい、顔を見る限り日本人ではなさそうだ。

そしてその美しい青い目は、遠くからでもはっきりと分かるものだった。


「これは興味深いですね」


「そうだろう、このUSBはきっとマンマガジンが所持していた物だ。だとするとこれは何かの手がかりになるかもしれん。映像を解析した結果、ここの場所を特定することができた。そこで、君たちに調査にいってほしいのだ」


「エッ、なんで俺たちなんですか」

清田が露骨に嫌な顔をする。


「すまんね、他の連中は現在フィリピンに別の件で調査に行かせていて…何人かはここに残るようにしたはずなんだが何かの手違いで誰もいないんだ」


どんな手違いだ。

長官しかいないじゃないか。


「ホラ清田くん、そんな深いため息つかない!」


美香がまさにぷんぷん、という擬音がふさわしいような感じで清田を叱る。


「ハァ…見たいアニメがあるのに…」


実際に指定された場所に行ってみると意外と近所で、三人はなんだか拍子抜けした。


「うちの近所に何があるっていうんだよ」


さすがにキレる清田。

涼介も少し腹を立てた。


その時、なんだか後ろで声がした。


「お…お前は!?」


「ん?」

三人は一斉に振り返る。


そこには念動力の使い手、亀谷が立っていた。


「あっ!お前は!」


涼介も同じ反応をする。


「ゲゲッ!究極の問題児で有名な亀谷先輩じゃないか!」

清田が腰を抜かす。


「おい狩宮、お前コイツ知り合いなのかよ…」

涼介の耳元で清田がそうささやいた。


「まぁ、一応そうだけど…」


「コイツが、四人目の超人間だ」


「えええええええええええええええ」

さすがの美香も腰を抜かした。


「なんだ、お前らも超人間なのか」

亀谷が清田と美香を指さしてそう言う。


「ところで、なんでお前もここにいるんだよ」


「アァ!?先輩に向かって呼び捨てか!?このクソガキが」


「うるさいなぁ、お前だってなんか理由があってここにいるんだろ?」


亀谷とまるで同級生かのように普通に会話する涼介を見て清田は口をぽっかりと開ける。


「あぁそうだ、さっき公園でなんか様子のおかしいやつがいたから追ってみたんだ。確かこっちの方に…」


「それは、俺のことか?」


今度は四人で後ろを振り返った。

すると、そこには青いタンクトップを着た一人の男が立っていた。


「俺の名はスニーズ。お前らの敵、『最凶犯罪者』の一人だぜ?」










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