第6話
「つ、着いた…」
伊織たちが引き返してきた場所から学校までの距離は約500メートル。
なのに伊織がこんなに疲れているワケは…
「伊織、頑張れ。このまま教室まで連れてって?」
……可愛い。カイが可愛いのは認める。が、普通は逆じゃないのか。一応、彼氏だろう?
彼女を助けよう、とか彼女の荷物を持ってやろう、とかないのだろうか。
「えー。だってしんどいから。伊織おんぶして」
どうやら考えていたことがバレていたらしい。
最初の30メートル程は伊織の手を引いて歩いていたのだが、その後は…
カイは学校に着くまで伊織にもたれかかって、ズルズルと歩いて(?)来た。
それにもかかわらず、今度はおんぶって言った?
ふざけるなよ。
「カイ、ごめん。私は180センチ以上もある男を担げるほどの力を持ち合わせていないんだよ。それに体重もそれなりにあるだろ?」
「まだ成長してるから身長はもうちょっと伸びるよ…。体重は… 63キロぐらいかな?」
…それは驚いた。
カイは太ってないが、それなりに筋肉はあるはず。なのに63キロしかないとは驚きである。
「もっと食べなよ。痩せすぎ」
「痩せすぎではないと思うけど…。 ま、伊織がそう言うんなら食べるよ」
「うん。そうして」
そんなやりとりをしながら階段を上っていく。
「放課後の誰もいない教室、か…」
「変なコト考えたでしょ」
「え…?うん」
「否定しなさいよ」
カイはまだ何かブツブツと呟いているが、伊織は無視することにした。
……無視する他に方法なんてないし。
そんなこんなで、教室(2-B)がある階までたどり着いた。
「伊織、サッサと終わらせなくていいからね。出来るだけ、ゆっくり丁寧に記入してってね」
誤字、脱字等ありましたらご連絡ください。
*8/28 慎重→身長に直しました。
ご指摘ありがとうございました。