第5話
ゆっくりと歩きながら、カイは説明し始める。
「今日、レイが当番なんだよ。家事の、ね。だから、オレは伊織を独り占め出来るってワケ」
「うん、ごめん。意味わかんない」
伊織は清々しいほどにハッキリと言い放つが、意味が全く理解できない訳でもなかった。
「だから、レイはより道せずに家に帰らなきゃいけないんだけど、オレは特に予定もないし伊織と一緒に居られるんだよね。分かった?」
「あ、はい。言いたいことは察したからそれ以上言わないで」
つまり簡単に説明すると、カイにとって邪魔なレイが居ないから伊織を独占できて嬉しくて舞い上がってる、と言うことだ。
……これ以上カイの説明を聞いているのは恥ずかしすぎる。
「珍しいね。こんなにカイの機嫌がいいの」
「そう?最近レイのおかげで2人っきりになれなかったから…。伊織が足りない。伊織…」
そう言いながら繋いでいた手をそっと離し、歩いている伊織に背後から抱きつく。
「あー、はいはい。分かったからやめて。恥ずかしいから」
「ふーん…。じゃあ人目につかない教室ならいいんだ…?」
「なんで教室1択なの。それに、どうやったらそんな発想にたどり着くのか知りたいんだけど。貴方の脳は正常に動いているの?」
伊織は額を抑えながら今日何度目かのため息をつく。
普段は人に見られる可能性がある屋外で話すことすらしないカイがこんなにも喋って、感情も出しているのは本当に珍しい。
「相当機嫌がいいんだな」と思いながらカイに悟られないように喜ぶ。
「カイって何気に独占欲強いよね」
「そう?伊織がそう思うんだったらそうかもね」
やはり楽しそうに、嬉しそうに笑うと伊織の手を引き学校へと向かって再び走り出した。
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