第18話
伊織は自分を嘲笑うかのように話し始めた。
しかしそれは、孤独だ、助けて、と言うメッセージにしか思えなかった。
「親に捨てられた、って知った途端に皆んな離れていってしまうから。私を哀れむような目で見ておいて、私から距離を取る。それだけ。でもカイは普通に聞いてくれるから」
それから暫くは伊織の言葉が忘れられなかった。自分の心の奥に突き刺さって取れなかったから。
今まで、何に耐えていたのだろう。
それは果てしない自分との戦いのようにも思えてくる。
『どんな時でも自分を強く持て』
そう言い聞かしていると伊織は教えてくれた。
この事を話したのはカイだけだと言うことも。
教室で、何故オレと約束してくれたのか詳細は分からなかったけれど今となってはそんな事はどうでもいい。
伊織を本当の意味で救うことは出来ないかも知れないけれど、自分で良いのならそばに寄り添うことも出来るだろう。
何年先まで伊織の隣に居られるのか。
分からないことだらけだった。
「カイ」
振り向くとレイが背後に立っていた。
部屋から出て行ったのではなかったのか。
「ごめん」
その言葉が終わると何故か景色が明るくなった。
まるで何処かへ導くかのように、光の道が現れた気がした。
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