第13話
あの日からマトモにレイと話す事なく迎えた日曜日。
結局機嫌は直らないし、レイの取扱説明書があったら楽なのに。
伊織と約束したのは今日の午後2時に行く、という事だけ。強いて言うならこの事を他言しないということ。
今更だけど緊張する。
けれど、時間が待ってくれる訳もなく時計の針は1時半を指そうとしている。
そろそろ家を出なくては、2時に間に合わなくなってしまう。
母さんに、「ちょっと白銀さん家行ってくる」と言って家を飛び出た。
背後で母さんが「いってらっしゃ…、えっ!白銀さん⁉︎あんた何かしたの⁉︎」と叫んでいるが構わず自転車を押し、走り出した。
そんなこんなで伊織の家に着いた時には汗だくで。
汗臭いかな、なんて気にしながらインターホンを押す。
……相変わらず豪邸だな。家の周囲は何メートルあるのだろうか。否、何キロかもしれない。
暫くして、「はい。どちら様でしょうか」とインターホンから聞こえてきた声。
少し歳をとった女の人の声だった。
伊織のお母さんか?と思い、「嫩カイです。伊織さん居ますか」とインターホンに向かって答えると、「少々お待ちください。話は伺っております」と返ってきた。
…家政婦か、メイドか。金持ちめ。
女の人は少々お待ちください。と言ったが、待ったのは30秒ほどだったと思う。
家の門が開き始めた。門が開き、オレを出迎えたのは、伊織でもなく、さっきの女の人でもなく、犬だった。
余談だが、門は自動で開くらしい。
……金持ちめ。羨ましい。
犬はまるで「付いて来い」とでも言うようにオレを案内し始めた。
「門開いたし、入っていいよな…?」
「わふ」
ここの犬は人間と話せるのか。さすが金持ち様様だな。
犬に案内され、やって来たのは綺麗な庭だった。
何もかもが綺麗にされている。
芝生や木、噴水、壁に至るまで。
そんな中に1人…、1匹突っ立っていたのは大きくて綺麗な『ネコ』だった。
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