第11話
「い、伊織泣いてたな……。っ、でも俺は悪くないぞ?」
「そうだよ。隠してた伊織が悪いんだ」
「そんなのより伊織を捨てた伊織の親が悪いんだよ」
静まり返った直後に始まった『自分は悪くない。』の言い合いだった。
殆どの人がカンタと同じ立場だったためか、カンタを責める人は1人もいなかった。
レオはそんなクラスメートに呆れてさっき教室を出て行った。
そんな中レイはカイを探していた。
「………カイ?」
カイがいない。
まさか追いかけて行ったのではないか。
そんな事が脳裏をよぎる。
「なんで……っ」
なぜかイライラする。伊織をカイが追いかけて行ったかもしれない、と言うだけで。
なぜ伊織を追いかけたのか。
なぜ自分以外の子に興味を持っているのか。
なぜ、なぜ、なぜ。
その感情が嫉妬だと気づいたのは、カイが豪華な家に入って行くのを見てしまった時だった。
私のカイを横取りしないで。
その日、カイが家に帰ってきたのは夜の8時だった。
なのに、なぜかカイは怒られなかった。
それが私をさらにイライラさせた。
「お母さん、なんでカイを怒らなかったの。ウチの門限、18時でしょ」
「ちゃんと連絡いただいたのよ。白銀さんのお宅から電話がかかってきて、カイに夕飯食べさせてもいいか?って。その後、カイからも説明してもらったし。白銀さんって同級生なんでしょ?」
普通、そんな電話一本で信用しないでしょ。
お母さんは詐欺に引っかかるな。と思ったが口には出さない。
「………あっそ」
それだけ言って逃げるように2階に上がる。
ガチャ、と音を立てて開けたのはレイの部屋ではなくカイの部屋だった。
「カイ」
「……なに?」
そっけない返事が返ってくる。
「なに?じゃない。なんで白銀さんの家で晩ご飯食べてきたの」
「誘われたから」
「なんで誘われたの」
「伊織の友達が家に来るのが珍しくて嬉しかったんじゃない?」
友達…?カイと伊織が友達になった、なんて聞いたことがない。
「いつから友達になったの」
「今日。伊織の家に遊びに行ったとき」
伊織、そう呼び捨てした。
確かに自分も心の中では呼び捨てだが、それとこれとでは話が違う。
「カイが女子を呼び捨てなんて珍しいね。なんで白銀さんの家に遊びに行ったの」
「伊織のことが気になったから」
「なんで白銀さんのことが気になるの」
「綺麗だから。全てが」
爆弾発言をしたのはスルーしてもいいのだろうか。
他にも聞きたいことは沢山あったのに、何故か声がつっかえて出てこない。
「レイは伊織が嫌いなの?」
突然の質問。突然すぎて、「え…?」としか答えられなかった。
「別に、嫌いならそれで良いんだけど。彼奴らみたいな事だけはするなよ」
「……するワケないでしょ」
カイは「ん」とだけ言ってレイに背を向けた。
それは、出て行け。1人にしてくれ。と言うカイの無言のメッセージでもあった。
誤字、脱字等ありましたらご連絡ください。
今年中に新作を投稿しようと思っています。
そちらも気が向いた時に読んで頂けると幸いです。