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第1話
5月下旬のある日。
放課後の通学路を彼女たちは仲良く歩いていた。
……仲良く…?
「……」
「……」
「……」
無言。無言。無言。
静かな時間がゆっくりと流れている。
無言、と言っても気まずい訳ではなく、むしろ居心地が良い。
「……伊織」
静かに、囁くように。しかし、はっきりと聞こえてきた声。
その声は、優しくて、誘っているようで。
不思議なオーラに包まれていた。
この通学路にいるのは、彼女たち3人だけ。
通りすがりの通行人も、近所の野良猫も、カラスもいない。
伊織、と呼ばれた少女の名前は白銀伊織。
そして、伊織を呼んだのが嫩カイ。
あと1人は……
「ちょっと、カイ。私がいる前で2人だけの世界に入らないで。伊織が汚れるのを見たくない」
そう、あと1人はこの少女のことである。
トゲトゲとした事を、涼しげな顔でサラリと言い放ったのは嫩レイ。
「……そんなつもりじゃなかったんだけど」
さすが双子である。持っている雰囲気がとても似ている。
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