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辺境の村ヘン4

―――――





 村へと戻った南達はジェイルに感謝の言葉を述べると、戦利品を公平に分配し、その場で彼らと別れた。

 既に日が傾き始め遠くに望む山の向こうへと太陽が沈んでいくのが見える。

 ゴースト状態のまま辺りを見回ってきた美紗が思わず声を上げた。


『私は何時までこのままなの?』

「先に教会に行こうよ!」


 愛音は南の手を取ると教会に向かって走り出した。

 柴はその様子を見ながらにやけ面でうんうんと何事かを頷いていたが、その場に取り残された事に気付き慌てて南達の後を追った。


 教会は荒れ果てており神父の姿も見えなかったが、初期ゴースト状態からの解除は無料で行うことが出来る。

 美紗は愛音の指示通りに十字架の前に立つと淡い光に包まれた。

 美紗の肉体が徐々に明瞭になると音を立てて石の床へと降り立つ。


「はぁ、足があるってステキな事ね!」

「寄生プレイでも良かったんじゃない?」

「それだとロールが足りないよ」


 南が口にする寄生プレイとは、ゴースト状態のプレイヤーが取り憑く対象プレイヤーから経験値配分を頂く。

 初心者救済用のシステムである。


「ローグ技能は絶対に外せねぇからなぁ」


 柴はそう言うと南の肩に手を乗せた。

 宝箱の開錠や罠の解除又は斥候等の任務は、ある意味前線で敵を押し止めるタンクよりも危険の伴う作業である。

 そういった理由から、尤もゲームのプレイ経験が豊富な南がローグを選択するのは自然な成り行きであった。

 更にはクソゲークエストでは昔ながらの役割分担が根強い為に最低限“タンク・アタッカー・ヒーラー”を必要とする。


「美紗はウィザードがいいかな?」

「後方からの魔法支援なら、危険が少ないね」


 南が美紗のクラスを提案すると、それに愛音も同意する。


「それだと前線が不足するじゃない、私がアタッカーではダメ?」


 美紗は先程までの展開を観察して、このゲームが普通のゲームではないという疑念を抱いた。

 このゲームにはプレイヤーを楽しませようと考える配慮がまるで存在しないからだ。

 それはまるで、ゲーム世界が憎しみを持ってプレイヤーを本気で潰しにきているような感覚だった。


「いきなり何もない平原に放置、村のNPCは全滅、このゲームの製作者は何考えてるんだ……」

「……挑戦」

「どういうこと南?」

「“クリアできるものならクリアしてみろ”という挑戦状――それがクソゲー」


 ただ単にバランス調整を間違えただけではないのかと柴は頭の中で反論したが、南は気にすることなくクソゲーを熱く語る。


「足りない予算、迫り来る納期、終わらないデバッグ。

 確かにそこからクソゲーが生まれていたのも認める。

 だが、ただ単に難易度が高い、プレイヤーに不親切、攻略手順を間違えて詰む、そうした物がクソゲーの烙印を押されてきたのも現実だよ」


 南は目を閉じ反芻する。

 ゲーム暗黒期と呼ばれていた時代を、有名サードはナンバリングタイトルを大量生産しブランドを切り売り、プレイヤーが攻略手順を考慮する事なく、ボタンを押すだけでプレイ可能な思考停止ゲーが持て囃された。


「ゲームは不親切で当たり前なんだ」

「いや、それは南の嗜好なだけで……」

「良く分かってない人に限って“人生はクソゲー”だなんて言うよ」


 柴が南を諌めにかかるが、愛音が頷きながら横合いから合いの手を入れる。


「人生はクソゲーだと……クソゲーを舐めるなッ!!」


 南が掌を前方に突き出しポーズを決めると、愛音がそんな男の姿に見惚れながら相槌を打っている。

 柴と美紗は互いに顔を見合わせると、そんな二人を見て深い溜息を吐いた。





 村に夜の帳が降り草木の陰から虫の鳴き声が聞こえてくる。

 南は短く切り揃えた髪をかき上げ、満天の星空を眺めた。

 微かな衣擦れの音に気付いた南が振り向くと、そこには片側だけ結った髪を下ろした愛音の姿があった。


「南は眠らないの?」

「寝るとレベルアップが確定してしまうからな」


 クソゲークエストではパーティの平均レベルでリスポンするモンスターのレベルが決定される。

 それに加え最後に取った食事によって、ステータス上昇にボーナスが加算される。

 そうした慧眼もあって、南は手に持った硬貨を器用に回しながら〈早業〉技能を磨いていた。


「また皆でゆっくり出来るね」

「……そうだね」


 静寂が包む空き家の外で彼等を見下ろす月が周囲を明るく照らし出していた。


「これ何年位かかるかな?」

「レベルアップの速度から考えて、一年もかからないんじゃないかな?」

「……ちょっと早くない?」


 愛音は不貞腐れたように南の肩へと頭を預けると、南は慌てて硬貨を取り落とした。


「おわっ! 金貨がッ!?」

「えぇっ!金貨でやってたの? 銅貨でやりなよ、もう!」


 二人は夜の暗闇の中は月光の灯りだけを頼りに、落ちた金貨を探すのに数時間を要した。


―――――


―――――


LV:1

CLASS:ローグ

S・CLASS:レンジャー


STR:8 INT:9 WIS:9

VIT:9 DEX:14 LUK:11

HP:11 MAXHP:11

MP:0  MAXMP:0

AC:10 EV:7


・SKILL

〈隠密〉〈罠解除〉〈早業〉

・ABILITY

《疾走》

・EQUIP

E・旅人の服

・ITEM

NOTHING


―――――


LV:1

CLASS:ファイター

S・CLASS:パラディン


STR:11 INT:12 WIS:10

DEX:7 VIT:9 LUK:8

HP:10 MAXHP:10

MP:0  MAXMP:0

AC:10 EV:9


・SKILL

〈威圧〉〈生存〉〈騎乗〉

・ABILITY

《盾熟練》

・EQUIP

E・手斧 E・旅人の服

・ITEM

NOTHING


―――――


美紗

LV:1

CLASS:クレリック

S・CLASS:モンク


STR:11 INT:13 WIS:10

VIT:14 DEX:16 LUK:9

HP:9  MAXHP:9

MP:12 MAXMP:12

AC:10 EV:9


・SKILL

〈交渉〉〈製作〉〈治療〉

・ABILITY

《武器落とし》

・EQUIP

E・旅人の服

・ITEM

NOTHING


―――――


愛音

LV:1

CLASS:ウィザード

S・CLASS:ソーサラー


STR:8 INT:11 WIS:8

VIT:14 DEX:13 LUK:7

12

HP:11 MAXHP:11

MP:9  MAXMP:9

AC:10 EV:9


・SKILL

〈鑑定〉〈呪文学〉〈魔法装置使用〉

・ABILITY

《呪文熟練》

・EQUIP

E・旅人の服

・ITEM

NOTHING


―――――

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