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ゴブリン掃討1

―――――


 静寂に包まれた迷宮に石に掠れる金属音が響く。

 ジェイルはその場から立ち上がると、数度咳き込み周囲を改めて見渡した。

 他の仲間達は皆一様に石床に体を横たえている。

 ジェイルは簡単な治療なら可能な事を思い出し〈治療〉スキルを持つ美紗の元へと歩み寄った。


《癒しの手》


「んっ……ここは?」

「あぁ良かった。美紗君、すまないが他の人達に簡単な治療をして貰えるかな?」

「は、はい! あの、先程のモンスターは?」

「奴はどうやら自爆したようだ」


 《自爆》スキルは現時点で残存している生命力分のダメージを、戦闘フィールド内の全ての相手に与える事が出来る。

 しかし女に残されていた生命力は僅かであった為、辛うじて死を免れる事は出来た。

 美紗はジェイルに治療薬を渡すと重傷者から優先して治療を施す。

 自爆によって巻き上げられたのか、倒れ込んだ者達は体に灰のようなものを被っている。

 サントスが自力で立ち上がり口に入り込んだ灰を吐き出すと、鎌倉やサブも膝を付いて腰を上げた。


「さっきのがダンジョンボス……でいいんだよな鎌倉?」

「あぁ、どうやらそのようだな」

「鎌倉、サントス、魔方陣を探そう。今ここで増援を呼ばれたら一堪りもない」


 増援に現れた者達は消耗がそれほどでもなかったようだ。

 ボルダン兄妹もゆっくりと立ち上がり、魔方陣を破壊に向かった鎌倉達の後を追った。

 連戦に次ぐ連戦により疲労しきった南達は応急処置を受けてようやく状態を起こす。

 特にエルロンドの消耗が激しく美紗は迷わず治療薬を服用させる。

 浅い傷はたちまちの内に治癒すると、意識を取り戻し立ち上がった。


「ワーロックさんは?」

「……」


 エルロンドが周囲を見渡すとジェイルに対して言葉をかける。

 しかしワーロックのゴーストは、誰かに取り憑いた様子もないようだった。

 南達も簡単な治療を受けて膝を起こすと、ジェイル達に歩き寄る。

 次の瞬間、迷宮内が小さく揺れ、奥から光の立ち昇る様子がそこに居た者達の目に入る。

 やがて光は収束し再び辺りは闇に包まれた。


「どうやら魔法陣の破壊に成功したようだ」

「南君、私達は先に帰還してGMに問い合わせてみる。何かあれば連絡してくれ」

「はい、ご迷惑をお掛けしました」

「何、君が居なければ犠牲はもっと増えていただろう、気にする事はない……」


 上階からの救援隊の姿が見えると、ジェイル達は彼らと共に迷宮の出口へと歩き去っていった。

 南達も帰還しようと引き返してきた鎌倉達と合流。

 その後迷宮からモンスターが出現する事は二度となかった。





 迷宮から集められた武器が村の広場に並べられ、看板には「ご自由にお取り下さい」と達筆で書かれている。

 流石に転売目的で持ち去ろうとする者を見張る為にエルロンドが傍らで立っていたが、冒険者達は自由に手に取って品定めをしていた。

 エルロンドが広場を横切る少年の姿を視界に捉えると、遠巻きから声を掛けて手招きした。

 南達はエルロンドの元へ駆け寄ると、彼は一本の長剣を南に手渡す。


「エルロンドさん、これは?」

「五階の宝物庫からね。一振りは君にと思って」

「ありがとうございます」

「君達の分は除けて取っておいた。柴君が戦斧、美紗君が槌矛で構わないかな?」

「いいんですか?」


 あれから二日が過ぎ……五階からはかなりの数の装備と金貨が発見され、既に南達も分配されていた。

 しかしジェイル達にとって今必要としているのは金銭や物資ではなく人員、それも即戦力であった。

 GM、即ちゲーム中のAIヘルプにワーロックの身に起こった現象を問い合わせても、定型文を返されるだけに終わり。

 業を煮やしたジェイルは、最悪の結果を想定して自衛する為の戦力を無制限に組み入れる事を決定したのだ。

 元よりジェイルは現実世界では大手企業に勤める管理職という立場から、この手の活動には慣れていた為にスムーズに十数人のメンバーを集める事に成功していた。


「情報の共有を進めなければ、犠牲者が増えるかもしれない……」

「では拠点をもっと大きな街に移すんですか?」

「あぁ、人員が集まり次第、ヒューレーの街へ向かう予定だ」

「ヒューレー?」

「地域地図に載ってたんだよ、君にも写しを一枚渡しておこう」


 エルロンドは懐から一枚の紙を取り出すと南へと差し出した。


「それで君達はどうする?」

「しばらくは鎌倉くん達と行動しようと考えてます」

「成る程。君達は前衛が不足しているし、彼等には魔法職が居ないからな」


 南はその場でエルロンドと分かれると、当初の目的地であった冒険者の酒場へと向かった。

 酒場の扉を潜ると、サントスと柴が同じ食卓を囲みながらマンガ肉を貪っていた。鎌倉と愛音達は別の席で今後の方針について話し合っている。

 冒険者の数は以前に比べると目に見えて減っており、人も疎らになっていた。

 エンカウント率が下がった事で採取に向かう者や、近場のモンスターを狩ってレベルアップに勤しむ者達が増加したのが原因だった。


「鎌倉くん、愛音、相談は終わった?」

「うん、ゴブリンの集落があるんだって」

「生産職のメンバーから討伐依頼が出ているようだ」


 プレイヤーは冒険者ギルドを通して依頼を発注する事が出来る。

 期限付きの物から無期限の物まで様々だが、中には内容の異なる高難易度の依頼を発注しプレイヤーキャラをモンスターに殺害させ、所有者権限の切れたアイテムをくすねる手口も存在する為に犯罪者は利用できない。


「依頼人のミルキー……さんで宜しいかな」

「はい、よろしくおニャがいします」


 鎌倉の声に会釈して現れたキャットフォークの依頼人に対し、愛音が腕を上げて指をわきわきすると、ミルキーは身の危険を悟り後退りした。


―――――

―――――


LV:3

CLASS:ローグ

S・CLASS:レンジャー


STR:8 INT:11 WIS:9

VIT:9 DEX:16 LUK:11

HP:23 MAXHP:23

MP:4  MAXMP:4

AC:8  EV:8


・SKILL

〈隠密〉〈罠解除〉〈早業〉

・ABILITY

《念動球》《疾走》《矢止め》

《擬呪》

・EQUIP

E・長剣 E・革鎧

・ITEM

盗賊道具 繩 錠前


―――――


LV:3

CLASS:ファイター

S・CLASS:パラディン


STR:13 INT:12 WIS:10

VIT:10  DEX:8  LUK:8

HP:27 MAXHP:27

MP:4  MAXMP:4

AC:6  EV:8


・SKILL

〈威圧〉〈生存〉〈騎乗〉

・ABILITY

《盾攻撃強化》《武器熟練》

・EQUIP

E・戦斧 E・鋲打ち革鎧 E・盾

・ITEM

携帯用寝具


―――――


美紗

LV:3

CLASS:クレリック

S・CLASS:モンク


STR:11 INT:15 WIS:10

VIT:14 DEX:16 LUK:9

HP:21  MAXHP:21

HP:15 MAXMP:15

AC:7  EV:9


・SKILL

〈交渉〉〈製作〉〈治療〉

・ABILITY

《武器落とし》《拳骨》

・EQUIP

E・槌矛 E・革鎧 E・小盾

・ITEM

保存食 水筒


―――――


愛音

LV:3

CLASS:ウィザード

S・CLASS:ソーサラー


STR:8 INT:15 WIS:8

VIT:14 DEX:13 LUK:7

HP:20 MAXHP:20

MP:16 MAXMP:16

AC:10 EV:9


〈鑑定〉〈呪文学〉〈魔法装置使用〉

・ABILITY

《呪文熟練》

・EQUIP

E・杖 E・法衣

・ITEM

方位磁石 地域地図


―――――

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