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ヘンの迷宮8

―――――


 魅了されたキャラクターは操作権限を失い、同じ条件での同士討ちが可能とさせる。

 愛音と美紗がそれぞれ南へと襲い掛かるが、正確に操る事は出来ないのか放った攻撃はあらぬ方向へと飛んでいった。

 ジェイルが曲刀を構え攻撃すると同時に南は剣による障壁で攻撃を弾かせる。

 すると、ジェイルの攻撃が障壁を抜けて女の体を見事に切り裂いた。


「どういう事だ?」

「どうやら一度に一つの攻撃にしか対応できないようです」

「成る程、同時に攻撃を加えれば障壁を無効化できるのか……」

 

 柴はエルロンドを助け起こすと、モンスターの攻撃に備える。

 女の口から眼球が飛び出すと生命力回復攻撃を逆に利用し、手傷を負ったエルロンドが回復を開始する。

 愛音達は出血ダメージによって魅了状態から回復。

 事態は振り出しへと戻った。


「やっと体が動いた!」

「愛音は《凍てつく光》で障壁を、美紗はジェイルさんに《淡光の祝福》」

「うん」


 現時点で注意を払わなければならないのは、ジェイルが魅了される事だと考えた南は女性陣に指示を飛ばす。

 冷静に対処すればこのモンスターには有効なダメージソースが存在しない。

 しかしそれが南を逆に不安にさせた。

 そしてその不安は的中する。

 南の周囲にある虚空から無数の針が突き出されると南の体を取り囲んだ。

 慌てて体制を崩した南に針の山が襲う。

 それは中世の拷問器具《鉄の処女》のように南の腕に無数の穴を空けた。


「南くん!」

「大丈夫! この攻撃はその場から動かなければ良いみたいだ」

「ダメージに加えて拘束のバステか……エルロンド合わせるぞ!」


《凍てつく光》


 愛音の放った魔術が弾かれると同時に、ジェイルとエルロンドの《十字斬り》が完璧なタイミングで決まる。

 女は肉体に激しい裂傷を負いながらも包囲から逃げ出すよう、移動を開始した。

 先んじて待ち構えていた柴が手斧を振ると、障壁を抜けて僅かな手傷を負わせる。


「まだ死なないのかッ? かなり削った筈だぞ?」

「もう一度だ、エルロンド!」


 次の瞬間、ジェイルの周囲に無数の穴が出現し《鉄の処女》が発動。

 ジェイルは攻撃しようと身を乗り出した最中だった為に、体に多くの針が突き刺さり激しい血を流した。

 まだ南の拘束は解かれていない、さしもの南も自らの顔から血の気が引いていくのを感じた。

 一ターンに一人ずつ拘束する事で強制的に全滅させてしまうターンカウント技だと見抜いたからだ。

 即ちそれは残り人数分――僅か四ターンしか残されていないことを示していた。


「柴……ここは逃げるんだ」

「な、何でだよ」

「どうやら一ターンに一人ずつ拘束する攻撃みたいだ、このままでは全滅する!」

「だから倒す為に……」

「こいつの能力が皆が知れば攻略は容易になる。今はそちらを優先させるんだ」


 虚空から突き出される針に拘束されていたジェイルも南の言葉を肯定する。

 その時上空から何者かの声が聞こえてきた。


「おぉぉぉッ!」

「よっと……」


 兄のボルダンは着地に失敗その場で転倒するが、シャルダンは何とか無事に受身を取る事に成功する。

 思わぬ救援に柴の表情は明るくなるが、なおも南の顔は優れない。

 二ターン増えた程度ではこのモンスターに有効打が与えられるとはとても思えなかった。

 その時、一陣の風が吹くと女の体躯が短刀によって切り裂かれ、激しい血飛沫を上げながら紅蓮の花が咲いた。


「鎌倉くん!」

「南殿、遅れてすまぬ」


 見覚えのある後姿は面頬の忍者。

 鎌倉は落下の勢いを利用して攻撃を加え、女の肉体に重大な損傷を与える事に成功した。

 次々と地面に降り立つサントスにサブ、形勢はここに来て逆転の様相を見せる。

 ここにきて鉄の処女が発動、エルロンドの周囲から無数の針が飛び出す。

 腹部に傷を負ったエルロンドは血を流しながら呻く事しか出来ない。


「体力最大値に対する即死睨み! 魅了系全体バステ! 拘束系バステは一ターンに一人!」

「成る程、ならばこれだ!」


 南は鎌倉にモンスターの弱点を伝えると、鎌倉は女の足元で素早く印を切る。

 立ち昇る炎が女の体を包み込み、延焼による継続ダメージを与え、障壁を無効化する。


「忍法《火遁の術》!」

「HEY! 速攻で決めるぞサブ!」


 サントスが《喝》を入れると、素手による四連撃が女の肉体を殴りつける。

 殴り飛ばされてきた女に対しサブは容赦なく曲刀で打ちかかり、更なる手傷を与える。

 そこに柴が加わり、手斧が腰部に命中すると深い傷を負わせた。

 ボルダン達も時間を掛ければ拘束されてしまう故に技の出し惜しみは必要ないと判断。

 シャルダンは《狂暴》のスキルを発動、両手で剣を持ち女の肩口に切りかかる。

 激しい鮮血を滴らせながらも、女はまだ倒れることなく口から眼球を露出する。

 しかし炎に包まれている為に視界は遮られ、体力回復効果は無効化された。


「何者かは知らぬが、機会を無駄にしたな……隙有り!」

「兄者、《火炎剣》!」

「任せろ!」


 ボルダンとシャルダンは懐から油瓶を取り出すと剣に垂らし火をつける。

 ボルダン兄妹が女に向かって突進すると、ユニークスキル《火炎剣》からの連携技《火炎十字斬り》が女の胸部を切り裂いた。

 続けて鎌倉の短刀が背後から襲う、貫かれた短刀が喉笛に突き刺さり血の泡を吹く。

 サントスの回し蹴りが止めと言わんばかりに頭部を揺らすと、サブの《仁王立ち》からの大上段の斬り落とし面が正中線を完璧に捕らえ、頭部を割られた女は噴水のように血を吹き出す。

 更には柴の手斧と、美紗の棍棒が直撃。

 それでもまだモンスターは倒れなかった。

 さしもの柴も絶望の声を吐き捨てる。


「マジかよ! これだけダメージを与えてるのにッ!」

「HPだけならドラゴンに匹敵するのか……」


 南が全てを口にする前に女の肉体は宙に浮き上がると高度を上げ、縫い付けていた瞼から双眸を覗かせる。


「キャァァァッ!!」


 甲高い金切り声を上げると眩い光を放ちながら肉体は弾け飛び、女は《自爆》した。


―――――

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