表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/70

ヘンの迷宮6

―――――


 二十メートル四方ほどの部屋に蜘蛛の巣が張り巡らされているのを発見したジェイル達は天井にも目配せを加えながら慎重に部屋の中を歩き出した。

 蜘蛛の巣を鬱陶しがるボルダンが、蜘蛛の巣を切り裂こうと剣を身構えるのを慌てて南が静止する。


「糸の振動で蜘蛛にこちらの位置がバレてしまいます」

「そうなのか? すまねぇ……」

「今度も六体は居るよ?」


 やがて眼前に六匹のジャイアント・スパイダーが現れると、シャルダンが溜息を吐いた。

 出てくる敵の数が異常に多いのはクソゲークエストの仕様である。

 ジェイル達は隊列を組むと魔法の詠唱を終え、こちらへと飛び掛ってくるスパイダーに先制攻撃を加えた。


《眠りの雲》

《魔法の矢》

《魔法の矢》


 二体のスパイダーが床に力なく倒れ込むが、耐性がある為にすぐさま足に力を加え体を立て直し始める。

 続いてワーロックとゾラスが光弾を生み出すと突進してくるスパイダーの集団に魔力を浴びせた。

 しかし怯むことなく足を止めないスパイダーの前にジェイルが《無謀》にも突進するとスパイダー達はジェイルに向かって集結して行く。

 《無謀》のスキルは一~四体のモンスターから注目を集め、一身に攻撃を受ける文字通り無謀な能力である。

 更にモンスターに一斉に囲まれ危機に陥ったジェイルに更なる能力が発動した。


「私こそ《真の勇者》だ!」


 ジェイルはその場で回転すると両手に持った曲刀を振るい、取り囲んだジャイアント・スパイダー全てに攻撃機会を得る。

 スパイダー達の足が切り飛ばされ宙を舞うと、警戒したのかジェイルから一斉に距離を取った。


「どこから打っても挟撃扱いだぜ!」

「攻撃を集中させる」


 ジェイルが敵をひきつけている為に、背後を取った南達からの攻撃には命中に対する補正値が掛かる。

 ボルダンの振るった剣による攻撃がスパイダーの腹部を破壊。

 しかし辛うじてといった所で踏みとどまる。

 シャルダンの剣による突きがまともに顔面に入ると、スパイダーの一体はその体を冷たい石床に横たえた。

 南達がもう一体のスパイダーに連続攻撃を加え。

 まずは南の剣が足を切りつけ、四本の節を全て切り落とし腹をがら空きにする。

 続いて柴の手斧がスパイダーの腹部を丸太切りにすると、モンスターは下半身を置き去りに上半身で数歩前に歩むと力尽きた。


「ジェイルさん!」

「任せろ!」


 二体のスパイダーに組み付かれたジェイルはモンスターの牙から逃れ僅かな傷を負っただけに終わった。

 スパイダーの牙には微量な麻痺毒を含むが流し込むほどの暇もなかったようだ。

 エルロンドが細剣をスパイダーの顔面に深々と突き立てると、ジェイルの曲刀が轟音を立てて唸りスパイダーの腹部を弾き飛ばす。

 もう一体にはボルダンとシャルダンの挟撃により連携特技《十字斬り》が発動する。

 二人の兄妹の剣戟がスパイダーを襲うと、体液を撒き散らしながら体制を崩す。

 南達がスパイダーを囲み更なる攻撃を加え、ようやくその動きを止めた。

 その時魔法によって朦朧としていたスパイダー達が体勢を整え、中衛に向かって《跳躍》する。


「飛んだ!?」

「こっちに落ちてくるよ!」


 スパイダーは前衛を飛び越えて中衛へと移動すると柴と南がそれに反応する。

 しかし美紗はスパイダーの《蜘蛛の糸》に反応できず、糸に絡め取られてしまう。

 続いてもう一体のスパイダーが彼女に襲い掛かると、柴が庇うように前に立ちモンスターに食らいつかれる。

 鎧の装甲のお陰で浅い傷を受けただけで済んだが、柴の体に僅かな痺れが走った。

 やがてシェイル達の攻撃が次々と降りかかり、逃げ場の失ったスパイダーはそのまま殲滅された。


 前衛陣は息を切らせて力なく倒れ込むと、他のメンバー達は部屋の捜索を始めた。

 幾つかのプレイヤーの死体が発見され、ゴースト状態になったプレイヤーを回収すると、奥に鎮座していた宝箱に南が警戒しながら歩き寄った。

 南が一歩踏み出した瞬間、床が音を立てて開き。

 慌てて南はその場から跳躍、穴のふちへと手をかけかろうじてぶら下がる。


「南くんッ!」

「ゴメン愛音……多分落ちた先は五階だから……」


 慌てて柴が駆け出すが南は一言残すと指が外れ、地下の奥深くへと吸い込まれていった。

 柴は胸元で十字を切ると後を追って穴に向かって迷いなく飛び降り、愛音も続こうと腰を上げる。


「待つんだ!」

「……でも」

「こういう時こそ、勇者たる私の出番!」


 ジェイルは愛音達を止めておきながら、ワーロックと共に自ら率先して穴に飛び込む。

 エルロンドは愛音と美紗の二人を脇に抱えると、ボルダン兄弟に言付けを残す。


「ボルダンさん、シャルダンさん、あの宝箱はおそらく五階への鍵です」

「エルロンドが追うのなら俺達も……」

「ゾラスさんの護衛も必要でしょう、それでは後は宜しく」


 エルロンドはそう言い残すと二人の少女を抱えて暗闇の中へと落ちていった。


―――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ