正義と悪のおはなし的な物語
これは予告編ではなくプロローグ。
この世界にはかつて正義の味方と悪の組織が存在していた。
正義と悪。二つの力は拮抗しておりこのまま戦いは続いていくかと思われた。
だがその力のバランスを崩す出来事が起こった。
第二次世界大戦である。
世界中を巻き込んだ戦争の前では正義の味方も悪の組織も関係がない。
各々が自分の国のために戦い倒れていった。
だが激しい戦果の中正義と悪の被害に徐々に差が生まれていく。
悪の組織の損害が膨大だったのに対して正義の味方の損害は比較的抑えられていた。
なぜ差が出たのか?
それにはヒーロー補正と呼ばれるものが関係していた。
ヒーロー補正……所謂絶体絶命のピンチになってもなんやかんやでなんとかなってしまうアレである。
正義の味方達はその補正のおかげで被害を抑えることができた。
だがそれを持たない悪の組織は次々とメンバーを失い大きな戦力減退となった。
戦争終結後、悪の組織は正義の味方に最後の戦いを挑んだ。
悪の組織の戦力は大きく減っていたが時間が経てば戦力を回復させるであろう正義の味方に対して勝利できる最後のチャンスだったのだ。
そしてそれ以上にこのまま屈するのは悪のプライドが許さなかったのである。
お互いの持てる力を出しあった総力戦の末、勝利したのは正義だった。
以後悪の組織は歴史から姿を消した。
正義の味方は悪が滅んだあとも存在し続けていた。
だが悪が滅び力の振るう場所を失った正義の味方は活躍の場を失い警察の特殊部隊として扱われたり客寄せパンダ扱いされるようになる。
だがこれはまだ良い方で酷い場合では組織自体が解体されることもあった。
もはや正義の味方は必要とされなくなりつつあった。
かつて正義の味方に憧れた少年がいた。
少年の祖父はかつて悪の組織と戦った正義の味方であり、また両親も正義の味方だった。
正義の味方に憧れる少年が両親の活躍を見たいと願うのは当然のことだったのだろう。
だが少年の両親はそんな少年に曖昧な笑みを返すことしかできなかった。
少年には知る由がなかったがその頃には既に悪の組織の残党すら現れなくなっており少年が望むような正義の味方の活躍の場などありはしなかったのだ。
結局少年の両親は不慮の事故で命を落とし、両親の活躍を見たいという少年の願いは叶えられることはなかった。
両親を失って数年、両親の代わりに育ててくれた祖父がこの世を去った。
その頃には少年にも正義の味方の現状は理解できるようになっていた。
もはや正義の味方の存在意義は失われ各国で組織の解体が進められている。
もう悪はいないのだ。これも当然の流れだと少年は理解していた。
だが納得はできなかった。
何故なら彼の心には未だ正義の味方に対する憧れが色褪せることなく残っていたからだ。
祖父の葬式を終えたあと少年は考える。何故正義の味方がここまで衰退したのかと。
答えは簡単だった。戦うべき悪がいないからだ。
―――それなら自分がなればいい。
悪がいないのなら自分が悪になればいい。
そう自分が悪の組織を創るのだ。
少年は憧れた正義の味方ではなく正義を輝かすための悪になることを決意した。
――――って感じの決意から早5年。
俺の創った悪の組織が世界を支配しそうなのだがどうすればよいだろうか?
・注意 この小説のジャンルはコメディです。