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カルボナーラ.

「はい、おいしくなかったらごめんね。きのう、時間あったから焼いてみたの」


時間?あるわけないよ。おかげで、今日提出のワークは答え丸写しだもの。まあ、それは言い訳にしかならないけど。


「わあ、ありがとう!紅茶のパウンドケーキ?すごいね、おいしそう」


「いただきまーす!」

「わっ、おいしい!」

「ほんとだ、由香こんなの大好き」

「原ちゃん、絶対センスあるよ」

「そうだね、将来ケーキ屋さんとかしてよ」

「ほんとだ、似合う、似合う」


「へへへ、そんなことないよ」



お世辞かもしれないと分かっていながらも、やっぱりこういう瞬間は嬉しい。ワークのことももうどうでもよくて、ちゃんと輪に入れている安心感でみたされる。時々ここにいていいのかわからなくなるけど、そういうくちゃくちゃした渦巻きがふっと消えてくれる。ここにあたしがいてもおかしくないんだよね、大丈夫よね。



「そういやさ、今度のサクラハイランドの話だけど、お母さんが東京駅まで乗せてってくれるってさ。ちょうどその日から私のお父さんが出張だから、お母さんがついでに送っていってくれるみたい。」

茉里が言う。

「ほんと?ありがとう」

由香とえっこちゃんが答える。



サクラハイランド。

今年の秋に愛知にオープンした、国内でも最大級の遊園地に、アウトレットパーク、温泉、キャンプ場、ハイキングコースなどが集められた、いくらでも遊べる理想の総合テーマパーク。

えっこちゃんたちが、ずっとそこへ行きたがってたのは知ってる。けど、本当に行くことになったなんて私は知らない。そして、多分、三人は私が知らないことも知らない。計画の中に私を誘うことなんて考えてもみなかったのだろう。あーあ。まあ、いいけど。



私はつとめて明るく言った。

「サクラハイランド、行くんだね。いいなあ。楽しんできてね。」


すると、茉里が、

「あっ、原ちゃんも一緒に行こうよ。」

と言ってきた。茉里は優しい。だけど、言ってしまったあとで、えっこちゃんと由香の方をちらちら見ている。茉里はランク3で、アルファベットでいうとCだからね、むやみに勝手に決められないんだ。もっとも、あたしはランク4だし、Dだけど。もしかしたら、4.8のDマイナスかもしれない。



二人は一瞬止まったが、由香は、

「そうだね、多い方が楽しいし、一緒に行こう。」

と、言ってくれた。由香はBに位置するだろう。だけど、BとCの間はほとんど差はなくて、由香のBは2.8くらい。



見事優勝に輝いたランク1のAの彼女、

「あっ、でも遠いけど大丈夫?それに茉里の家の車、お父さんを送るついでなら二人しか乗れないんじゃない?だったらさ、今回は三人で行って、また次に“いつめん”みんなで行こうよ。うーん、でも、それじゃさみしいから今度の日曜、四人でランチでも行かない?」

らしいです。なるほど、そうだよね、4.8のDマイナスは参加権なしか。


「うん、あたしも急に愛知っていうのは親も許してくれないだろうから、今回は三人で行ってきて。」

「ごめんね。」

茉里が謝る。しゅんとしてる。茉里、ありがとう。

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