手紙
掲載日:2026/10/23
『拝啓
この度は丁寧な果たし状をいただき、ありがとうございます。その首、叩き落とす所存です。
それはそれとして、お中元ありがとうございます。この借りはお歳暮にて返すと致しましょう。年賀状の遣り取りも楽しみですね。では明日、巌流島で。涅槃で待つ』
「なにしてるのよ、いったい」
「うん。AIにね、手紙っていうのを作成させてたのよ。興味本位でさ」
「手紙ぃ? このペーパーレスの時代に? もう25世紀なんだから不要でしょ、テキストデータしか送れない通信手段に意味なんか無いから」
女子二人が室内で話している。とても仲は良さそうで、一方が文面を覗き込んだ。
「いろいろ書かれてるけど、知らない単語ばかりねぇ。年賀状ってなに?」
「さぁ? AIが適当に単語を集めただけだから。それよりデートに行こ!」
二人は部屋を出て行った。過去の文化は失われていく。しかし恋人同士の距離は近くなり、かつて関係を阻んだものも消え去っていくのだった。




