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0 旅のはじまり


 「魔王が復活した」


 魔法学院が発表したその情報は、瞬く間に世界中に広まった。


 その情報が発表された日から一週間後には、大聖堂は勇者を発表した。

 勇者パーティのメンバーも発表され、大聖堂で出立のパレードが行われた。



 魔王に呪いを解いてもらい、すべての元凶を殺し、皆の仇を再び討つ。

 そのためには、勇者パーティより早く魔王城に到着し、魔王を殺さなければならない。


 魔王を倒す実力は、この一万年で十分につけたはずだ。

 好都合なことに、大聖堂は大陸最南端にあり、魔王城は大陸北にある山脈の頂上にある。

 今、私は交易都市クシスにいる。クシスは大陸中央よりやや南にある。大聖堂よりは魔王城に近い。


 ここから急いで魔王城に向かえば、勇者パーティより早く到着する。


 さらに好都合なことに、交易都市からは飛行船が出ている。

 城塞都市行きの飛行船に乗れば・・・。


 そう思っていたが、最悪の敵と会敵した。

 飛行船乗り場のベンチで座っていた時。


 「あっ」


 冒険者パーティと思われる五人組のうち、一人がこちらに気づいて声を漏らした。

 他の四人もこちらに視線をやり、驚いたように目を見張る。

 何か用があるのか。


「リフェアさんだよね?」


「・・・そうですが?」


「お願いしますっ!! 僕らのパーティに入ってくださいっ!!」


 うちの男性が、勢いよく土下座してきた。


「・・・どういうことですか」


 事態がうまく飲み込めない。


「すみません。私たちは勇者パーティでして。でコイツが勇者です」


 女性が土下座している勇者を指さして言った。


 勇者・・・!?

 最悪だ!

 しかもパーティに誘われるなんて。

 勇者に付き合っているほど暇ではない!

 急がなきゃいけないんだ!


「教皇様から、貴方をパーティに誘うようにと言われておりまして」


 聖職者の服を着た女性が言う。おそらく今代パーティの聖女なのだろう。


「すみませんが、ご主人様に仕事を任されておりまして・・・」


 メイド服を着ているし、断りきれるはず!


「イルヴ様には了承を得ています」


 あのお嬢様め、なんでこういう時だけ・・・!


「教皇様から教えていただいたので知っています。

 こう言えば伝わるでしょうか、『魔王の呪い』」


 教皇様はあの話を大聖堂で受け継いでいたのか・・・。


「魔王を殺したいのでしょう? 自分の手で。

 ならば、我々と利害は一致するはずです。

 お願いします、私たちのパーティに入ってください」


 利害は一致している・・・が、私は一刻も早く魔王を殺したい。

 勇者パーティとあれば、寄り道して魔物を討伐するのは避けられない。

 そんなことをチンタラ待っている暇はない。


「すみませんが、おこt」


「一週間だけでも、お試しでできませんでしょうか」


 聖女が跪いて上目遣いでこちらを見つめている。


「もうしわk」


「お願いします!」


 リフェアは断ろうとした!

 聖女に効果はないようだ・・・


「いやちょっ」


「お願いしますっ!!」


 リフェアは断ろうとした!

 聖女に効果はないようだ・・・


「わかりましたよ・・・」


 はぁ、とため息をつき、答える。


「じゃあ軽く自己紹介を。

 リフェアです。鎌を使ってます。闇属性なので、呪いとかも使えます」


「じゃあ俺だなっ!」


 ずっと土下座してた勇者が顔()()上げて話し始める。


「俺はカヒト! 勇者だ!」

「ニレイと申します。聖女を務めさせていただいております」

「儂はクォーネ。魔法使いだ。先に言っておくが、ドワーフではなくエルフだからなっ!」

「エレカです。弓を使ってます。よろしくお願いしますね~」

「カンテハです。魔法使いです」


 ちょうどいいタイミングでブオーッ、という汽笛が鳴る。飛行船到着の合図だ。


「ちょうどいいなっ、皆の者、乗るぞー!」


 クォーネが先導する。

 一番後ろから飛行船に乗り込み、ふとあることに気づいた。


 誰も荷物袋を持っていない。

 最近の勇者パーティは荷物袋などいらないのか。魔法技術も進歩したものだな。


「みなさんバッグ持ってないんですね。どなたかの魔術ですか?」


 とそっけなく尋ねる。


「ああ、それはクォーネが・・・」


 と聖女が言いかけ、途中で止めた。


「え、どうしたんですか?」


「「「「クォーネ???」」」」


 四人が同時にクォーネのほうを見る。

 その顔は見えないが、おそらく引きつった笑顔なのだろう。


「どうやら忘れてしまったようじゃなー。まあこういうこともあるじゃろ、許しておくれよ。な?」


 クォーネは両手の人差し指をつんつんしている。


 どうやら、荷物持ち係はクォーネだったが、荷物を忘れたようだ。


「・・・あの鞄に私たちのお金全部入れてましたよね? この飛行船の料金、どうするんですか?」


 エレカがつぶやく。


「あぁー、そう、かもしれないなぁ?」


 クォーネが棒読みで答える。


「路銀ないじゃんっ!! どうすんの!?」


「あの~、リフェア殿~?

 ちょ~っとお金を貸してくれないか~?」


(ちょっと、リフェアさんに迷惑かけんのはやめなさいよ)


 カンテハがクォーネに耳打ちしている。


「仕方ないじゃろっ! 儂の全財産もあの鞄に入っていたんじゃ!

 もうリフェア殿に借りるしかないんじゃ!

 お願いだ! リフェア殿! 儂に金を貸してくれっ!!」


 クォーネが、先程のニレイのように跪いて上目遣いをしてくる。

 ニレイとは比にならないほど威力が弱い。


 はぁ~~、とわざとらしく深いため息をする。


「仕方ないですね、払ってあげますよ。

 お金返してくださいよ。あとタバコ買ってください」


「ありがとうなのじゃ~っ!!!」


 クォーネが笑顔を浮かべてジャンプする。


「すみませんね、クォーネが・・・」


「大丈夫ですよ、この程度」


 一日で土下座と上目遣いを合計三回もやられたのは今日が初めてだ。

 それより、次の停船所までタバコ持つかな・・・。

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