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 現代を生きる人々にとっては、計り知れないほど昔の話。

 今でいう、「神話」の時代の話だ。


 世界は争いで満たされていた。

 人族と魔族との、五千年に及ぶ永き戦い。


 魔族は現代と変わらず、人を喰う。

 唯一、現代と違うのは「魔王の存在」だ。


 魔王とは、あらゆる魔族が恐れおののき、尊敬し、服従する「力の象徴」だ。

 当然、魔族の中で最強の実力を誇っていた。

 人類がいくら強くなろうとも同じ土俵に立つことすら許されない、桁違いの強さだった。


 その強さの矛先は、人類に向けられた。


 魔王は人類との対話と和解を拒み、女子供関係なく問答無用で殺した。


 人類はもちろん、魔族に立ち向かおうとした。

 が、人類は魔族よりはるかに貧弱だった。


 弱い人類は、なす術なく同胞が喰われていくのを眺めることなど耐えられなかった。


 人類は禁忌に手を出した。



 人類は勇者と呼ばれる人間を選出し、強い人間四人を勇者とともに冒険に旅立たせた。

 勇者たちが死ぬたびに次の勇者が選ばれ、魔王城へ向かっていった。


 第8870代勇者パーティの全滅が大聖堂に伝えられ、第8871代勇者パーティが選出された。


 勇者ローレ。魔法使いレーカ。聖女ネア。斧使いルジ。そして私、鎌使いリフェア。


 珍しく聖女が加入した勇者パーティだったためか、魔王討伐への期待はとても大きかった。


 そして、私たちは見事その期待に応えてみせた。


 数日間に及ぶ攻防戦を切り抜け、勇者ローレは魔王にトドメを刺した。

 全員腕や足やら何らかの部位を失っていたし、土手っ腹をぶち抜かれた奴もいた。


 それでも、魔王討伐に成功した。

 五千年に及ぶ永い戦いに終止符を打ったのだ。


 そう安心していたその時、魔王は突然右手を掲げた。


 「道連れだ」

 その一言を遺して。


 右手からどす黒い魔力が放たれ、油断しきっていたみんなはその魔力をもろに受けた。


 左手(右手や足の奴もいた)から黒い魔力が身体に入り込み、じりじりと私たちの体を侵食し始めた。

 継続的な激痛に、みんなは悲鳴を上げていた。


 だが、私は闇属性だったから、自動的に呪いを無効化する能力を持っていた。

 そのため、呪いを受けても全く痛くなかった。


 一応覚えていた治癒魔法で軽くみんなを処置したが、一向に効く様子がなかった。

 魔族がいるかもしれないということで、早く魔王城を出発した。


 被害がない私がすべての荷物を持ち、激痛に悶える四人を連れて人里へ急いだ。


 魔王城に最も近い村に到着し、軽く休息を取ってから再び出発した。

 次に、大きな城塞都市を目指した。貴族がいる都市へ行けば、広くて速い馬車があるからだ。


 だらだらと汗をかき、虚ろに両目を開き、息が上がっている四人を引きずるように誘導し、やっと城塞都市に到着した。

 魔王討伐から十日ほどが経過していた。


 そこから速い馬車を出してもらい、急いで大聖堂を目指した。

 教皇様ならこの呪いを解除できると信じて、青白い顔をしたみんなを励ましながら馬車に乗り続けた。


 馬車に揺られ続ける日々を一ヶ月ほど過ごし、大聖堂が見えてきた頃。

 できるだけ起きていようと何日か徹夜していたが、限界を迎えて寝落ちしていた。


 寝落ちから目を覚まし、窓から差し込む薄い日光を浴びた時には、既にみんなは冷たくなっていた。


 全身にどす黒い魔力が回りきり、その姿は目も当てられないほどだった。


 大聖堂に到着するまでの残りの数時間が、数億年に感じられるほど地獄だった。


 私は薄情なのか、涙は微塵も出なかった。




 大聖堂に到着し、馬車から降りようとしたとき、馬車の周りには人々が集まっていた。

 歓声を上げ、五千年の悲願であった魔王討伐を果たした勇者たちを称えていた。


 しかし、勇者パーティのうち四人が原型を留めない姿で登場すると、その声は私への罵声へ変わった。


 民衆の目には、闇属性の私が勇者たちを殺したように映ったのだろう。


 しかし、教皇様だけは私の話を聞いてくれた。褒めてくれた。

 よく魔王を討伐したと。よく耐えたと。


 だが、私のメンタルは耐えられなかった。

 五年の旅路を共に過ごした親友たちの死、民衆からのエスカレートする誹謗中傷や嫌がらせ。


 魔王は倒したんだし、いいや。


 そう思って、鎌で自分の心臓を突き刺し、鎌を引き抜いた。

 ずるりと嫌な音がした。

 血飛沫が空を切る音を聞き、どくどくと溢れ出る血を見た。


 数時間経っても、血は溢れ出るだけだった。

 私はずっと生きているし、さらに傷口が徐々に塞がっているようにも見えた。

 突き刺した時の痛みはとてもひどいものだったが、痛みを感じたのはその一瞬だけだった。


 どうやら、魔王の呪いは「呪い以外で死ねなくなる」という効果もあるようだ。

 呪いを受けた者が苦しみながら死んでいくための効果なのだろう。





 そこから、私の終わりなき旅は始まった。


 金稼ぎのために仕事を探していたら、大貴族のお嬢様に使われるようになったり、海の魔物に海底に三日三晩沈められたり、大砲に入れられて空にぶっ飛ばされたりした。


 あまり好きではないタバコを吸い続けた。大嫌いな酒も飲んだ。違法のクスリもたくさん飲んだ。自殺の名所もたくさん訪れた。たくさんの死因を試した。


 でも、死ねない。


 はやく皆と会いたい。


 諦めかけていたその日に、衝撃の知らせが大聖堂に届く。


 「魔王が復活した」。


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