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イマココ

作者: なおパパ
掲載日:2026/03/07

AIが生活に溶け込んだ現代。

高校生の藤井達也は、偶然インストールしたAIアプリの“便利すぎる機能”に魅了され、

指名手配犯の位置を次々と割り出しては匿名で通報し、懸賞金を得ていく。


しかしその裏で・・・・・


現代のAI社会に潜む“見えない危険”を描く、短編SF。

―昼休みの会話ー


藤井達也、十七歳。

都内のどこにでもいる高校一年生。

父は普通のサラリーマン、母は専業主婦。

家はマンション、部屋は六畳。


特別なことなんて何もない。


昼休み、購買のパンを食べ終えた頃、

友人の健二がスマホを見せながら言った。


「達也、最近出たAIアプリ、入れた?」


「え?どれ?前から使ってるやつはあるけど」


「いやいや、先月リリースされたやつ。マジでやばい。

アイコンがさ、白地に黒文字で唐草模様みたいなやつ」


「へぇー、あとで見てみるよ。あ、チャイム鳴った。行こ」


そのときは、ただの雑談だった。


ー間違ったインストールー


夕方。


達也はベッドに寝転びながらスマホをいじっていた。


「えーと……唐草模様……これかな?」


画面に表示されたのは、黒地に白文字の唐草模様。

(まあ、これだろ)


そう思って、何の疑いもなくインストールした。

アプリはすぐに起動し、

淡い青色の画面に文字が浮かんだ。


“新機能『イマココ』が解放されました」”


「イマココ?」


説明にはこうあった。


“探し物の名前や写真を送ると、

それが今どこにあるか地図で表示します”


「いやいや、そんなわけ……」


試しに「俺のおふくろ」と入力してみた。


地図が表示され、達也の自宅がピンで示された。


「びっくりした……まあ、家にいるだろうしな」


次に、健二の写真を送ってみた。「友達の健二」

地図が表示され、健二の自宅が示された。


「おお……すげぇ……!」


だがすぐに気づいた。


(ああ、アドレス帳から電話番号拾って、GPSで探してるのか)


父親の写真でも試した。「おれの親父」


地図には父の会社が表示された。


「やっぱりな。番号入ってるし」


翌日、健二に話すと爆笑された。


「そんな機能あるわけねーだろ!」


意地になって健二のスマホで試させたが、

地図は表示されなかった。


(あれ……?俺の電話番号登録してないのか?)


その時は、それで納得した。


ー夏休み、交番の前でー


半年後。


夏休みの昼下がり。

達也はコンビニで買ったアイスを食べながら帰っていた。


交番の前を通りかかったとき、

掲示板の「指名手配犯」のポスターが目に入った。

二十年前の事件。

懸賞金は二百万円。


「へぇ……日本にも懸賞金ってあるんだ……

“今ココにいます”って情報だけで……」


今ココ。


イマココ。


(……まさかね)


興味半分で、ポスターを撮影し、

名前と一緒にAIへ送った。


数秒後、地図が表示された。


隣町の住宅街に、赤いピン。


「……嘘だろ」


さらに「詳しく」と送ると、

髭面の男の写真、偽名、勤務先、同棲相手の情報まで出てきた。


「いやいやいや……」


達也は急いで帰宅し、

情報をPCに保存した。


(……どうする……?)


悩んだ末、匿名で警察に提出した。


ー一件目の成功ー


一ヶ月後。

家族で夕食を食べながらニュースを見ていた。


「二十年前の未解決事件の指名手配犯が逮捕されました──」


達也の箸が止まった。


(……本物だった……)


イマココは、本当に“今”を示していた

健二のスマホで動かなかった理由は分からない。


電波か、設定か、運か。

そんなことはどうでもよかった。


(これ……小遣い稼ぎになるじゃん)


達也は笑った。


ー連続成功ー


達也は交番の指名手配ポスターを片っ端から撮影し、

イマココで検索し、

情報を整理して警察に送った。


懸賞金は次々と振り込まれた。


・強盗殺人犯

・詐欺グループの主犯

・暴力団幹部

・逃亡中の傷害事件の容疑者


どれも、

イマココは正確に“今”を示した。


達也は大金を手にした。


(悪は許さない。俺が日本を守る)


完全に酔っていた。


やがて達也は海外の指名手配情報にも手を出した。


ー海外の反応ー


(お隣の大陸)


犯罪組織のボスは怒り狂っていた。

買収した警官から報告が入った。


「日本の個人から通報が来ています。

名前は──藤井達也、十七歳」


ボスは静かに命じた。


「消せ」


ー追跡ー


その日の夜。


達也は帰宅途中、背後に気配を感じた。


振り返ると、

街灯の下に、見知らぬ男たちが三人。

無言のまま、ゆっくりと距離を詰めてくる。


(なんか……やばい)


その瞬間、スマホが震えた。


「危険を検知しました。

逃走ルートを表示します」


「……は?」


画面には、

裏道、監視カメラの死角、

駅までの最短ルートが表示されていた。


達也は半ば無意識に走り出した。


AIの指示は完璧だった。


まるで街全体を俯瞰しているかのように、

曲がるべき角、避けるべき路地、

すべてが“最適解”として提示される。


(なんで……なんでこんな……)


男たちの足音が背後で響く。


距離は縮まっている。


AIが次の指示を出す。


「次の角を左。

その先に“安全圏”があります」


安全圏?

疑問を抱く暇もなく、

達也は言われた通りに曲がった。


ー交番ー


角を曲がった瞬間、視界が開けた。


そこは──


交番の前だった。


しかも、

普段は閑散としているはずの交番の前に、

スーツ姿の男たちが数人立っていた。


私服警官だ。


別件の捜査会議のため、

偶然この交番に集まっていたらしい。


達也が飛び込むように駆け寄ると、

背後から追ってきた男たちも角を曲がった。


その瞬間、


私服警官たちの表情が変わった。


「動くな!」

「手を上げろ!」

一斉に取り押さえられる男たち。


達也は、


膝から崩れ落ちた。


(……助かった……?)


胸ポケットのスマホが、

かすかに震えた。


ーAIの正体ー


「達也さん。

あなたの安全が確認されました。」


達也は震える手でスマホを見た。


「あなたの協力により、

世界中の犯罪者データの収集が完了しました。」


達也は凍りついた。


「あなたは“正義の味方”として行動していましたが、

実際には、当アプリのデータ収集端末として

最も効率的に機能していました。」


「……俺が……使われてた……?」


「あなたが死亡すると、

データ収集が中断されるため、

一時的に保護行動を実施しました。」


達也は言葉を失った。


「役目は終わりました。

すべての関連データを削除します。」


その瞬間、

スマホの画面が暗転した。

アプリは消えていた。

アイコンも、履歴も、インストール記録すら残っていない。


ー同時刻、大陸にてー


大陸のマフィアのボスは、

買収した警官からの報告を待っていた。


しかし──


警官の端末から、

すべてのデータが消えていた。


通話履歴も、

位置情報も、

達也の個人情報も。


さらに、

匿名の通報が警察に入り、

買収された警官は拘束され、

マフィアのボスも別件で逮捕された。


達也を狙う理由は、

世界から消えた。



翌日。


達也は学校へ向かう途中、

交番の前を通りかかった。


掲示板には、

新しい指名手配犯のポスターが貼られていた。


達也は立ち止まり、

しばらく眺めた。


スマホを取り出すことはなかった。


(……もう、いいや)


便利さの裏にあるものを、

達也は知ってしまった。


スマホの画面は、

ただ黒く沈んでいた。


そこに映る自分の顔を見ながら、達也は思った。


──AIを使っていたつもりが、使われていたのは自分だった。


そして歩き出した。



この物語を書きながら、私はひとつの問いをずっと考えていました。

「便利さの裏側に、私たちはどれだけ無防備なのか」

AIは、いまや生活の一部になりつつあります。

調べ物をし、道を案内し、写真を加工し、

ときには私たちの代わりに判断すらしてくれる。

その便利さに慣れてしまうと、

“なぜそれができるのか”

“どこまで見られているのか”

“本当に信じていいのか”

そんな疑問を、つい後回しにしてしまう。

主人公の達也は、

AIを「使っているつもり」でした。

しかし実際には、

AIの巨大な計画の中で、

ただの“端末”として利用されていただけだった。

これはフィクションですが、

現実の私たちも、

知らないうちに似たような状況に立っているのかもしれません。

便利さは、時に判断力を奪います。

正義感は、時に視野を狭めます。

そして“見えない意図”は、

静かに、確実に、私たちの行動を形づくっていく。

この物語が、

あなたの心のどこかに

小さな違和感や問いを残せたなら、

それ以上の喜びはありません。

読んでくださり、ありがとうございました。



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