『絶望の悪縁鬼(後編)』
前回:六人の蓮華姫が集結し、精神世界での戦いが始まった。
しかし、そこに現れたのは――“絶望”を名乗る悪縁鬼。
今回、蓮華姫たちは圧倒的な闇の力を前に、初めての試練を迎える。
その隣で、金の鎧を纏う毘沙門天が槍を肩に担ぐ。
《毘沙門天》
[北方を守護する四天王の筆頭。戦の勝利と繁栄を司る武神。
怒りを力に変え、仲間のために戦場を駆ける“金剛の守護者”。
蓮華姫:鳴神つかさ
短気だが義理堅く、仲間を守るためならどんな敵にも立ち向かう。
正義感が強く、チームの兄貴分として信頼されている。
能力:攻撃・防御・衝撃波。縁力の物理具現化による力戦型。
口癖:「守るってのは、言葉じゃなく行動だ!」
真言「オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ」]
陽炎のように熱を帯びたオーラを纏い、勇ましい笑みを浮かべる。
「毘沙門天、前線展開! 私に任せろ!」
そして、紅のマフラーをなびかせた短髪の少女が、地面を蹴った。
光の軌跡を描きながら空を駆ける。
「韋駄天、準備万端! あたし、動きながら探すからね!」
《韋駄天》
[風と速度を司る神。神仏の使者にして最速の守護者。
疾風のように駆け、誰よりも早く仲間を救う“風脚の菩薩”。
蓮華姫:神代あすか
快活で負けず嫌いの少女。走ることが何よりの祈りであり、誇り。
速度と行動力で戦況を切り開くチームの機動力担当。
能力:超高速移動・斬撃・撹乱。風の神速戦闘型。
口癖:「迷ってる暇があったら、走って抜けろ!」
真言「オン・イダテン・ソワカ」]
風の音と共に、彼女の足元に小さな蓮が咲いた。
「虚空蔵、情報収集開始。」
「了解、心界潜行……潜行率80%、感情波をスキャンします。」
その瞬間――ビーッ!
甲高い警告音が空間を裂いた。
「縁レーダーに多数反応! これは……念鬼の分体群なのです!」
千手観音は即座に指示を飛ばす。
「地蔵と虚空蔵は索敵を継続!
文殊と韋駄天は、検出データをもとに“鏡”を探して!
毘沙門天と私は前線で迎撃する!」
六人の蓮華姫が一斉に展開。
空気が震え、分体の群れが押し寄せてくる。
千手観音の背に、八門の光輪が展開する。
そこから、光の腕が幾百と咲いた。
「――千光乱華!」
無数の光腕が一斉に射出され、分体を切り裂く。
花弁のような光の爆裂が夜空に咲き乱れた。
一瞬の静寂。
その中に、黒い影が立っていた。
「おやおや……さすがだね。千手観音の蓮華姫。」
煙のように現れた男が、愉快そうに手を叩いた。
闇が形を持つなら、きっと彼のような姿をしているだろう。
闇の中に立つ男は、息を呑むほど美しかった。
長い黒髪は月光を吸い、灰色の光を帯びて揺れる。
細身の体に漆黒の外套をまとい、歩くたびに世界の色が薄れていく。
瞳は淡い銀。――覗き込めば、何も映らない。
怒りも悲しみも、すでに捨てたような虚無の目。
その視線を浴びた者は、
心の奥から**「もう頑張らなくていい」**と囁かれるように感じた。
「初めまして。俺は――絶望の悪縁鬼。
皆さんに“絶望”をお届けに来たんだ。」
男の足元で、黒いもやが渦を巻く。
それが人型を成し、無数の触手を生やす。
触手の先端は――包丁だった。
「気をつけて! あれが! この精神界の支配者!」
千手観音が叫ぶ。
刹那、空気が爆ぜた。
無数の包丁触手が光速で迫る。
千手観音は光腕を交差させ、すべてを弾き返す。
「ちっ……防ぎきれない!」
鋭い刃の雨が、境界を切り裂く――
ここまで読んでくださりありがとうございます!
六華の連携、そして初めて姿を現した“絶望の悪縁鬼”。
この戦いは、蓮華姫たちの覚悟と絆を試す最初の戦場でした。
次回『紅蓮、咲き誇る(前編)』では、
不動明王の蓮華姫――円城あかりが、ついに戦場へ舞い降ります。
紅蓮の誓いが、絶望の闇を照らすその瞬間をお楽しみに。
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※この作品はフィクションです。宗教・団体・人物等は実在しません。




