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不生不滅の蓮華姫〜神仏から力を借りて斬って見せます悪縁を!自らの未来を代償に可憐な少女があなたの心のスキマで戦います!  作者: 慈孝
千手観音覚醒編

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『虚空竜宮寺への転移 ― 縁を司る寺』

炎が裂け、心の底で鐘が鳴り──

梨花を導いたのは、現実でも空想でもない “縁の中間世界”。

ここが虚空竜宮寺。

縁を結び、そして断つ者が集う場所です。

空は水の底のようで、幻想的なその寺は、現実のものとは

思えなかった。


「来たか。結城梨花。」


青年がひとり。髪を緩く後ろで止めた、顔立ちの整った人。


「なぜ私の名前を?あの弟が…」


「大丈夫だ。共に来るといい。」


青年は、遼を背負うと、本堂の場所を指し示した。


「彼の指先の先――白い砂の庭を渡る風の向こうに、本堂が見えた。」


本堂の扉を開けると、熱気が頬を撫でた。

炎に照らされた空間の奥――金色の大日如来像が鎮座していた。

その前に、ひとりの僧侶が座している。


「よく来たな、結城梨花。」


その声は、炎の音の中でも不思議とはっきりと聞こえた。


「わしは虚空竜宮寺の住職、慈孝だ。」


先ほどの青年が遼を背負い、そっと床に寝かせる。


「弟が……あの、火事で――」


「案ずるな。」慈孝は穏やかに微笑んだ。

「弟はまだ生きておる。しかし、このままでは危うい。」


僧の瞳が、ゆらめく炎を映す。


「この子は“悪縁鬼”に取り憑かれおるのだ。」


「悪縁鬼……?」


「左様。縁を歪め、人を最悪の未来へと導く存在。

 おぬしの弟も、その糸に絡め取られておる。」


梨花は息を呑んだ。


「どうすれば……どうすれば、助けられるんですか?」


「おぬしが、この子の“精神世界”へ赴き、悪縁鬼の作る念鬼を討ち、

 縁を断ち切るのだ。」


「そんな……私に鬼を倒すなんてできません!」


「断るならば――おぬしは“死ぬ”。」


「えっ……! 殺すっていうんですか!?」


「違う。」慈孝は炎を見据えたまま、静かに言う。

「見るがよい。」


炎の中に映像が浮かぶ。

瓦礫に押し潰された校舎。

梨花と遼が、炎の中で抱き合いながら動かない。

炎に呑まれた生徒たちの影。


「……これが、今のままの“現実の未来”だ。」


梨花の目が見開かれる。

喉の奥が焼けるように熱かった。


「この未来を救えるのは――おぬしだけだ。」


「……私、ということですね。」


慈孝は深く頷いた。


「だが、独りではない。

 おぬしには“強い仏縁”がある。

 神仏が必ずや、その手を取ってくださる。」


梨花は拳を握りしめた。

恐怖はある。けれど――

弟を、そして多くの命を救えるなら、迷う理由はなかった。


「……私、行きます。」


誰かに命じられたからじゃない。私が選ぶ。

弟と、見知らぬ誰かの明日を。



慈孝は静かに頷き、印を結んだ。


「では座すがよい。心を鎮め、己の内なる神仏に会うのだ。」


梨花は正座し、瞼を閉じた。

胸の奥に、ひとつの願いだけを刻む。


(弟も……あの子たちも……必ず、助ける。)


――静寂。


やがて、世界が暗転する。

光の中に、巨大な存在が浮かび上がった。

無数の腕、無限の眼、慈悲を湛えた顔。


「……まさか、これが……神仏……。」


その声が、心の内に響く。


千手観音せんじゅかんのん

(すべての衆生を漏らさず救うために、無数の手と眼を持つ大慈悲の観音。

 千の手は「届かぬ場所に届く救いの腕」、

 千の眼は「見落とさない智慧のまなざし」。

 苦しみ・迷い・孤独の声を同時に聞き取り、

 それぞれに最適な救済を与える救護特化の菩薩。

 観音菩薩が姿を変えた形であり、あらゆる世界に同時に手を伸ばす、

 慈悲の権化とされる。)


『私は千手観音。あらゆる目で見て、あらゆる手で救う者。

 おぬしは――人を救う力を欲しておるのか?』


「はい。弟を……そして、子供たちを……みんなを助けたいんです。」


『我が力を使えば、おぬしの“縁”は消えゆく。

 それでもなお、救いを選ぶか?』


梨花は深く息を吸い、目を開けた。

恐怖はもうなかった。


「はい。たとえ私が消えても――

 この命で、みんなを救ってみせます。」


『……よい覚悟だ。』


その瞬間、千の腕が広がり、光が奔る。

『ならば授けよう――我が慈悲の手を。

 行け、千手観音の蓮華姫よ。

 縁を結び、悪縁を断て。』


眩い光が梨花を包み、世界が反転する。

次の瞬間、本堂の炎の中に戻っていた。


彼女の額には、金色の梵字〈キリーク〉が輝いていた。

慈孝は目を細め、静かに言葉をかける。


「……その印こそ、千手観音の証。

 おぬしは今より、“千手観音の蓮華姫”だ。」


梨花は深く息を吸い、弟の寝顔を見つめた。

そして――静かに立ち上がった


「行きます。弟と、みんなを救うために。」


「では、精神世界でやらねばならぬ事を説明しよう。

 念の鬼を絶て。

 念鬼は“鏡”で再生する。

 鏡を見つけ、同時に断つ――それが作戦だ」


「わかりました。」


炎に揺らめく、精神世界に飛び込む。

光が弾けた。

梨花は初めて“縁の真実”に触れました。

ここから、彼女はもう後戻りできません。

次回はいよいよ──観音との邂逅です。

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