『鏡を撃ち抜く光(後編)』
前回:虚空蔵が辿り着いた“恋慕の糸”。
優子の心を覆う悪縁の正体が明らかとなり、
文殊・韋駄天・毘沙門天が出撃。
だが、念鬼は再生を繰り返し、鏡は未だ砕けぬまま――。
今回、ついに六華の祈りがひとつになる。
炎と雷、そして智慧の光が交わるとき、
悪縁の鏡が砕け散る!
毘沙門天が金槍を放つ。
「マーカー、打ち込んだ! 文殊、頼む!」
千手観音が叫ぶ。
「――不動! 準備、できてるわね!」
「了解っ!」
あかりの炎が一瞬で燃え上がる。
「くりゅう!行くよ!」
「任せろ、あかり!」
「さあ――さよならだね、悪縁。
優子さんを返してもらう!」
急速に雷雲が空を覆い、周囲が暗くなる。
龍王が天に吼える時、あかりの大剣に落雷が落ち、
雷の莫大なエネルギーが宿る。
「炎王雷鳴斬ーー!」
紅蓮の大剣が唸りを上げ、炎と雷の奔流が一直線に放たれる。
「出力上昇……!? 前回より倍のエネルギー値なのですっ!」
灼熱の刃が地を抉り、雷撃が夜空を裂いた。
衝撃波が精神世界を震わせ、炎の風が駆け抜ける。
包丁の念鬼巨体は、閃光と共に一瞬で塵と化した。
ピシャーッ!ゴロゴロ!
全てが終わった後に雷鳴が轟く。
炎の波が黒の闇を飲み込み、悪縁の気配がかき消える。
「今よ、文殊!!」
千手観音の声が響く。
「了解――。」
文殊菩薩の瞳が、淡く光を帯びた。
「智機蓮杖、起動。」
銃身に曼荼羅模様が浮かび、光輪が背後で回転する。
照準の中心に、淡く輝く鏡像。
彼女は目を閉じ、祈るように唱えた。
「オン・アラハシャ・ノウ……」
真言の響きが世界を震わせた。
銃身の曼荼羅が共鳴し、
放射状に広がる光が一点へと収束していく。
「――般若一閃・縁断光華。」
花が咲いた。
銃口の蓮弁が開き、金色の梵字弾が放たれる。
光弾は螺旋を描き、世界そのものを貫いた。
――カーン……。
鐘の音のような金属の響き。
次の瞬間、鏡が粉々に砕け散った。
黒煙がほどけ、夜が静まる。
念鬼の残滓が光に還り、風が穏やかに吹き抜けた。
千手観音が微笑んで宣言する。
「――ミッション・コンプリート。
みんな、本当にありがとう。」
文殊が銃を下ろし、静かに合掌した。
「無明、ひとつ浄化完了。」
あかりは剣を納め、深く頭を下げる。
「皆さん……私のために。
ありがとうございました。」
そのとき、鐘の音が鳴り響く。
――ゴーン。ーーゴーン。
虚空竜宮寺の鐘だ。
それは、精神世界が閉じて行く知らせ。
青年が突き鳴らしていた。
「…蓮華姫達よ…現世に帰れ。
…円城あかり…。帰って来い。」
青年は、少しだけ微笑んでいた。
光が辺りを包み、世界がゆっくりと溶けていく。
地蔵が小さく手を振る。
「またなのです。あかりお姉ちゃん。」
「……うん。また必ず。」
精神世界の端から光が流れ込み、
優子の心の裂け目が静かに閉じていった。
蓮華姫たちの姿は、まるで白蓮が散るように――
静かに、光の海へと還っていく。
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次回予告
次回『縁、失われしプリン』
時は再び動き出す。――大好きなプリンとの縁とは。
“未来の鏡”をめぐる戦い、ついに決着。
文殊の『般若一閃・縁断光華』が放たれた瞬間、
全ての悪縁が光に還り、優子の心は救われました。
そして、静かに鳴り響く虚空竜宮寺の鐘――
それは、六人の蓮華姫たちが“人の未来”を取り戻した証でした。
次回『縁、失われしプリン(前編)』では、
あかりが現実へと帰還し、“縁を失う”という代償の意味を知ります。
笑いと癒やしの“日常編”をお楽しみに!
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※この作品はフィクションです。実在の宗教・団体・人物等とは関係ありません。




