『鏡を撃ち抜く光(前編)』
前回:絶望の悪縁鬼を退けた蓮華姫たち。
だが、念鬼を永遠に消すには――“未来の鏡”を撃ち抜かねばならない。
今回、虚空蔵が少女・優子の心に潜行し、
恋慕と嫉妬、そして“悪縁”の起点を探る。
心の闇に潜む“誤解”と“すれ違い”。
その真実に、蓮華姫たちは辿り着くことができるのか――。
ーー中学校の風景。
優子の心に虚空蔵が触れる。
(裕介とは、中学校で同じクラス。明るい彼は、引っ込み思案の
私にも、良く話しかけてくれたっけ。
あの頃は気が付かなかったけど。初恋だったのかな?)
ーー高校2年の登校時。
親友のゆかりと一緒に歩いている。
そこに裕介が、通り掛かる。
「あれ。優子じゃん!久しぶり!聞いてくれよ。
俺、今度の大会で、レギュラーになったんだぜ!」
(嬉しかった。私の事、覚えていてくれたんだ!
ゆかりには、仲の良い友達なんだって、言っちゃった。)
それから、部室の窓から、校庭で躍動する彼を
眺めるようになった。
(彼の…裕介君の笑顔が頭から離れない。
もう、思い切って告白してしまおう!
ゆかりならきっと、くよくよしないはず。
見習わなくちゃ。)
ーーサッカー部室。
(裕介君は遅くまで残って練習してるから、今なら
ひとりで部室に居るはず)
そこで優子が目にしたのは、楽しそうに語り合う
ゆかりと裕介。
優子は、声をかけられず、その場から逃げた。
(なんで?ゆかりと裕介君が?2人はそういう関係?
ダメだ。ゆかりも大切な親友だし、
そもそも、私じゃ彼女に敵わない。)
ーー文芸部室。
ひとり、放心状態の優子。
そこに絶望の悪縁鬼が入り込んだ。
(うん。2人を応援しよう。)
「それでいいのか?」
(だって仕方ない。)
「そうだな。お前には、ゆかりより優れた点は何も無い。」
(その通りだわ。)
「だが、ゆかりは酷いやつだ、お前と裕介の仲を知りながらな。」
(そうだ。私が裕介君を紹介したのに。)
「あるのは絶望だけだ。これからもお前は、
何も手にする事は出来ない。
あの女。ゆかりが居るからだ。」
(ゆかりがいるから…)
「そうだ。あいつがお前の絶望だ。
あいつを…ゆかりを消すしかない。」
(もう人生終わりなんだ。なら、ゆかりと一緒に…)
「そうだ。もうお前に明るい未来など無い。
もう一度言おう…。ゆかりはお前の絶望だ…。」
虚空蔵は、優子の悪縁を見た。
「…っ、悪縁鬼。酷いことを。」
「感情波追跡――優子さんは“文芸部”の活動記録が濃いわ!」
「照合開始。文芸部部室、三階南向き。
校庭が一望できる位置です。」
「ここから“サッカー部”を見ていた可能性大なのです!
念鬼の移動経路とも一致……鏡存在率、70%!」
千手観音は即座に指示を飛ばす。
「韋駄天、毘沙門天、目標は文芸部部室!
鏡を発見しだいマーカー設置!
文殊、マーカーに照準を合わせて撃ち抜いて!」
「了解!」
三人の声が重なり、光の翼が展開する。
韋駄天が先陣を切り、風を裂く。
「ビンゴ! 鏡発見! 念鬼分体が守ってる! 囮入りますっ!」
地蔵がナビを飛ばす。
「囮の逃避ルート、転送完了!
廊下突き当たりが広いです、韋駄天なら余裕なのです!」
「こっちだ!悪縁ー!」
念鬼の集団は、韋駄天を追い始める。
「助かった! その隙に――」
毘沙門天が金槍を放つ。
「マーカー、打ち込んだ! 文殊、頼む!」
つづく
→ 次回『鏡を撃ち抜く光(後編)』
お読みいただきありがとうございます!
今回は、“悪縁”の核心――優子・ゆかり・裕介の三角の縁が描かれました。
虚空蔵が見た恋慕の糸、そして“文芸部室にある鏡”の手がかり。
心の闇の正体が、ついに明らかになります。
次回『鏡を撃ち抜く光(後編)』では、
韋駄天・毘沙門・文殊の連携が炸裂。
“縁を断つ光弾”が、悪縁の未来を撃ち抜く――!
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※本作はフィクションです。実在の宗教・団体・人物とは関係ありません。




