『炎王覇焔斬(前編)』
前回:紅蓮の炎と共に、不動明王の蓮華姫・円城あかりが降臨。
絶望の悪縁鬼との戦場に現れたその姿は、まさに“希望の化身”だった。
今回――あかりの炎が初めて剣と化す。
仲間を守り、悪縁を断ち切るために放つ一撃。
それは、彼女の祈りそのものだった。
「――いっくよッ!
炎王覇焔斬!!
――炎の刃が、お前を焼き斬るッ!!」
紅蓮の光が地を裂いた。
空気が震え、熱が波のように押し寄せる。
くりゅうが大剣に巻き付く。
その瞬間、あかりの大剣が炎を纏い、
まるで龍が咆哮するように火柱が伸び上がった。
――ずばぁぁんッ!
炎の斬撃が一直線に地面を抉りながら飛翔し、
念鬼の触手をまとめて切り裂く。
包丁の刃が空中で溶け落ち、黒煙となって弾け飛ぶ。
炎の刃は念鬼の身体を斬り裂き、地の果てまで飛んで行く。
たった一撃で、あの巨躯の念鬼が膝をついた。
「な……なんです、これ、出力が桁違いなのです……!」
地蔵が目を丸くする。
虚空蔵は静かにデータを見つめた。
「計測不能。EN上限突破……?」
千手観音も思わず息をのむ。
「……まるで、神話の再現ね。」
だが、あかり本人は至ってマイペースだ。
「よしっ、もう一丁! 炎王覇――」
「まっ……ま、待ってぇえーーーっ!!」
千手観音が慌てて飛び込み、全力で抱きついた。
「だ、だめ! あれ以上撃っちゃ!」
「え? なんで? あとちょっとでトドメなのに!」
千手観音は、息を切らしながら必死に説明する。
「縁力を無駄にしないで、縁が消えるよ?聞いてない?
“未来の鏡”を壊さないと、念鬼は再生しちゃうの!」
「鏡?」
「そう! 悪縁鬼が作り出す“最悪の未来”が映る鏡。
それが壊れない限り、念鬼は何度でも蘇るの。
もし、念鬼が鏡に触れたら―
―未来が確定して、誰も救えなくなる!」
あかりは大剣を肩に担ぎ直し、真剣な表情でうなずいた。
「なるほど。じゃあ、その鏡を壊せばいいんだね。」
「鏡は念鬼本体が健在だと、割れないから、ほぼ同時に壊す必要が
あって、しかも …それが、まだどこにあるか分からないの。」
千手観音の声が沈む。
「だから今は、鏡が見つかるまでここで食い止めるのが―
―あなたと私の役目。」
あかりはにっこり笑った。
「了解です、千手さん! 怪我してるんでしょ?
ここは私に任せて!」
「え、でも――」
「ここから……一歩も通さない。不動明王の名にかけて!」
その瞬間、念鬼が咆哮した。
「グルァァァァァァ!!」
包丁触手が再び暴風のように襲いかかる。
だが、あかりは一歩も退かない。
⸻
つづく
→ 次回『炎王覇焔斬(後編)』
お読みいただきありがとうございます!
不動明王の蓮華姫・円城あかりの初戦、いかがでしたか?
紅蓮の大剣“炎王覇焔斬”が放たれる瞬間、
彼女の祈りと怒りが重なり、“人間としての強さ”が現れました。
次回『炎王覇焔斬(後編)』では、
真言が響き、“青き真火”が顕現。
あかりの魂が不動明王と同調する――シリーズ屈指の覚醒回です。
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※この作品はフィクションです。実在の宗教・人物・団体とは関係ありません。




