『紅蓮、咲き誇る(後編)』
前回:絶望の悪縁鬼に追い詰められた蓮華姫たち。
しかし、上空から紅蓮の光が降り注ぎ、戦場が揺らいだ。
今回――不動明王の蓮華姫・円城あかりがついに覚醒。
炎と誓いを纏い、彼女の紅蓮の刃が“絶望”を断つ!
――ビーッ!
縁レーダーが一斉に悲鳴を上げ、空気ごと震えた。
地蔵の声が小さく裏返る。
「こ、これは! 上空に――巨大な縁反応なのです!」
千手観音が念鬼の刃を弾きつつ、冷静に問う。
「敵なのか、味方なのか――」
誰の胸にも、巨大な味方が来るという心当たりはなかった。
だが、千手観音は小さく己に誓った。
ここで、絶望だけは決して咲かせない、と。
「目視可能地点に到達! あれは…蓮華の蕾だ。味方、来ます!」
それはもはや蕾ではなかった。
流星の如く紅蓮の炎を纏い、真っ直ぐに精神の大地へ落下してくる。
熱と線香、古い経文の匂いが空気を切り裂く。
「縁力測定! 縁カウンター作動! えっ……!?
エンゲージ 53万EN(※縁エネルギーの単位)!!
明王級反応なのです!!」
「嘘だろ……明王級が53万!? 通常は30万あれば大台だぞ!」
毘沙門天の声に、戦線の緊張がさらに引き締まる。
「間違いありません。現着まで、
カウントダウン――七、六、五、四、三、来ます!」
轟音。大地が裂け、土煙が竜のように舞い上がる。
――どごぉぉん!
地面が盛り上がり、蓮華の蕾が噴出するように開いた。
花弁が弧を描き、
中央にーー
一人の少女が膝を抱えて折り畳まれていた。
ゆっくりと、確かな動作で立ち上がる。
桜色の髪が風を受け、瞳は紅蓮の火を宿す。
左手の甲に梵字〈カーン〉が燃え、背中に小さな火焔が吹き上がる。
彼女の手が空を斬ると、黒い影が怯むように後退した。
その手に、大剣が顕現する。
刃は漆黒、縁取りに紅蓮の炎が踊る。
振りかぶるだけで、
周囲の空気が切り裂かれるようだった。
焼け焦げた匂いが、吹き荒れる。
絶望の悪縁鬼も、たじろぐ威圧感。
「なんなのだ?きさまは?」
少女は声を張り上げた。
声は怒りでも哀しみでもなく、
決意そのものだった。
「不動明王の嫁! 円城あかり!
斬って見せます!! 悪縁を!!!」
たまらず、くりゅうが飛び出す。
「ちょっとまてぃ! 誰が不動様の嫁だよ!」
「えっ? だって誓い合ったし……。」
「誓ったのは、あかりだけだろうが!
しかも、不動様への愛でもないし!」
「そうだった。不動明王の蓮華姫! 円城あかり!
悪縁を斬る!!」
その一閃が、絶望の夜を裂いた――
⸻
次回予告
次回『炎王覇焔斬』
紅蓮の刃が闇を裂き、悪縁鬼との最初の決戦が始まる――。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
不動明王の蓮華姫、円城あかり――その初陣が描かれました。
「不動明王の嫁!」というあかりらしい台詞に笑いながらも、
その紅蓮の誓いは確かに“縁を断つ者”の覚悟でした。
次回『炎王覇焔斬(前編)』では、
不動明王の力を宿した“紅蓮の奥義”が初めて発動。
悪縁鬼との本格的な決戦が幕を開けます。
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※この作品はフィクションです。宗教・団体・人物等は実在しません。




