表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/76

【8】女盗賊



驚く彼女を安心させようと、まずは自己紹介をする。


「私はアリーシャだよ」

「……アリーシャ?何故こんなところに……」


「ま、順番に話をしようや。あとアンタの武器は寝てる間に預からせてもらってる。こっちは子連れなんでな。俺はジェームス」

ジェームスの姿に彼女は腰元を確認する。


「別に変なところは触ってねぇぞ。こっちには金属探知機がいるからな」

「いや、探知魔法だよ、俺はラシャ」

ジェームスの言葉にラシャが苦笑しつつ名乗る。

「……ろ……ろくしん」

そして彼女はそう呟く。


「いや、俺はただの魔族。六神も姿は様々だが魔族のような角を持つ。だがこんな悠長にはしていまい」

「確かにな……」

初めて聞く六神の姿に関する情報。しかし何故角を……?だが私が思い浮かべる女神さまの姿だって会ったことはないがイメージは人間よりである。なら魔族よりの神だっていてもおかしくはない。


「さて、俺たちは分けあってこの大陸に……」

「国を作るんだよ!」


「国……?」


「うん。私は帝国の第5皇女アリーシャ。皇帝陛下よりこの暗闇大陸を与えられました。この大陸には国はありません。だからここに、国を作るんです!」

「帝国の……!?本当……なのか……いや、ですか」


「そうだけど、敬語じゃなくていいよ!アリーシャって呼んでほしいの」


「しかし……」


「俺はアリーシャって呼んでるけど」

「それはなぁ……」


「そうだ!ジェームスもアリーシャって呼んでよ」

「……いや、しかしだな」


「その案には賛成だ。もしもアリーシャが皇女と知られれば危険に晒される可能性もある。今回、彼女は危険人物ではなさそうだが」

とラシャが言えば。


「分かった。その……アリーシャ」


「うん!だから、お姉さんも!」


「あ……アリーシャ」

「ありがと!お姉さん!でも、名前は……」


「……ジェシーだ」


「よろしくね、ジェシー!」

私が元気に挨拶をすれば、ジェシーは少し不思議そうに私を見る。


「私が……悪いやつだとは思わないのか。ここに流されるものは大罪人だと知っているだろう」

「ジェシーは優しそうだよ!」


「だが……そう言う優しそうな顔をして近付くやからもいるぞ」

「それは……」

あり得なくもない。いや、皇宮にもそう言う輩はいる。危害を加えられなかったのはジル兄さまが守ってくれたからだ。


「ならアンタは何をしてこんなところに放り込まれた」

「……盗み。私は盗賊だ」

確かに身軽そうではあるが、彼女の顔立ちや仕草はどうも盗賊とはかけはなれた身分を想像させる。気のせいだろうか?


「盗賊で暗闇大陸送り……?」

ジェームスが怪訝な表情を浮かべる。

「私はそうするしか生きていくことができなかった。でも……一度だけ、高価な髪飾りを落としたと泣く令嬢にこれではないかと差し出したらそのまま窃盗で捕まり、これまでの罪状もあって監獄送りだ。さらにその令嬢は帝国の貴族だったのも運が悪い。貴族の怨みを買って私はここに送られた」

「ひどいよ、それ!」

皇女の私でもやらない!いや……やりそうな皇女をひとり、ふたりほど知っているが。


「ジェシーは悪くないよ!」

「だが、私はこれまでも罪を……」

「これから償えばいいよ。ジェシーが盗賊をしないで済むように……そうだ、私が国を作ってジェシーの就職先を斡旋するんだよ!」

「だが女性の……それも獣人種で前科がある。そんな女を誰も雇わないよ」


「じゃぁ私が雇う!ひとまず私の旅の供はどうかな」

「は……?私みたいなのを?」

ジェシーは意外そうであったが、ジェームスとラシャは顔を合わせて苦笑する。


「何だ?」


「俺は首斬人だ。斬った首の数なんて覚えちゃいねぇが、姫さんの供として恩赦をもらって大陸送りだ」

「はい!?」


「あー……俺はよく分からないけど魔族だから入れられてたけど恩赦で同じく」

「……お前はともかく……」

ジェシーが何か言いたげにジェームスを見る。


「ま、俺に比べりゃひとも殺したことがねぇ顔の嬢ちゃんが何を言おうとたいしたこたぁねぇ」

「でもジェームスは優しくて強くて守ってくれるよ」

「……アリーシャが騙されてほいほい付いていかないか心配になるぞ」

「そんなことないもんっ!」

こうみえても皇宮育ち!前世以上に見る目は養ってるもんっ!……まだ幼女ですけど。


「……なんだか楽しいパーティーだな。ここは暗闇大陸なのに」

「アリーシャのお陰かなぁ。ま、そんなわけでそろそろ飯にしない?」

ラシャがそう告げた瞬間、タイミングよくぐぅとお腹がなり思わず赤面してしまった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ