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【74】side:ラシャ



――――side:ラシャ


みなが寝静まった夜、ふとモニターを付けて通信を繋ぐ。


出たのは勇者の魂の片割れ……アレックスである。


『北部の件、聞いたよ。君の生まれ故郷だろう?魔王』

「そうだ」


『帝国の極秘文書に記録がある。皇帝は代々勇者の子孫であるがゆえ、魔王の転生を察知し確保したと』

「そうだな。俺は100年以上前のニクスで生まれ……ニクスの存続のために身を売り渡した。聖女が生まれるその時まで」


『その時北部の地底種たちは抵抗しなかったのかい?』

「……しないよう命じたのは俺だ。彼らなら守れるから」

『ニクスをか』

「そう。あの国の王族は滅んだ」

『滅ぼしたのは帝国だ。全ては魔王を手に入れるために。そして皇族を派遣することで統治をしてきた。……怨んでいるかい?』


「まさか……。フィリップにあそこを任せたのは得策だ。あれも母親の勢力に反してよく抵抗した」

『第2妃は北部から人買をする好機と取ったようだが、アレは昔から正義感が強い。まさに勇者の子孫だな』


「けれど皇帝の器にお前が座ったのは代々の皇帝の短命のせいか」

『それもある。その因果から解放されたとき、イレーヌと第2妃の影響力が消失すればフィリップが皇帝の座に座ってもいい。けど……断られてしまったよ』

「へぇ……」

『フィリップはニクスが好きなんだよ。元より王族は君の代で終わりだ。しかし君はアリーシャの伴侶となり成人までの代理を務めることにした。だから妃には誰を選んでもいい。あそこにはフィリップの選びたい女性がいたようだからね』

だからこそ母親にも反発し実の妹の企みも振り払った。


「なかなかできる男だな」

誰よりも妃を選んだか。


「そして第2妃とイレーヌは悪役として民の怨み憎しみを受けながら処刑されそれを処断した皇帝アレックスは民衆のために政治を行う賢帝。アンタは色々と企んでいたようだ。……ジェームスのことも」


『彼は元々……ぼくではないよ。ぼくの剣ではなかった。勧誘しても振り向いてはくれないからね』

「そりゃあなぁ。アイツ、結構真面目で頑固だぞ」

『だろう?だからぼくの代で任を解いたよ、好きに生きるようにと』

「そんでどうした?」

『とっくに好きに生きていると言われてしまった』

「まあ確かにな」

力仕事に加わったり、アリーシャの面倒を見ていたり、ジェシーと戯れていたり。


「……それはそうと帝国本土はどうだ?」

『順調だよ。いくらか弟妹は失ってしまったが』

イレーヌは処刑されたがビビアンとロンは修道院送り。外は真面目に統治をしている。


『けれどきっと……そろそろ』

「アレックス……」


『父上が目を覚ますまでの周期が長くなってきている』

アリーシャたちも定期的に顔を見に行くが目を覚ましていることは稀である。


「けど……最後に父娘になれたから、俺は……」

親が生きていると言うのはそれだけでありがたいことだ。普通の混ざりものだった両親は生き延びていたとしてももう生きてはいない。魔王としての役目を果たすために俺だけが時代に取り残されたように何百、千年と生きるのだ。


『魔王?』

「……何でもないよ」


それから、先代皇帝の崩御が訃げられたのは1週間後のことであった。父親と最期の別れを果たしたアリーシャは悲しげであった。けれどアリーシャの一生には俺は一緒にいていられるから。せめてアリーシャが悲しまないように。


――――自身の悲しみはそっと胸の奥に閉じ込めて……。



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