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【73】北部の地底種


――――天空大陸にいると感覚が鈍くなるのだが、外では確実に季節が進んでいるのだ。


ニクスへ向かうためにグラキエスのメリッサ姉さまに会いに行けば、冬の始まりのような装備。私たちもそこでニクスへ向かうための装備を用意してもらった。


今回は私とラシャ、レキとキアヴェの外にもジェームスが来てくれている。

今回寒い気候に慣れていないクレアとジェシーはカエルムで留守を守ってくれている。雪明かりの地は地下なら平気だがやはり地上は2人も苦手なようだ。


「因みに地底種たちはいいのか?」

とメリッサ姉さま。


「我々はどこでも半裸ですよ。昔は何も着てませんでしたが、ある時元幼女の娘から全裸だと目のやり場に困るし幼女の教育に悪いと言われたので。幼女の教育のためならば仕方がなく」

良かった……言ってくれて良かった。確かに教育に悪い。


「魔王、念のためもう一度聞いておくがこやつらの幼女趣味は大丈夫か」

「ああ、ある意味安全だから」

とラシャ。うん、そだね。幼女幼女言わなかったらもっと良かったんだけどね。


気を取り直してニクスに到着すればフィリップ兄さまが騎士たちと出迎えてくれる。

騎士たちの種族は様々で人間や角のある獣人、角のある人間よりの騎士など様々だ。


そしてやはり彼らが驚くのは魔族のラシャではなく……。


「地底種……」

「本物っ !?」


「レキとキアヴェです」

紹介すればフィリップ兄さまが頷いてくれる。


「しかし本当に地底種が……」

「ええ、地底種ですが幼女に誓ってふしだらなことはいたしません」

いやロリコンな時点でふしだらなのでは?


「何故幼女なんだ」

フィリップ兄さまが何かを感じ取ったのか顔の影が濃くなる。


「我々はイエス!ロリ……っ」

「いいからとっとと行こうか、レキ」

「アリーシャがレアなドSを発揮して……それも萌えっ、ぐふっ」

それでも予定どおり東部に向かってくれるのは優しいところなんだけど。


――――ニクス王国東部

地底種たちの暮らす区画へ捕らえられているひとびとの救出へ向かう。


「おや……キアヴェのお陰かラシャさまの帰還の影響か、お出迎えのようですね~~」

ラシャの言う通り、雪原に姿を表したのはレキたちと同じような地底種である。ニクスの騎士たちが小さく悲鳴を上げるが、フィリップ兄さまはさすがビビらず、レキに話し掛ける。


「交渉は出来るだろうか」

「私とキアヴェで行ってきます」

そう言うとレキはキアヴェを連れてニクスの地底種たちと話をしに行ってくれる。暫くするとレキが呼んでいるようだ。話を聞いてくれそうかな?


「ラシャさま、地底へ案内してくれるようです」

「……っ、いいのか!?」

ラシャが驚く。私も驚きである。


「それがその……」

「どうした?レキ」

何だろう。視線を感じる。地底種たちが私を見ているような。ぶるり、と寒気がする。


「やっぱりロリータは最高です!イエス!ロリコン!

レキがそう告げれば北部の地底種たちが一斉に頷く。え……まさか……その。


「イヤアァァァァッ!!」

私はジェームスとフィリップ兄さまを引き寄せWコワモテシールドを展開した。


「ロリコンって何だ」

「コイツら全員幼女趣味なんだろ」

フィリップ兄さまの言葉に冷静なジェームスの解説、フィリップ兄さまのコワモテがさらに恐くなった。


――――地底種の巣


案内された地底種の巣はカエルムのものともよく似ていた。中は温かく、地底種に拐われたと見られる女性や子どもたちが和やかに暮らしている。


「我らが同胞と出会えるとは。魔王さまの帰還も歓迎いたします」

「ええ、こちらこそ」

レキとキアヴェは地底種たちと和やかに話している。


「彼女たちは望んでここにいるのか?」

「ええ。住み処に戻ったとしてもまた拐われるか、中には金で売られたものもいるようです」

それで稼いでいたものもいることは事実なのだ。貧しいからといってそんなことを許せるわけないけど、そこをなんとか出来なければ第2第3の人身売買が起こってしまうだろう。


「故意に売買をしたものには罰を与えよう。彼女たちがここで暮らしたいというのなら無理を言うことはできない。このニクスの惨状は王である私の責任でもある。だが……何故北部の地底種たちは東部に暮らしているんだ……?」

通常なら西の方が暮らしやすいだろうに。


「西部の方が魔族の故郷に近いからだそうです」

レキが聞いてくれたようだ。そうか……この土地のひとびとには魔族の血が入っていることが多い。ラシャもまたカエルムに帰るためにここで生まれたのだ。


「主に夜にはなるでしょうが、北部を住みやすい地にするために地底種たちも協力してくれるそうです」

北部の地底種たちも頷く。

「……どうして」

フィリップ兄さまが驚く。本当にどうして急に……?


「彼らもあなたの守ってきた北部を知っているからでしょう?」

レキの言葉に北部の地底種たちも続く。

「我々はだてに長生きではありませんから」

「もう脅威は去ったのでしょう?」


「地底種たちが出れば人類は恐れおののきひれ伏す。しかしそれでは意味がない」

と、キアヴェ。

恐怖での統治に意味がないことを彼らも知っているから。


「では……教祖として私もイエス!ロリコン教団をこちらにも広めようかと」

「ええ、それはよいお考えかと」

キアヴェの言葉にレキが快諾し周囲の地底種たちも嬉しそうである。


「あれは怒った方がいいのか」

とフィリップ兄さま。


「地底種に関してはいいだろう。他種族なら駆逐すればいい」

「なるほど、魔王。それは賛成だ。魔王、お前がロリコンか否か……一度アリーシャの兄として話してもいいだろうか」

「俺は違うっ!!」

ラシャがカッと目を見開き抗議する。


「そういやアリーシャ。ここにも温泉があるってよ」

「わぁ、いいね、ジェームス!」

ジェームスが気をそらしてくれたので私はそれに乗ることにした。ううー……ロリコン退散ロリコン退散。




――――その後ニクスは地底種たちと協力して国を運営していくことになった。最強の地底種たちがいることで、地底種を恐れ闇商人たちも徐々に追い出されていったのだとか。


そしてカエルムでも季節労働者を受け入れ生産性を上げて食料を輸出することで、少しでもフィリップ兄さまやラシャのためにできることを始めている。



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