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【68】ジェームスの正体



――――皇帝が世代交代をする。私たち皇女皇子がそれぞれ国や土地を与えられたのはその暗示だったのだろうけど。


皇城ではアレックス兄さまが部屋を用意してくれて、私たちはメリッサ姉さまやキアーラ姉さま、ジル兄さまと一緒になった。それはありがたいのだが、腑に落ちないこともある。


「アレックス兄さまは何でイレーヌにラ・モンタニアを与えたんだろう」

「そうね……例えばイレーヌの本性を明らかにすること。今後帝国を運営していくにしてもラ・モンタニアの情勢は非情に危険だわ」

「キアーラの言う通りだ。被害はニクスやハーフェンにまで及んでいる」

メリッサ姉さまも頷く。


「確かラ・モンタニアって帝国の北東部にも接していて、そこの帝国領は……あ――――っ!」

突如キアーラ姉さまがジェームスを指差す。


「何だ?」

当のジェームスは何だか煩わしそうにキアーラ姉さまを見るが。


「処刑人……そうよ、そこの首斬り人の名前……!確かジェームスって……」

「え゛」

ジル兄さまも驚いたようにジェームスを見る。


「その、2人とも!ジェームスはっ」

慌てて説明しようとするとどうしてかメリッサ姉さまがクツクツと笑い出す。


「今さらか。私はすぐに分かったぞ」

「どうしてよ、メリッサ姉さま!?」

「その、気が付いていて何故……っ」


「グラキエスの砦には決して表に出せぬ経歴のものたちがいる」

それって……砦にいるジェームスの過去を知っている騎士たち……?あそこはメリッサ姉さまの預かった土地だ。調べられたとしてもおかしくはない。例えば……。


「戸籍を変え、名を変え経歴すら。いくらグラキエスが帝国上位の序列だとしても帝国内で起こった騒動に関わるものたちをどうやって誰も行きたがらない砦に送った?グラキエスの辺境砦にはそのような存在しない戸籍のものたちがたくさんある。確か帝国の北東部には有力貴族がいたな。第2妃の派閥だ」


「つまりはイレーヌたちの母親ね。第2妃にまでなれる実力。属国上位の序列の姫でないのなら帝国でも有力貴族になるわ」

とキアーラ姉さま。


「ジェームス、お前はあそこで何をしていたんだ?あそこでは民の反乱が起き領主は殺された……領主は首斬り人に裏切られて殺されたと聞いた。第2妃や派閥は怒り狂った」


「フィリップやダミアン兄さまの話を聞いて分かったわ。あそこの人身売買の中核を担っていたのが当時の領主ね。あのようすじゃラ・モンタニアも確実にグル。帝国内の中核を潰されて腸煮えくり返る気分だったんじゃないかしら」

「第2妃が……自分の息子が北部で苦労していたのにその傍らで北部の民を売買していたのか」

ジル兄さまも渋面にならざるを得ない。


「だからお前が殺したことにしたんじゃないのか」

メリッサ姉さま、それって……?


「それは誰の命だった」

メリッサ姉さまがジェームスに向かい合う。しかしジェームスは何も答えない。


「よせよ、女王さま」

その時ラシャが口を開く。


「皇帝……前皇帝にあんなしゃべり方をして、監獄では帝国の最重要機密だった俺にも平然と面会できた。その前後の任務が違ったとしてもその任務を与えたと考えられる人物はひとりしかいない」

ジェームスは最初からお父さまの命で動いていた……?最初はアレックス兄さまの采配だと思っていた。しかし……。


「知らん。今の俺はカエルムのもんだ」

「うん、そうだよ!」


「アリーシャ?」

驚くジル兄さまたちに対しラシャは満足げに頷く。


「ジェームスは私たちの大切な仲間だもん」

「ああ、それでいい」

変わらず頭を撫でる手はおっきくて優しいから。


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