【54】砂漠の国のこと
――――南部の砂漠の国。メリディエスとソレイユ。国の名前は判明したが、どちらがジル兄さまの国なのだろうか。
クレアとジェシーに呼ばれ私とラシャは会議室にやって来た。
「……その、クレア」
「ええ。分かったわよ。まずアリーシャのお兄さまの国はソレイユ。彼はソレイユを任され王となった」
「兄さまがっ!皇族が属国を任されれば現地の王族と婚姻し王になるんだよね。幼すぎると私のように伴侶が代理をしてくれることもあるけど」
ジル兄さまも婚約もしくは婚姻を結んだのだろうか?気になるなあ。
「そうね。確か彼は16歳だったかしら。ちょうどラシャさんの見た目と同じくらい……。ねぇ一応だけどラシャさんって結局何歳なのかしら」
そ……それは確かに思っていた。
「……正確な年齢は皇太子に問い合わせてくれ。多分記録が残っている。でもだいたい100は越えた」
「あら、割りと若かったのね」
ダークエルフの感覚だとやはりそれは『若い』のか。
「俺の実年齢はともかく……その、もうひとつの国のことはどうなんだ?」
「あら、話題を反らす気?もしかして気にしてるのかしら」
「気にしてるって……クレアの方が年上……何でもない」
「分かればいいのよ、分かれば」
今一瞬会議室が氷点下になったかと思った。
「私、ラシャがおじいちゃんでも気にしないよ!」
「……おじい……っ」
ラシャが机に突っ伏す。
「確かに短命種の私たちからしたらそうだが……アリーシャ、基本的に長命種の100年は短命種の10年だ」
「えっ、じゃぁ……ラシャとはあまり年齢が変わらないの?」
「……それは200を超えてからのセオリーだ」
そっか、じゃないとラシャが大人として王さま代行できないか!
「けれど南部の国は今や短命種の国。時折短命種と長命種は揉めるんだ。だから注意も必要だな」
「それに越したことはない。獣人はダークエルフは森の守り手としての印象が高いが、嫉妬や偏見はいつの時代もある。派遣されるダークエルフも心配ではあるな」
「なら最初は私が行くわ。定期的に森の守り手として外交官を派遣するのなら他種族も一緒の方がいいわね」
「ああ。なら獣人族の誰かが付いていくのがいいだろうな。けど最初だろう?私も行った方が……国の方はどうする?」
「レキとキハダに任せよう。レキに関してはロリコン以外の点に於いては信頼できる」
うん、それは大賛成である。
そして早速ジル兄さまの国への外交計画を詰めようとしていた時だった。
「あの、夕暮れの地にお客さまが来てるそうなんですが」
キハダが呼びに来たのだ。
「お客さま……?誰だろう」
アレックス兄さま……もそう頻繁には来られないし通信もあるよね。
「……その……帝国の皇女だとか」
「……名前は?」
「……メリッサ皇女だそうで」
「ええええぇっ!?その、えと……お隣だから挨拶はしなくちゃだけど……その、しゃべるのとか初めてで……」
「大丈夫だ、アリーシャ。俺も出迎えに行く」
「なら私も行くわ。こっちは任せるわ、ジェシー」
「分かった。用意をしておくよ、クレア」
ラシャたちが来てくれたけど、うう……大丈夫かな?




