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【51】神の贖罪



ここ、カエルムの未来の女王は私、代理はラシャ、宰相はクレアと決まったことはジェシーもジェームスも、他のみんなも喜んでくれた。


「では今後のことも含めて、私は帝都で手続きを進めるから……魔法通信も繋いだ方が便利になるな」

「こちらのシステム自体は俺も操作できるが」

「なら私が手伝うよ」


「皇太子殿下が自らですか?」

「だてに記憶は継承していないからね」

それで操作もできるって……このひとなかなかチートである。


そして魔王城と帝都の通信を繋ぎ、砦との連絡も取れるようにしてもらった。


「他の地域や国とはやり取りしだいだが……連絡を入れることは可能だ。そこから返してくるかは相手しだいだが」

「……と言うことはジル兄さまの国にも連絡を入れられるんですね。ありがとうございます、皇太子殿下」


「ああ。でも……私のことはお兄さまと呼んでくれないのかい?」

「えっ!?」

そりゃぁ皇太子殿下も兄ではあるが、おいそれと『兄』と呼べる関係ではないと思っていた。


「その、失礼では」

「まさか。最近では弟妹たちが『兄上』とも呼んでくれないんだ」

うーん、普通は皇太子殿下だもの。でも同じ皇后の皇子女ならなくはないと思うんだが。


「アリーシャにも兄と呼んで欲しいと思うよ」

「……あ、アレックス兄さま?」

皇太子の名はアレックスと言うはずだ。

「うんうん、なかなかいいね」

皇太……アレックス兄さまが満足そうに頷く。


「……またシスコンかよ」

え?ラシャが何か呟いたのだが。


「魂が分かたれても変わらないようだ」

アレックス兄さまがラシャにニヤリと笑いかける。え……と、魂が分かたれても……?

ひょっとして分かたれたもうひとつの勇者の魂……元勇者の知り合いなんてアレックス兄さま以外知らないのだが。


「だからね……聖女の兄として、あのエルフを帝都まで護送するよ。砦には既に帝国の騎士も呼んである」

いつの間に……。

そしてあのエルフって言うのはハイエルフを語る彼女か。700年にも渡り囚われる大罪人。しかし魔王の帰還と共に釈放される。


「お前はどうするんだ。あの女は外のエルフたちのもとへ還すのか?」

「まさか。彼女を許すつもりはない。それに外の純血のエルフたちも今は肩身が狭くなるだろう」

「どう言うことですか?」


「私は数百年前から続く純血のエルフたち……ハイエルフの罪を帝国全土に広めるつもりだ。もう二度と悲劇を繰り返さないため、世界樹を守るため」


「でもアレックス兄さま、その言い方は……」

アーベンの雷が落ちるのでは?


「……どうやら違うようだ」

ラシャが告げれば私たちの前にふんわりと微笑むアーベンが現れる。怒っては……いないようだけど。


「創世神がお決めになられました。あの大罪人のステータスを見るといい」

どう言うことだろう。私たちが急いで塔に登れば、アレックス兄さまの顔に大罪人のエルフは悲鳴を上げる。


「わたし……私は、ハイエルフになったのっ!」

大罪人の彼女はステータスを見ながらほくそ笑む。ステータスが変わったことで彼女にも何らかの天啓があったのだろうか?

しかしながら、次の瞬間。


「な……何、アンタ何なのよ!」

彼女はこちらに気が付き悲鳴を上げる。


「700年前とは姿は違えど、感じ得るものはありそうだ。さて……大罪人、お前を帝都に移送しよう」

「てい……と……ここから出られる!ねえ、タイキ!ここから出して!」

タイキって誰のこと?しかしそれはアレックス兄さまを指しているように思う。しかし妙に日本的な名前である。キハダもそう言えばそうだが……こちらの方がより日本人にいそうな名前だ。


「確かにお前はここからは釈放されるが、お前の罪が全て解かれたわけではない」

「は……?」

「魔王がここに帰った。それはつまりもうお前は世界にとって不要なものと言うことだ」

それが何を意味するか、彼女も分かったようだ。


「嫌……嫌ぁっ、わたしは、私たちハイエルフの世界樹を」


「何を言う。散々世界樹たちに怨んでもらったんじゃないか。お前たちが滅ぼした世界樹の成れの果てたちに」

アレックス兄さまが告げれば、本体に吸収されたはずの世界樹の成れの果てたちがゆらゆらと彼女に迫り、彼女は悲鳴を上げて気絶した。


「ラシャ、あれは……」

「闇魔法の幻術」

そう言えば魔族も闇魔力を持つ人が多いんだったっけ。


――――気絶した彼女を拘束し、アレックス兄さまは砦へと帰っていった。

アレックス兄さまからのその後の通信によると自らを『ハイエルフ』と称するものたちは大罪人と同罪と帝国中に拡散された。

大罪人の彼女は処刑され、各地の森からはその罪人の一族たちが追いやられているらしい。


少し哀れなようにも思えたが……。


「ハイエルフとは世界樹をハイエルフのものにしようとする集団が多かったようね。それも長い時間をかけて暗躍してきたのよ」

とクレア。

「彼女たちはハイエルフを名乗るのにエルフと言う種にも固執した」

「なのに混血のエルフたちをエルフとは認めなかったんだもんね」


「そうね。だからこそ本物の『ハイエルフ』になったのよ」

そしてハイエルフたちに追いやられたかつてのハーフエルフたちやそれに賛同せずに隠れ住んでいたエルフたちは難を逃れ、『ハイエルフ』だけが罪人として裁かれることとなったのだ。


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