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【47】橋の向こうへ



――――夕暮れの地では既に美しい夕陽が射し込んでいる。出迎えてくれたのはアーベンと黎明でも力を貸してくれたエルフたち。


「アーベンさまから聞きました。暗闇は晴れ、ここは天空大陸のカエルムとなると」

「そうだよ。これから帝国と連絡を取ることになるの。それからここは……」


「はい、聞いています。帝国本土と結ぶ橋が姿を現しています。ここは元の交易都市に戻るのもよし。独自の都市を築くのもよしと」

「みんなはどうするの?」


「……そうですね。大陸の玄関口として交易都市を築けばみなの暮らしも豊かになりますし……アリーシャさまの仰ったどの種族も分け隔てなく暮らせる街にしたいのです」

「……っ!ありがとう。私も楽しみだよ。それにね、私は前のようにアリーシャでいいよ」


「けれど領主に……」

「それでもアリーシャだよ」

「分かりました、アリーシャ」

彼女が微笑んでくれる。


「それからね、あなたたちの名前も教えて?」

「……私は、私はアテナ。ここではリーダー……のような役目を果たしています」

それから集まってくれた彼女たちと改めて自己紹介を交わした。


「そうだな……リーダーがアテナなら、ここの領主をアテナにしてもいいかもな」

「そうだね、ラシャ!女性の領主さまもかっこいいよ!」


「ですが……帝国は」

「いざとなれば人手が足りないで逃げ切る」

「ラシャったら」

「けど案外いい手かもしれねえぞ?あ……けど裁きの六神さまはどうなんだ?」

みなの視線がアーベンに集中する。


「何を領主とし、そして宰相とするのか」

アーベンにもクレアたちとの会話は筒抜けだったのであろうか。


「それは人類が組み立てたもの。そこに創世神の定めた意思はありません」

どうやら問題はないらしい。


「なら堂々と押し通そう」

ラシャの言葉に苦笑が漏れる。


「そのためにも……陽が沈む前に橋を渡ろう」

「うん」

もう暗闇大陸には時間が戻ってきたのだ。アテナたちに手を振り、私たちはこの大陸に足を踏み入れた橋へと足を乗せる。


周囲は海だが、こんなにも美しい海だと気が付かなかった。


「まるで沖縄とか、離島みたい!」

「それも前世の記憶ってことか?」

「そうだよ、ジェームス!泳げたかは覚えてないけど……ここは……泳いだりできるかな?」

「割と深いからやめておけ」

ラシャから告げられひえっとなる。


「浅瀬の方なら大丈夫だろ?」

「まあな。いいかもしれない」

それならアテナたちも誘って……きっと楽しいだろうなぁ。


そう話をしながら橋を渡っていれば前方に多くの人影が見えてくる。彼らは私たちを見送ってくれた砦の長や騎士たちだ。


「おーい!」

手をぶんぶんと振れば、彼らも安堵したように表情を緩めてくれる。


「暗闇が晴れたと思ったら……」

「まさか無事に生きて帰られるとは!」

砦のみんなが涙ぐんでいる。そうだよね。生きて帰れるか分からない場所にみな送り出してくれた。


私の帰る場所はカエルムだ。しかしながらここの砦もまた帰ってくるべき場所だったのだと思う。


「ただいま!」


「お帰りなさいませ、皇女殿下」

砦の長たちが涙ぐみながらも騎士の礼を見せてくれた。





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