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【42】成れの果て



――――魔神アズールが私を導いたのは見覚えのある遺跡だ。遺跡と言うよりも今は稼働している施設。


「オリハルコンでできている遺跡?」

こくんと頷くアズール。

そしてアズールはあの時のモニターを起動する。


そこに映ったのは世界だ。

幾度となく大きな木……世界樹が燃やされ、朽ち、枯れはて再び芽を宿すたび信仰されるが文明の発展と共に信仰は失われていく。さらには枯れた世界樹たちは本物の神になりきれずに捨てられたことで怒り、怨み、怨念となって苦しんでいる。


けれどそれらを吸収しながら旅をした。ずっとずっとアズールは一緒だったのだ。


アズールはモニターを消すとこちらと言わんばかりに案内してくれる。


そのさきはキアヴェが封印を守っていた場所。床には土が見えている。花壇……にしては屋内だ。


「……」

その時アズールが土に杖を突き刺した。するとそこからみるみると木が成長し、根を伸ばし枝や幹は遺跡から空へと伸びていく。


すると目の前に女の子が現れる。アミナスと一緒であった時の世界樹の彼女と似ているが身長は150~160センチほどである。


「ありがとう。魔神アズール。それから……アリーシャ」

私の名前……っ!そうか……やはり、彼女だったんだ。


「暗闇大陸で……」


「いずれここはそう呼ばれるようです。でも……きっと空は晴れる。あなたに本当の私たちを見て欲しい」

そう告げれば、木の幹から何かが伸びてきて杖の形状をとる。


その杖を彼女はアズールに手渡す。


「ありがとう。アズール。あなたが……魔王が救ってくれた私たちを、どうか……」

彼女の言葉を聞き入れたアズールは頷き、杖を鳴らしカンと甲高い音が響く。


――――そこは白い空間だった。

ここにはアズールと私だけ……?いや、違う。刹那、後ろから怨念のような声が響き振り返る。そこにはどす黒く溶けかけながらもこちらに這ってくる……今までの魔神アズールたちがいた。例えるのならば……。


「成の果て」

そう答えたのは先程の彼女である。


「お帰りなさい、アリーシャ。もうひとふんばりよ」

つまり彼女は現代の暗闇大陸の世界樹だ。


カンと甲高い音が響けば今度は世界が変わらない。彼が杖を鳴らした時、成の果てたちは止まるが次第に制御が効かず襲い掛かる。


どうすれば……っ。


あれ……?何だろう。


音が響き続ける。


「私は世界樹の大樹としての本体。神としてのアズールに随分と負担をかけてしまった。けど……大丈夫よ。魔王が戻ったから」

「……」

アズールが頷く。


「私は彼、彼は私、彼らも私。いつの時代も私たちはひとつ」

そう告げれば成の果てたちが彼女に襲い掛かる。


「危ない!」

しかし成の果てたちが彼女に吸収される前に太陽の光が彼らを光の中へと追いやる。


「……どうして」

彼女は驚いている。


「きょうだいだから?」

恐らく世界樹たちは個々を持ちながらも『繋がって』いる。森の精たちが言っていたように。しかし成の果てにまでなってしまった彼らはシャムスにも誰が兄かは分からない。


「そうか……そうだったの……私たちはいつでもひとりだったから……。ありがとう、あなたは私にとってはお兄さまだわ」

合図がなる。アズールが杖を鳴らせば今度こそ……覚める。この白昼夢から。


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