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【36】朝陽の昇る大陸


――――明けぬ夜が明けた暗闇大陸で、ただひとり黎明は悲鳴を上げる。


「アあぁア゛ぁあ――――――ッ!!!」

まるでその棘模様の刺青からひび割れていくかのように赤い亀裂が彼の顔を覆っていく。


「な……なんで……何でお前はっ、てんかい……女神とはっ」


『まあ不仲だったが。私が起こした勇者の魂を傷付けたり半分にしたり、聖女の力を封じたり……と言う所業には激おこであったな』

その『激おこ』と言う若者言葉風な表現は何だろうか。何故か誰かを彷彿とさせる。


『しかし……拳と拳で殴り合い分かり合えばもう仲間なのだと、昔ある転生者に聞いたのだ』

え……何だろう、その少年漫画のノリ。一応長さんの頬は美しいままだが。


『私は天界の女神と分かり合った。今まで話せなかったこと、言えなかったこと、言い合った。たくさん……たくさん。お前はどうだ』

「……は?」

顔だけではない肌全体がひび割れていく黎明に長さんが静かに問う。


『お前は本気で殴り合い、分かり合う、そんな仲間はいないのか』

「……そんな……もの……お……兄さま……さえ、いれば……」

魔神のことか。


『その魔神もそっぽを向きお前を助けにも来ない。お前は寂しいやつだ』

「うるさい……うるさいうるさい……おれは……ぼくは……嫌いだ……太陽を嫌う世界が……」


「どうして……みんな、朝陽をこんなにも待っていたのに。地底種たちは苦手かもしれないけどそれでも嫌ってはいないよね」

「まあ、世界樹のお陰で植物は育ってましたけど、世界樹の負担もありますし肉に使うハーブは植物です。他の生命の営みのためあるに越したことはないですね」


そして集まってきた仲間たちも朝陽を嫌ってなんかいない。もう魔族のみなさんも寝ているし、バリケードはぐぅちゃんたちが守っているからこちらに引き揚げて来たのだ。朝陽を懐かしみながら。


「……太陽を嫌う……それはきっと南部の影響ね。森もなく、大地は干上がり今も砂漠化の歯止めが効かないのでしょう?」

「その通りだ」

クレアの言葉にジェシーが頷き何人かの獣人たちも頷く。彼らも南部出身なのか。

黎明もまた、ほかの六神と同じく苦しんだのだ。


とてとてと歩を進めようとすると長さんが腕で止めようとするが、ラシャが私の手を取ったことで腕を引っ込めた。


「シャムス」

「……」

そう呼ばれた黎明は項垂れたまま頭をあげようとしない。


「魔王がお前を六神に迎えたのはどうしてか知ってるか」

「……」

それは単に魔神の兄弟神だったからではなさそうだ。


「お前も……救いを求めているように見えたからだ。シャムス」

「その名を呼ぶな……っ、そんな名は捨てた!」

くわりと顔を上げたシャムスは白黒反転した瞳でラシャを睨み付ける。


「まだ、覚えてるだろ?」

「……」

「そして、その名に反応した。お前は……まだ俺のことが嫌いか」

「大……嫌いだ」

どうして俯きながら苦しげに告げるのだろう。


「でも俺はみなにお前を好きになってもらいたいんだ」

「……そんなことっ」


「できるよ!あのね、南部は私のジル兄さまが治めてるの。だからきっと分かってくれる。ほかのダークエルフのみなさんも助けて、それでジル兄さまのところに森を作ろう!そうしたら太陽の熱を遮れる。ほかにも日傘とかサンシェードを作るのもいいと思うし、暑いからこそ楽しめるスイーツも作ってみんなが暑くても楽しいって思えるようにするの!」

「へぇ……初めて聞くものもあるが、アリーシャが言うと何だか楽しそうだな。国を再興したら、真っ先に外交を開くのもいい」

「うん!きっとジル兄さまなら賛成してくれるよ!だからね、シャムスに私たちが作る国を、生きる世界をもっと見て欲しいの!」


「……お前たちは……ぼくは、お前たちを殺そうとしたのに……どうして」


「それは、なぁ?」

「うん!」


『私/俺たちの国民になるんだから!』


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