【28】夕暮れの地
起動したモニターは夕暮れの降り注ぐ地に繋がる。そこは地球で言えば何となくストーンヘンジによく似ていた。
『我が主。その通信を使われると言うことは……遂に遺跡に辿り着いたようですね』
そして画面の向こうにはそれが分かっていたかのようにアーベンが映り、後ろにはハーフエルフ……いやエルフの彼女たちもいる。
『これは……』
『魔法か?』
『しかし見たことがない』
彼女たちは少し戸惑いつつも私たちの方を静かに見守る。
「ああ。だから……これから俺たちの存亡……いや世界の存亡を懸けて黎明と戦うことになる。単刀直入に言う。アーベンの……いや彼女たちの力を借りたい」
『……だが彼女らは我が裁きの贖罪を受ける身。主の願いとてそれをねじ曲げれば私は邪に堕ちる』
アーベンも神としての本質に従うことで抗ってきたのか。気の狂いそうになるような700年を。
「それなら大丈夫だよ!」
私は画面の向こうの彼女たちに呼び掛ける。
「みんな、ステータスを開いてみて欲しいの!」
そう告げると彼女たちは戸惑いながらも各々のステータスを開いてくれる。
「そこに書いてある種族名をよく見て!何て書いてあるか教えて欲しいの!」
『……』
『……それは』
『そんなことは、許されない』
「そんなことないよ。だって……アーベン。彼女たちの種族を教えて!」
『……私にそれを問うか』
「……っ」
不味かっただろうか?
「大丈夫だ、アリーシャ」
ラシャが私の手を握ってくれる。
「うん……ラシャ」
ラシャに微笑み返し、再びアーベンを見つめる。
『……良かろう。汝の魂は創世神の意に忠実に生きた。その褒美だ』
えっと……魂?私の前世は日本人だったのだが。
『彼女たちは……エルフ』
そうアーベンが告げた途端彼女たちは驚き、中には崩れ落ちるものたちもいた。
『どうして……』
『私たちはエルフと認められなかった』
『この耳はエルフではないと』
「けど、アーベン自身がそれを証明してくれたんだよ」
「そうね。アリーシャの言う通りよ」
彼女たちは最初クレアに驚いたようだったが、しかしクレアの凛とした様子に静かに彼女を見る。
「ダークエルフにとってもエルフの耳の影響を受けるあなたたちはエルフ、影響を受けなかったものは人間。私たちにとっては何百年もそうだった」
『ハーフエルフと言う種族はこの世界にはない』
ダークエルフとエルフと言う種族は創世神の創った種族である。しかしハーフエルフは地上の人類が作り出したもの。創世神はずっとずっとそのステータス上に彼女たちはエルフだと訴えていたのだ。
『私たちは……エルフを名乗ってもいいのか』
「もちろんだよ!私がみんなをエルフだと名乗っていい国にするから!」
『あの時答えを返せなかった私たちを、まだ受け入れてくれるのか?』
「もちろんだよ!だから……一緒に戦おう!この暗闇大陸……私たちの国のために!」
『ああ……ありがとう。小さな皇女さま』
「アリーシャでいいよ!」
『アリーシャさま。我々もエルフとして戦います』
エルフの彼女たちが跪いて誓いを示してくれる。
『……無事に贖罪は果たされた。私も主に従おう』
アーベンが少し薄く微笑んだ……それは多分見間違いではないのだろう。




