【26】太古の遺跡
――――翌朝。
朝陽は昇らないが食事には目玉焼きが出たので少し嬉しい。
「卵なんてここで始めてだよ」
「思えば肉と果実ばかりだったな。……食べ盛りなのにすまんな」
「ううん、ラシャ。食べられるものがあるだけで感謝だよ!」
「そうか……そう言って貰えると嬉しいよ」
ラシャがわしゃわしゃと髪を撫でてくれる。
「そういや、今日は遺跡に行くんだよな」
「そうね、ジェームス。あの遺跡はラシャさんが行くことで起動するはずよ」
クレアの言葉に再び違和感を覚える。プログラム、システム、起動……やはり古代の遺跡らしくはない。
「そうだな……俺がいなくなったから恐らくは機能を停止した。あそこを起動すれば『ゲート』も使えるようになる」
『ゲート』って魔法でよくある転移魔法?
しかし起動と言うと何だか機械じみている。
「キアヴェはずっとその遺跡を守ってくれたんだ。行ってやらないと」
うん……そうだね!決意を新たに、朝食を食べ終えれば早速レキに案内してもらうことになった。
案内された場所は遺跡の入り口にしてはドアが近未来式である。まるでSFに出てきそうな金属質のドア。その左右には見張りと思われる地底種たちがいる。
「地底種の案内がなければ入れませんが、万が一幼女が迷い込んで迷子になっては大変ですので」
その万が一の理由がちょっと……。
「ここで暮らしているひとたちは地底種のろ……ロリコンについてはどう思ってるんだろう」
そこが心配である。
「みな、我々が幼女を鑑賞することを歓迎しています」
おいおいおい……人間食糧にしたり奴隷にしたりしてなかったことは幸いだがそれはそれでいいのかっ。
「我々の大体がロリコン、みなマナーを守って愛でております」
ロリコンにマナーなんてないと言うかロリコンがそもそものアウトじゃないの。あれ……大体?
「レキ、俺はショタコンだ」
「ああ、あなたはそうでした」
見張りのひとりが言う。ものすごくどうでもいい情報だ。
「お前らの趣味嗜好はいいから、とっとと進むぞ」
ラシャが話を戻してくれて助かった。さすがにこのままロリコン談義はキツすぎる。
「では、どうぞ」
レキがドアに手を当てればまるで自動ドアのように響く。中は……やっぱりSF式だ。しかも中を明るく照らすのも蛍光灯のように見えるがあれも宇宙船などにありそうな平べったい形状をしている。
「罠とか……ないよね?」
恐る恐る聞いてみる。こう言うSFチックな遺跡にはたいていメカ系のビーム撃ってくる敵が……。
「侵入者用の防衛装置はありますが、キアヴェが敵とみなさなければ発動しませんよ。こうして地底種と入れば安全です」
よ……良かった。でも防衛装置は一応あるんだ。
「でもずいぶんときれいだね。えっと……暗闇大陸が閉じられる700年前からあるってこと?」
「それ以上前からありますよ」
「それにしてはきれいな……」
「この大陸に魔力が満ちている限りは維持される。システムの稼働自体は止まるが」
とラシャ。ラシャもここの遺跡には詳しいと言うかやはり関わっていたのだ。しかしそれなら……ラシャって実際何歳……?
「しっかし、材質は何だ?」
「ミスリルとかアダマンタイトみたいな金属……にしては加工がここまでできるか?むしろそんなに採集量なんてないだろう」
ジェームスとジェシーの言葉に私も同意だ。確か異世界でよくあるミスリルとかアダマンタイトって、皇族や王族、その護衛たちしか持てないほどに珍しい。前にジル兄さまが言ってた。
「あー……ここの素材か?オリハルコン」
『は……?』
一同からそんな驚愕の声が出る。
「ゴーレムもオリハルコンだぞ」
ラシャがぐぅちゃんを示す。
「オリハルコンって伝説の最強金属では?」
「その上伸縮まですんのか?」
「さすがに材質までは初めて知ったわよ」
そんな加工技術まで持っていた魔族は何者!?いや、目の前にひとりいるのだけど。
「そうか……?クレアのことだからてっきり予測しているかと」
「さすがに伝説の金属とは思わないわよ」
クレアがやれやれと嘆息した。本当に伝説の金属なんだ。しかしそれ以上にSFに出てくる宇宙船のような大型モニターや難しそうなキーボードパネル。ここは剣と魔法の世界にしては妙に不釣り合いである。




