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【25】久々の温泉



――――地底種の暮らす洞窟のお風呂は地下から湧くまさに温泉だった。湯船はいくつかあり、私たちもそのひとつに入らせてもらうことになった。


「あー……生き返るぅ……」

久々の暖かいお湯……しかも温泉だなんて素晴らしすぎる。温泉の浅い場所に座らせてもらいつつ、至福のひととき。


「……アリーシャ、8歳だよな」

「まぁ……ラシャさんに似たのかしら?」

びくっ。ジェシーとクレアに誤解されちゃった!?

「いや、水浴びは私とだったし……ラシャは自分に洗浄魔法かけてた」

本当に魔法があれば何でもできるのよね、ラシャったら。けど私とジェシーは女の子同士と言うこともあり近場で水浴びさせてもらったりした。


「それは私もよくやったわ。でもここの温泉が一番よ」

さすがはクレア。ここの温泉のことまで知っていたとは。


「そう言えば、ダークエルフはまだクレアしか見かけないね。ここら辺にはいないの?」

ほかの湯船を見ても見かけるのは人間や獣人である。


「そうね。私のように流刑になったものがいてもおかしくはないのだけどね。黎明か白昼の地で誰か生き残っていないか……或いは外で未だ捕らえられているか」


「もしそうなら、彼らさえよければ私たちの興す国に来る?」

「あら……いいわね。アリーシャは優しいわ」

「クレアだって。もちろんジェシーだって」


「私は……その」


「ねえ、ジェシー。そろそろいいんじゃない?」

「……クレア?」


「あなたは帝国の法についても詳しいし仕草もどこか洗練されたものを感じる。私はここに囚われて数百年。最新の情報を持っているわけじゃない。でもあなたはアリーシャ以上に詳しいわ」

私はまだ幼女で前世以上の知識はそれほど吸収してないってのもあるのだけど。


「……私は、南部の貴族の生まれだ」

え……ジェシーが貴族!?


「現地民の反発を抑えるため、獣人にもある程度の下位爵位が与えられる。私の家もそうだった……けど、天災により税が納められず失墜した。爵位を返上し一家は平民になり何とか領民は食いつなげたが新たな領主は人間で、彼らが民衆を搾取したため恨みは失墜した私たちの一家に向き、元領主夫妻の両親と兄が殺され、私だけがひとり生き延びた」

ジェシーが語った内容は衝撃的だった。彼女たち一家は領民たちのために貴族の座すら捨てて、領民たちは食い繋いだと言うのに。


「そうだったの……よく、頑張ったわね」

クレアがジェシーの頭を優しくなでる。


「ああ……ありがとう、クレア。でも、こうして今、アリーシャやクレアたちに会えたから……もう、私は大丈夫だ」

「ジェシー……」


「私もアリーシャの作る国を一緒に見る。そう決めたから。故郷は失ったが……悲観はしないさ」

「そうね。私にとってもすっかりここが故郷だわ。そして故国になるのよ」

「うん!絶対にしようね!」

私たちの故国に。

そのためにはまずは明日、六神キアヴェに会わないといけない。私たちは決意を新たにしながら、その日はゆっくりと身を休めたのだった。

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