【24】地底種の洞窟
――――地底種たちが暮らすのはこのような洞窟の中らしい。びくびくしつつもラシャもジェシーも目を光らせジェームスも安定の強面だし大丈夫、大丈夫。
「でも雪明かりって聞いたからてっきり雪があるのかなって」
所々に白い明かりがついており洞窟の中を照らしている。あれが雪に見えるから……?とも思ったのだが。
「この洞窟の外は雪が降り積もっています。寒さも相当なもので……年間を通して寒冷地なのです。でも地底種としては晴れが少ないので住み心地抜群です」
「地底種は陽の光が苦手なんだ。ダメではないけれど」
レキの言葉にラシャが補足してくれる。
それから奥に進めばほかの地底種たちや人間、獣人たちの姿も見える。しかしやはり地底種たちって全体的に顔立ちが整っている。
「……彼らはどのくらいここで暮らしているんだ?あんな獣耳としっぽの獣人なんて見たことがない」
ジェシーの言う通り、彼らの耳やしっぽは何の獣種なのか形容しがたいものである。
「うーん、ここが閉ざされた700年前ほど前から種を繋いでおりますよ」
700年前からここで子孫を繋いでいた!?思えば人間たちもどこか……見慣れない顔だちのように思える。それから洞窟の中だからかどこか色白で髪や毛並みの色素も薄い。同じく地底に暮らす地底種とは正反対である。
「時折下層から戦えないものたちがここに連れられてくるのである程度は外からも入ってきます」
「下層から?」
キハダさんを見る。
「宵闇の元から逃れたものも時折迷い込む。しかし昔はあのような遊戯ではなかった。上に上がるに相応しいものは通され、そうではないものは試練を課され試練を潜り抜ければこちらへ上がる。
ここの彼らも下の彼らもそうして上がってきたものの子孫がいる」
キハダさんが語った事実に驚く。
「ここで生まれ育ち戦えるものたちは下の階層で番人と共に世界樹の守りを務めています。ここより上はこの地の六神と私たち地底種たちが食い止めています。彼らは下で何かがあった時のために世界樹の守りをするのですよ」
「全ては六神たちの采配の中にあった」
レキの言葉にラシャが呟く。
「ええ。ひたすらずっと……神としての務めを果たし荒れ狂う邪神の本分を抑えていたのでは?」
狂い始めてはいたが限界だったのは完全に邪神に呑み込まれるかそうではないかの鬩ぎ合いだったのだ。
「なら、雪明かりの……キアヴェは無事なのか」
それがここの六神の名なのだ。
「キアヴェさまはまだ無事ですよ。どうにか理性を保っている。しかしキアヴェさまがいるのは遺跡の奥地。今日はもうお疲れでしょう?こちらでゆっくりとお休みを。こちらにはお風呂もありますよ」
「だが、お前……」
ラシャの言いたいことが分かる。だってレキは……。
「ご安心を。地底種たちはロリータを崇高なものとして崇めています」
いま、『たち』って言った?まさかほかの地底種たちも……知りたくなかったぁっ!
「神のお膝元でそれはいいのか」
「我が主、キアヴェさまこそが我らがイエス、ロリコン教の教祖」
その意味不な教団とっとと解散してくれないかな!?そしてここの六神までロリコンな事実は知りたくなかった……。
「幼女が苦しむこと悲しむことは教義に反します。ご安心を、幼女に手は出しませぬ」
レキはまるで決戦場に赴くかのような気概で答える。
「アリーシャ、不安なら世界樹の地でも……」
「う、ううん、ラシャ。せっかく来たんだし……」
レキの本気は伝わった。そしてみんなが一緒だから……大丈夫、大丈夫。ジェームスの強面もジェシーのロリコンを蔑む目もついているのだ。
――――あと……お風呂、入りたい。最近野宿続きで水浴びしかしてなかったんだもの。




