【23】地底種
多忙のため7/12(土)まで予約投稿です
――――世界樹の導きで移動する空間はどこか優しく澄んだ緑の光に照らされている。こんなに明るいところは久々だ。
世界樹の導く先へは地底種との交渉のためにもキハダさんが付いてきてくれる。森の精たちは危ないからとアミナスが止めていた。
「やっぱり地底種って危険……なの?」
これから同じ国民となるのならば仲良くしたいのだが。
「人間を……食べちゃう、とか?」
よくあるファンタジーもののように。
「いえ、地底種と言うのは人間を始めとする魔族以外にとっては天敵とされる種族です。ですが今は食べません。最も非力である人間でさえ」
それって昔は食べてたってことだろうか、キハダさん。いや……詳しくは追求しない方がいいかな。
「そういやアイツら、食べないと言う割に暗闇大陸の封鎖前から人間を飼ってたよな」
飼ってたってラシャ、言い方!
「ええ。俺も気が付きませんでした。森の精たちが現れるまで」
それってアミナスが彼女たちに危険だと言ったことと関係があるのかな。
「その……実害はないんですが……アリーシャちゃん」
「は、はい!」
「取り敢えずジェームスさんの後ろにいてください」
「え?うん」
とことことジェームスの後ろに行けば、ジェームスがなでなでしてくれる。
「でも何でだ?」
ジェームスが首をかしげる。
「このメンツの中で一番効果的な気がするので」
「でもジェームスは人間だが」
「ああ、非力な種族だからんな、ジェシー」
「お前ほど狂暴な人間はいないだろ、どこが非力だふざけるな」
「おいおい、褒めるな」
「褒めてない!」
最近はとっても息の合ってる2人のやり取りを見ていれば何だか微笑ましくなってしまう。
「ほら、出口ですよ」
出口を潜ればそこは少しひんやりとする洞窟の中のようだった。
そしてその出口では誰かが待っている。大人の男性のようだがこの世界では見たことのない種族だ。前世の知識をもってしても彼に該当する種族名が思い付かなかった。
「お待ちしてましたよ、我が主。主の大地を踏みしめる感覚は下層から感じておりました」
そう告げた彼は濃い茶髪に黒い瞳の整った顔だち。蠍のような尾を持ち、背中からは蠍の鋏。背中の鋏のせいか上半身半裸である。
「お前か……レキ。また生きて会えるとは思わなかった」
「地底種は普通の魔族よりも少しだけ長生きですから。ゆえに古代種とも呼ばれるのですが」
彼らはどれだけ長生きなのだろうか?
「エルフ、ダークエルフはおよそ800、魔族は800~1000、地底種は1500と言われているわね」
クレアの話に驚く。そんなに生きるの!?つまり彼らは1000年以上前のことすら知っているかもしれない。まさに歴史の生き証人である。
「その通り。私はこれでも1200ですからね」
レキさんもものすっごい長寿である。
「それから……」
彼が私をじっと見る。やはりここに幼女がいる理由を説明した方が……。
「ああ、何て素晴らしい……人間の幼女なのでしょうか!」
レキさ……レキがそう告げた途端悪寒が走る。そ……そう言うことか!確かにこの手の変態には強面ジェームスが一番だ~~っ!
「何故隠れるのです?ああ、でもそんな恥ずかしがるところも……萌えっ」
「……あ゛?」
ううっ、ジェームスの『あ゛?』に救われる幼女がここにいます。
「お前……レキ」
ラシャが驚愕している。
「……アリーシャは……俺の婚約者だ」
「まさか……そうでしたか、我が主。臣下として嬉しく思います。まさか主も同志だったとは」
「おい、待て。そう言うことでは……っ」
「さあ、我が主、共に感動を分かち合いましょう!イエス、ロリコン!!!」
『イヤアァァァァァ――――――ッ!!?』
ラシャと息ぴったりに絶叫した。人類の天敵……?違う、これは幼女の天敵・ロリコン。




