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【21】眠る六神



招かれた家屋の中は家具は少ないが清潔さを保っており、靴を脱いで上がる形式だ。やはりこれはキハダさんが転生者だからなのか、元々のこの地の風習か。


「床に座るのか?」

「南部だと普通だ。獣人の場合は木面の上ではなく絨毯だが」

靴を履く文化の中で育ってきたジェームスは不思議そうにしていたが、南部も靴を脱ぐ文化なんだね。


「あら……地域や種族によっていろいろね。ダークエルフは森に住むから屋内でも靴よ。今は森がないからジェシーの言うスタイルが一般的なのかもね。魔族はこうなの?」

「城は違うが……お前は昔から好きだったな。キハダ」

「ええ」

うーん、やはりキハダさんは前世日本人だったのかな?しかしラシャを知っているのならラシャがここを離れる前からの知り合い。

どれだけの時を生きているんだろう。それなら私と同じ時代からの転生者ではないのかな……?


「まずは簡単に説明する」

ラシャは私が第5皇女であり帝国から暗闇大陸を与えられたこと、共に暗闇大陸に国を興すこと、それから旅の仲間たち、アビスやアーベンのことを話してくれた。


「つまり魔王国を再興するためにアリーシャさまと婚約されたと」

「そう言うことだ」


「それならばそうと言ってくだされば……」

「聞くまでもなくロリコン扱いしてきたのはお前だろ」

「それはその……うちにも幼女がいるもので、つい」

キハダさんが告げれば、当の幼女トリオが仲良くお手々を『はーい』と挙げる。

実年齢が幼女かは分からないが、少なくとも心と本質が幼女そのものである。


「しかし国を興すと言うことは帝国の傘下に入られるのですか?」

「そうなる」

つまりは属国である。


「かつては独立した国でしたのに……」

「俺たちをここに寄越した皇太子は俺が何故囚われていたかを知っていたはずだ。それを暗闇大陸に戻した。それには必ず意味があるはずだ。それから……俺たちが無事に帝国の属国になれば利点がある」


「関税……とか?」

確かジル兄さまは帝国内の序列に応じて関税が変わると言っていた。序列が高いほど有利に。

序列が高い国ほど序列が低い国に対してより多くの利益を得る。


「それもある。あとは……そうだな。帝国は帝国の属国同士の戦争を禁じている。もし破った場合は宣戦布告国の王族は処刑、領地は周辺国に分割した上で国がなくなる」

とジェシー。


「つまり皇太子が魔王国を認めれば帝国の威光が有る限り、こちらから手を出さねば滅ぼされることはない」

「ですが、裏切ると言う可能性もっ」

「なくはない。しかし皇太子は何を思い何をしようとしているのか……それは魔族を嵌めて再び滅ぼそうとするような……そんな陳腐な答えではないはずだ」


「帝国の出方を窺うと」

「そうなるな。しかしそのためには六神たちと対話し、白昼に向かわねばなるまい」


「ここにもアミナスを訪ねて来られたのですね」

「ああ、彼女に会いたい」

『彼女』ってことは女性なのだ。


「彼女は起きているだろうか」

「もちろん寝てます」

「それはいい」

えーと……寝ていたら話せないのでは……?そもそも彼女はほかの六神たちのように暴走してはいないと言うことだろうか。


「世界樹の元へ案内します。彼女はそこにいますから」

「ああ、頼む」

少なくとも世界樹はこの区画にあるってことでいいのかな。それにしてはラシャの白昼に行けば分かると言うのは一体……。


キハダさんに案内されて向かったのは夜だと言うのに神秘的な光が降り注ぐ不思議な空間だ。そして木の根と思われしそこにひとりの女性が座っている。彼女は目を閉じている。見事な青い髪に黒い角はガセルのように反り上がる。肌は褐色、額にも閉じた瞼があった。


「久しいな、主よ」


「しゃべった!?」

寝てたんじゃないの?


「アリーシャ、彼女は眠っている。だが意識はあり、会話もできる」

「でも……それならどうして起きないの?」


「幼子よ、それは私の目が開き目覚めれば破壊を繰り返す邪神となるからだ」

「だからこそアミナスは目覚めない」

それが眠る六神の真相だったのだ。



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