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【19】森の精なのれす



――――突如かわいらしい声とともに現れたのは3人の……ちっちゃい……。


「よっ、幼女っ!?」

つい叫んでしまった。


「いや、幼女なのはアリーシャもだぜ」

「でも私以上に幼女だよ……!?」

年齢で言えば……幼稚園の年少~年中さんくらいだろうか。分かる。うん、分かるよ。

彼女たちは地球……いや日本の幼稚園服にちょうちょさんのお名前バッヂを付けているのだから。


「彼女たちこそ上層へ向かうために必要な存在なのよ」

「クレア、どう言うこと?」

「それは……」

クレアが再び彼女たちを見やると、3人はとことこと整列する。


まずはダークエルフの姿の女の子だ。


「くららなのれす?」

何故語尾に「?」が……かわいいからいいけど。


「るりななのれす?」

続いて魔族の女の子。


最後に……。


「ひまりなのれす?」

この子はハーフエルフの姿のようだ。


『さんにんあわせて~~』

3人がお手々を繋ぎ、次の瞬間ポージングを決める。何だっけあれ……小学校の組体操で分度器型に展開するポーズだ。


『森の精くらやみのもり支部隊なのれす!!!』

ええーと……支部隊ってことは他に本部があるのだろうか。

かわいらしいなぁと眺めていれば、森の精たちはこっちをじっと見たままぷるぷると震えだす。


「どうしたの?」


「今お手々離したらたおれるのれす?」

「むさんするのれす?」

「大ぴんちなのれす?」


「わ――――っ!?大変!」

すかさずジェームスとジェシーが協力して3人を抱っこし救出してくれた。そして改めて彼女たちと向かい合う。


「その、森の精ってのは……」

現状一番詳しそうなクレアを見る。


「元々くららちゃんはダークエルフの森にいたはずよ」

「そうなのれす。その頃はまだ木の精だったのれす?でも森なくなってだーくえるふさんたちについてゆったのれす?そしたらくらやみのもりついたのれす?」


「であったのれす」

「さんにんそろたらわたちたち、思い出したのれす?」

とひまりちゃんとるりなちゃんが頷く。


「木の精がさんにんそろうと……」

『森の精になるのれすーっ!!!』

まるで森と言う感じのようである。


「森の精になって気が付いたのれす。ここ、世界樹あるのれす」

そう告げたのは魔族の姿のるりなちゃん。るりなちゃんは元々この森にいた木の精だったのだろうか。


「ラシャ、そうなの?」

世界樹と言えばエルフたちの森にありそうなものだが。


「……白昼に辿り着けば分かるよ」

それはアタリと言うこと……?一体白昼には何が待ち構えているのだろうか?


「わたちたち、世界樹通じてリンクするのれす」

「いろいろといどうできるのれす」


「……ってことは上層へも!?」


「森の番人さんのところになら行けるのれす?」

「わたちたちのおよふく作てくれたから番人さんなのれすー」

あの……何故幼稚園服を……?まさかその番人さんって転生者なのだろうか。


「でもそれより上行けないのれす」

「そうね。だから私も白昼には行けないのよ」

クレアも彼女たちの力で行き来していたのだ。しかしどうして行けないのだろう。


「……その理由を静寂でなら……何か分かるかもしれないな」

とラシャ。


「しじまいくのれす?」

とるりなちゃん。


「連れていってくれるか?」

ラシャの言葉にさんにんが顔を見合わせる。


「森の番人さんとおなじつのだからかんがえなくもないのれす?」

ってことは転生者かもしれない番人さんは魔族なの……?魔族側にも転生者がいるのか。意外に思えるが、ラシャがあまり驚いていなかったのはそう言うことだろうか。


「けど……どうにかして彼女たちの協力を……」

るりなちゃんが何かを試すようにじっとラシャの様子を見上げる。


「そーえばようじょなかまなのれす。いぇー」

みなの沈黙に耐えられなかったのかひまりちゃんがハイタッチしようとしてくれたので、タッチ。

やっぱり幼女、遊びたくなっちゃったのかな。


「ひまりちゃんは……ひまりちゃんも夕暮れの地のハーフエルフたちに付いてきたの?」

もしもっと仲良くなれれば突破口が開けるかな?まずはひまりちゃんのことを知りたい。


「……?ひまりはえるふなのれす?」

「ふぇ?」

ひょっとしてこの世界のエルフの定義は私が思っているものと違うのだろうか?しかし彼女たちも自身をハーフエルフだと言っていた。


「そうか……分かった」

ラシャが神妙に呟く。


「何が分かったの?ラシャ」

「そうだ……エルフだ。エルフなんだよ、彼女たちは」

その……どういう意味なのだろう。


「そう……混ざりものであっても、ダークエルフの血が濃いのならダークエルフ。ダークエルフとエルフが分かり合えなかったのにはそれもあるわ」

とクレア。


「そうか……エルフや人間が、彼女たち自身がハーフエルフといおうと、ステータス上の彼女らの種族はエルフの血が濃ければエルフ、人間の血が濃ければ人間なんだ」

「そう……この世界の種族の定義は人類を創った創世神の領域。女神はそれにならってステータスを振り分ける。けれどハーフエルフと言う種族は存在しないの」

ダークエルフたちは当たり前のようにそれを知っていた。ハーフエルフたちもステータスがエルフならばエルフと呼んだ。しかし純血のエルフたちはそれが受け入れられなかったから追い出した。


「アーベンが彼女らを罪としたのは創世神の定めた種族外のものを名乗ったから。しかし彼女たちは周囲に罵られるがまま自らをハーフエルフと称した」

そして彼女たちをハーフエルフと呼んだものたちはさらに重い罰を課された。


「彼女たちが許されるのなら、その種族を正しくすることだ。つまりステータス上エルフならばエルフを名乗ること」

「けど、世界は許さないかもしれないぞ」

ジェームスが告げる。


「ならこの国で定めればいい」

「そうだ……少なくとも帝国はそれぞれの国で主要種族をどう標記するかは属国に任せている」

え……?ジェシーはどうして帝国法のことまで知ってるの?


「詳しいな、ジェシー」

「……昔、聞いたことがあるだけだ」

ラシャの問いにジェシーは悲しげに顔を背ける。何だか……触れてはいけないような気がして聞き出せなかった。


「だが……それならさらに好都合。獣人の混ざりものであろうと、エルフの混ざりものであろうとステータス通りの種族を名乗る権利を与える……どうだ?アリーシャ」

「うん!きっとそれがいいよ!」

「じゃ、決まりだな」


『はわわ……それいいのれすー!』

森の精たちがキラキラと目を輝かせている。


「世界樹よろこんでるのれす?」

「うえにいくのれす?」

「ごあんなーいなのれす!」


「わぁ……っ、ありがとう!」

種族に対する考えが彼女たちを動かした。ひょっとしたらひまりちゃんの姿はその答えを導くためだったのだろうか。

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