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【18】暗闇大陸の秘密



――――私たちは次なる六神の元へ向かって森を進む。森は暗いがぐぅちゃんが発光しているのと……。


「月が明るいね。今まではなかったのに」

「ああ。アビスがサービスしてくれているのかもな。元々冥界の長の象徴は月だ」

そっか、アビスが冥界の長と和解したからか。冥界の長さんが見守ってくれるのなら夜道も恐くないかも。


「そうね。南部も女性を褒める時は月に例えるの」

「そうだな。昼は太陽が燦々と降り注ぐ。森があれば少しは凌げるが今は熱砂の大地。褒めるのなら月だが、ダークエルフたちがアビスに信仰を向けていたのなら何となく分かるよ」

クレアの言葉にジェシーも続ける。月はそもそも冥界の長さんの象徴だったからか。


「しっかし……上に行くんだったか?山でも登るのか?」

そうして話しながら歩きつつもジェームスが


「ねぇ、ラシャ」

「どうした、アリーシャ。疲れたならおぶってやろうか」

「そ、そうじゃなくて!その、さっきの……次の目的地が上層ってのは何?」


「……そうか、すまん。失念していた。暗闇大陸ってのは平面上ではないんだ」

「……へ?」


「そうね。全容は闇で見えないけれど、確かに上がるのよ。そして逆にここへは下がる。暗闇大陸ってもしかして上下に伸びる大陸なんじゃないかしら」

とクレア。上下に伸びる……?地球の地形や前世のゲームマップからすれば想像もつかない事実だ。


「その通りだな。そしてアリーシャも気付いているだろう?この大陸の地名の多くは朝、昼、夕方、夜。静寂のような例外はあるがあそこはあそこで特別なんだ」

ええと、私たちは夕暮れ、宵闇と来た。そして奥……じゃなくて上には白昼がある。


「帝国のある中央大陸から続く夕暮れから一度夜に下った後、深夜、夜明け、昼と昇るんだ」

まさに太陽が昇るように。


「だから白昼が一番上なのよね」

「そうなる」

普通は朝が一番上だけど、夜の後には朝が来るから昼が一番上ってことだね。


「それじゃあ暗闇大陸では夕暮れはずっと夕暮れのまま?白昼は今も昼なのかな」

「どうだろうな……普通に考えれば白昼も闇に包まれていそうだが。クレアは何か知っているか?」


「……そうね。私が行ったことがあるのは雪明かりと黎明。雪明かりは雪空に覆われてるから時間軸は分からないわ。黎明の地の中には入れなかったけど、でもそちらはまるで夕暮れの反対のような仄かな輝きがあった」

「つまり白昼が明るい可能性もある。しかし……本来は違うんだ」

「どういうこと?」


「時差だよ。時間が違う。一番上が昼の時、夕暮れは夕方。宵闇は既に陽が沈んでいる」


「うーん……」

それは科学や天体法則に言えば有り得ることなのか。地球で言えば……分からないがイギリスよりは近いと思うけど太平洋の島とかじゃないかな。


「私の前世の知識だと多分めちゃくちゃ距離が離れてるよ」

「そういやアリーシャは転生者だったか」


「もっと驚きなよ。私は驚いた」

「ごめんね、ジェシー」

「いいよ。アリーシャのことがもっと知れて嬉しい」

「ジェシー!」

暗闇大陸は大変な土地だが、優しい仲間を持てて私は幸せだ。ジェームスもよしよしと撫でてくれる。


「長く生きていると中々驚きがな」

「だからあなた何歳よ」

「……」

クレアの問いにラシャがふいと顔を背ける。


「私はラシャが何歳でも好きだよ」

「……アリーシャ」

「絶対にすてきな国を興そうね」

「ああ」

ラシャがホッとしたように頷く。


「暗闇大陸の地形については俺にとっても疑問は多い。アリーシャの世界だとどうなんだ?」

「えーと……まず世界は丸いの」

『へ……?』

最初に地球は丸いと言った人も同じような反応を浴びたのだろうか。

「その丸さと周り方によって時差が変わるんだよ。丸い世界は地球って言う惑星なの。前世の世界では丸いだけじゃなくて、回ることで朝陽が昇って夕暮れになるの!」


「……クレア、どうだ」

「そうね。その惑星と言う考え方……想像すれば面白いわ。けど多分この世界は来るところに朝陽が昇り来るところに陽が沈む」


「どう言うことだろう」

「つまりね、この暗闇で覆われた暗闇大陸のように朝陽が昇らなくなったり、邪神によって夜が三日三晩続いたり……そう言うことが罷り通る世界と言うことね」

まるでそれは……たとえは悪いがゲームの設定に似ているのかも。地球の時差で例えれば時差がさほどないはずなのに朝と夜に分かれていたり、違う地方では朝だったり。そう言った不思議なことがこの世界にもある。


「だから夕暮れの地は夕暮れで宵闇は夜。本来ならば朝陽が昇り、昼を向かえ夕暮れから夜になる。時差があれど時刻を教えてくれるはずだった。だから……戻さないとな」

ラシャは遥か上空を見上げるように寂しげに告げる。


「そのためには早く上層へ……この調子じゃシステムも動いてないからな」

システム……?何だかファンタジー異世界にしてはえらく科学と言うか近未来的な響きがあるのだけど。


「けど……上層への道は簡単ではないわ。まずは彼女たちに気に入られないと……」

うーん、クレアの言う彼女たちとは誰のことなのだろうか……?


――――と、その時だった。


「呼んだのれす?」

「あのやんでれなおたのれす?」

「やぁっとよはこともなしなのれす」

とってもかわいらしいのにどこか辛辣なような子どもの声が響いた。



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