【17】新たな仲間
――――アビスによって現世に縛られていた亡者たちは冥界の長と共に在るべき場所へと還っていく。
『それでは地上のこと、任せましたよ。アビス』
「……ふん」
顔を背けつつも、長の願いを聞かないわけでもない様子のアビス。やはりラシャの言った通り……ツンデレ?
『ではアリーシャ、あなたもどうか道中気を付けてね』
「ありがとう!長さん!」
冥界の長と別れれば、次は遊戯のために捕らえられていた彼らだ。
「アビス、俺たちはこれから上層に向かう」
とラシャ。ん……?上層に?大陸の奥じゃないのかな。
「アリーシャひとりなら何とか魔物から守りながらも進めるだろうが……」
ラシャが申し訳なさそうに彼らを見る。
「主よ、心配しなくとも遊戯のようなものはもうしない」
「あら、いいこね」
クレアがにこりと微笑めば、アビスがばつが悪そうに顔を背ける。アビスの方が神さまなんだけど……あ、それはラシャと六神にも言えるかも。
「元々の我が役目は罪人の管理や更正を見守る番人。真面目に生きるつもりならば我は神として見守るのみ」
それが本来のアビスだったのか。捕らえられていた彼らもホッと胸を撫で下ろす。
「連れていけないのは申し訳ないが……できることならここの復興を頼みたいんだ。ゴーレムたちも置いていく」
ラシャが告げれば、ぐぅちゃん以外のゴーレムたちが彼らのもとに集まる。
「ぐぅちゃん一緒に来てくれるんだね」
そう問えば嬉しそうに頷いてくれる。よしよし。
「すっかり仲良しだからぐぅちゃんはまた一緒に旅だが……彼らも戦えるし力はあるから建築系も得意なんだ」
「そりゃぁ……」
「襲われないなら」
「何よりあんたたちの負担にはなれねぇ」
彼らも納得してくれたようだ。
「感謝する。この大陸が元に戻れば、上層との移動も簡略化されるし、外にも出られるだろう。それまで少しだけ待っていてほしい」
ラシャが告げれば彼らが苦笑する。
「元より外に俺たちの生きる場所なんてない」
「けど、嬢ちゃんが国民にしてくれんだろ?」
「応援してるからな」
「ありがとう、みんな!私頑張るね!」
決意を再認識し笑顔で頷く。
「しかし嬢ちゃんを行かせるのか」
「心配だが魔族の兄ちゃんもジェームスもいるからな」
やはりみんな心配してくれる。いろいろあったがきっと根は優しいのだろう。
「けど……幼女に手を出さないか、やっぱり心配だわ」
とクレア。
国を再興するのに必要なことだと言うのもクレアは理解してくれたんだが。
「だから俺はロリコンでは……っ」
ラシャがクレアに果敢に訴えているが、その時アビスが苦笑し2人とも驚いたように見る。
「なら娘よ、そなたは主たちについていってはどうか。大陸の多くのシステムが使えない今、そなたの導きがあれば上層にも苦労せず行けるだろう」
えっと……それはどういう……。
「そなたは大陸中を放浪しているはずだ。いつの間にかここにまで紛れ込むとは思わなかったが」
「そうね。ダークエルフですもの。森の歩き方はばっちりよ。さすがに白昼までは行けていないけど……」
「やっぱりクレアは捕らえられた罪人じゃないじゃねぇか」
とジェームス。
「ごめんなさいね。騙すような真似をして。けど罪人なのは事実。ダークエルフって言うのはそうやって迫害されてきたの」
他種族への偏見や差別が罪となる。クレアもジェシーも……いや元捕らえられていた彼らだって冤罪や理不尽な差別を受けてきた。私はここに来るまでそれを知ることもできなかった。
「でも……あなたたちなら一緒に行きたいと思う」
「なら一緒に行こう!クレア!」
「姉さんが一緒なら……」
「そうだな。頭もいいんだぜ」
彼らも推してくれている。
「ええ、よろしくね」
クレアがにこりと微笑んでくれる。
新たな仲間を加え、私たちはアビスたちに手を振りさらに奥へと……いや上層へと向かうことになった。
――――しかしやっぱり上層ってどういうこと?




