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死という概念



朝番の日、子犬達のご飯をふやかしている間小動物コーナーの掃除をする。

亀の掃除をしようといくと、異変に気付く。


亀の甲羅が白くなっていた。

どうして?カルキ抜きをして、ライトも置いているのに。

私は同じく朝番の吉川マナミを呼んで、小動物コーナーの裏側でその子を見せる。

ほとんどの子が甲羅が白く柔らかかった。



「あー…これ病気だわ」


病気?それなら子犬達みたいに病院で診てもらいたい、私はそう思った。

それなのに…

吉川は、亀を摘むとゴミ箱に捨てた。

何匹も。

生きているのに。


思考が停止してしまった。


「…吉川さん、生きてる子ですよ…

死んじゃってたとしても…捨てるなんて…」

やっと出た言葉。


「そんな時間あったら掃除早く終わらせて、犬の方に餌やって」


吉川はそう言うと扉から出ていった。

私は急いで亀たちをゴミ箱から助け出し少し小さめの水槽にいれる。


「ごめんね…、ごめんね…」

涙が溢れた。

何処に入れられたか分からないだろうけど、乱暴に落とされた痛みはある筈。

謝るしか出来なかった。


暫くして様子を見に行くと亀たちは裏返しになっていたり、目を閉じて死んでしまっていた。


私は帰り道の公園で亀たちを埋めてあげる。

「せめて、仲間達がいたら…寂しくないかな」


涙が止まらなかった。

なんて無力なのだろうと。




「パルボウイルス感染症?」


あくる日、子犬達がパルボウイルス感染症にかかっている事が分かった。

犬のパルボウイルス感染症は、非常に感染力が強く、致死率が高い病気。特に子犬では、心筋炎を引き起こし死亡に至ることもある怖い病気だった。


ペットショップの隣は動物病院。

治療を出来る。

吉川に提案する。

しかし彼女は隔離室に入れといてと言うだけだった。

決定権は彼女にある。


せめて制吐剤を飲ませて、水分も沢山飲ませよう、私は隔離室に付きっきりだった。



「ちょっと白野さん売り場ちゃんと見てくれる?」

吉川はお菓子を食べながら呑気にそう言っている。


そうだ、確かに売り場にいる子達にも目を向けなくては。十分に手を消毒して、お客様対応などをする。

その間も病気の子達が頭から離れない。




一区切り付いて、事務所に行く。

「あ、一匹死んだわ」



吉川は他にも話していたが私には聞こえなかった。頭の中が真っ白になっていた。

震える足で隔離室へ行くと子犬が横たわっていた。

苦しんだよね、可哀想に…なにもしてあげられなくて…本当にごめんなさい…。



私はその子を抱きしめて泣いていた。




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