天神まつりと天上千里
まつりは彼女に、すべてを話した。
昨日からこれまでにあったことを話した。
彼女は難しい顔をしていた。
天神まつり「それで、俺の知らないことを知っているって何ですか?」
気になっていたことを聞いた。
彼女が意味深に発した言葉。
その内容を知りたくなるのは当然だ。
天上千里「それを答えるには……まずは私の質問に答えてもらおうか。君は見えてた?」
天神まつり「見えてたって何ですか?」
天上千里「ほら、その、あれだよ。白くて大きな化物。」
見えていた。
幻覚だと思っていた化物。
彼女にも見える。天上千里も見えていた化物。
天上千里「OK。見えてたみたいだね。大丈夫。君は間違いなく天神まつりだ。それ以上でもそれ以下でもない、まごうことなき天神まつりだ。それは誇っていい。」
天神まつりが天神まつりではない。それを疑ったことはない。
しかし、誇れるものでもないだろう。
まつりは何も答えることができなかった。
そんな様子を見たからだろうか。
天上千里「とりあえず、私の仕事を手伝ってくれないか。行く当てもないんだろ。昨日私のbedを使った分とジャケットを取った分、それらの賃貸料を払ってくれ。」
矢継ぎ早に彼女は言葉を発する。
まるで拒否することを断るように。拒否することを防ぐように。
しかし、まつりに選ぶことはできない。
家は開かず、友人にも認識されず、忘れられている。
そんな状況に置かれている高校生には何もできない。
わかったと、それとなく天上千里に伝える。
天上千里「それじゃあ、早速行こうか。Let is go.」
天上千里は座っていた机を離れ、何かの準備をはじめた。
天神まつり「行くってどこにですか?」
疑問に思ったことを口に出した。
彼女は振り向いた。
天上千里「working.仕事だよ。」
そう言って、彼女は扉を開けた。その後に、まつりも続く。
扉はとても軽かった。