二回目の天上千里との出会い
気を失っていた。
気づくと、見知ら土地にいた。
正確には、知っているが、知らない土地だ。
見覚えがある土地だ。
記憶の蓋が開く。
そうだ。ここは、幻覚だと思っていた場所だ。
寒く、手が震える。
さらに、友人との関係が壊れていたことを知らしめる。
心が壊れそうになった。
どうしようもない疎外感。
もう居場所はないのかもしれない。
心が折れるのは一瞬だった。
そして、再び化物があらわれる。
死を覚悟する。
その瞬間、知らない女性があらわれる。
いや、正確には知っている。
彼女は天上千里と名乗っていた人物だった。
彼女は、化物を一瞬で破壊した。破壊というより、溶かしたと表現するのが正しいだろう。
天上千里「やっと、見つけた。どこほっつき歩いてんだか。」
軽やかに、鳥の羽よりも軽く、まつりに近付く。
天神まつり「俺を知っているのか。」
そう尋ねる。彼女もまた友人と同じなのかもしれない。
そんな不安からでた言葉だった。
天上千里「I do not know。君とは昨日からの仲だから。でも、君の知らないことを私は知っている。」
彼女は、青髪の女性は、天上千里は答えた。
彼女の言葉を理解するのに、少し時間がかかった。
そして、理解した。
彼女の記憶は残っている。
そして、まつりの記憶も残っている。
天上千里「もう一度訪ねよう。君はここで何をしているの?なんでここにいるの?」
天神まつり「わからない。わからないけど、わからないんだ。」
そう答えるしか、他の答えが出てこなかった。
わからないということしか、わかることができない。
そんな状況だった。
状況を理解しよう。
昨日の俺はここにいた。
そして、今日の朝か昼かに天上千里となのる人物の仕事場にいた。
次に、学校へと向かい、ゲームセンターにいた。
今現在、俺はここにいる。
ループしているのか。よくある、ループものの話。同じ時間を幾度と繰り返す空間。
そう考えた。
しかし、その考えは真っ先に排除された。
それは、ジャケットだ。
彼女、天上千里のジャケットを羽織っている。
まぎれもなく、俺が今日着て、昨日は着ていなかったジャケットだ。
そして、ないより、天上千里が天神まつりを認識している。
だから、時間は進んでいる。
まぎれもない事実だ。
天上千里「とりあえず、私の事務所いこっか。」
そう彼女は告げた。そして歩き出す。
まつり自身にも行く当てはない。
だから、彼女についていく以外の道はない。
彼女の背中をみながら、歩き出す。
突然彼女は振り向いた。
天上千里「あと…私のジャケット返してね。」
彼女は笑顔だった。
怒りを感じる笑顔だった。