天神まつり:2
太陽が見えなくなる直前の夕方の時間。
多くの生徒の登下校の時間。
彼ら彼女らとは反対の道を歩く。
押しのけるわけでもなく、はじの道を歩くわけでもなく。
ただ、歩みを進めた。
陸上部で足も速く、将来有望な人物。それが俺の、天神まつりの友人だった。
彼は他の人と比べても、熱心に練習している。努力している。
だから、まだ学校にいると思っていた。
足早に校門をくぐり、グラウンドへと向かう。
そこには、誰の姿もなかった。更衣室にもいなかった。
そして、誰かがいた形跡もなかった。
微塵も感じられないほどに。最初から誰もいなかったと思わせるように。
彼はどこにいるのだろうか。
彼は幼いころからの友人だ。幼いころからの友人だ。
どこにいても彼はいた。そんな友人だ。
その友人はゲームセンターにいた。
彼の姿を見かけた瞬間、天神まつりは体がそちらへと向かうより先に、声をそちらへ向かわした。
返事はない。
もういちど、声をかける。
返事はない。
近寄って、声をかけると彼は返事をした。
友人???「人違いじゃないですか?」
人違い?何を言っているのか。
10年ほど、いやそれ以上の付き合いになる友人を見間違うはずがない。
何も言葉が出ずに、まつりは彼を見続けた。
その瞬間、友人???のそばにいた人が、別のとこ行こうぜといって、友人???とともに、ゲームセンターを去っていった。
こちらを見ることはなかった。
まつりは理解ができなかった。
見間違うはずがない。見間違うはずがない。
まつりが困ったとき、まつりを助けてくれる。彼が困ったとき。彼を助ける。
そんな関係で、それ以上の関係だ。
関係だったはずだった。
そうだ、先生のとこへ行こう。
先生なら知っている。覚えている。
あんな親身になってくれる先生はいない。
なにがあっても、先生だけは信じられる。そんな先生だった。
そんな先生だったはずなのに。
天神まつり「先生の名前って・・・、なんだっけ?」